第178話 こっちの実家も大変2
久しぶりに、ホント久しぶりに親へと連絡してみると――即返事はあった。向こうもちゃんと生きていたらしい。ちなみに見せたくないがメッセージの返事はと言うと――。
『仁悠ー。久しぶりー!父さん嬉しいぞ!便りの無いのはなんとやらで、我慢していたが。ついに頼ることが出来たんだな。いつでも帰ってこい。今すぐでもいいぞ。即準備するからな。お店も休業だー。帰って来るならすぐ帰って来るんだぞー。延期とかなしだぞ。寂しいし。ショックが大きいからな。いつ帰って来る?今日か?明日か?明日だな。わかった。そっちからなら昼すぎだろ?じゃ、父さん昼ご飯を準備して待っているからな。必ず来るんだぞ?いいか?必ずだぞ?』
――おかしいな。俺が送ったメッセージの内容は。
「急に悪い。パソコンが壊れたから資金援助求めて帰る」
以上である。なので――10秒以内にこの内容のメッセージを送ってくるうちの親である……マジか。ってか。なんか明日帰ることになってないか?まあ明日でもいいが……休みだし。って、なんか違和感というか。引っかかること――って、ミスった。海夜が真横で覗き込んでいるのを忘れていた。
「——先輩」
「気にするな」
海夜の困った声に俺は即返事をする。そしてスマホの画面を閉じる。
「いやいや、数秒で長文が返ってきましたね」
「気にするな」
「あと、先輩の事大好きなんですねー。会うの楽しみです」
「——やめろ。吐き気がする」
「良いじゃないですか。うちのお父さんより」
「——どうだろうな」
まあ海夜の父も父か。って未だに俺会ってないがね。まあ会うときは俺が死ぬときな気がするが――。
「ってか。明日ですね。わかりました。私も準備しないとですね。何で行きましょうか?制服とかでピシッと。とかの方がいいですか?」
「来るなと言っても来るだろうし。来るなら――普通に私服にしとけ」
「そうですか?」
「うん。ってか、ミスった。海夜の事書かなかった……まあいいか」
「ドッキリですね。彼女連れてきたって!」
「いや――俺達がドッキリすることになりそうだが……」
「へっ?」
――――。
まあそんなことがありまして――翌日俺は渋々。渋々海夜を連れて久しぶりに実家へと向かっていた。電車に乗りバスに乗り――そこそこの移動である。
「外の景色がかなり変わりましたね」
俺の隣でちょっといつもよりおしゃれをしている海夜が外を見ている。
「大学とかの周辺よりかは家はあるがな。ってか家昔より増えたな。前はもっと畑だって気がする」
俺も少し変わったバスからの車窓を見つつつぶやく。
「ちなみに先輩。どこまで乗るんですか?」
「次」
「——もう少し早く言ってくださいよ。急なんですから」
「いや、ガチで忘れてた」
俺はそう言いながら降車するためボタンを押す。そしてバスが俺の実家の最寄のバス停へと到着する。
うん。久しぶりに地元の土地を踏むである。新しいものは――少し家が増えたくらいでその他はあまり変わってないという感じだな。
「先輩先輩。ここからはどっちに歩くんですか?」
「楽しそうだなー」
ってか。俺の隣を歩く奴がご機嫌なのが気になる。何でこいつこんなに楽しそうなのか。この後何が起こっても知らんぞ。うん。
「先輩?」
「はいはい。ここから5分くらい歩く。この道まっすぐ今バスが走っていった方にな」
「了解です」
それから俺と海夜は歩く、歩く。広めのバス通りをしばらく歩き――曲がると実家がある――はずだった。
「——うん?」
「どうしたんですか?先輩」
急に俺が立ち止まったからだろう。海夜が不思議そうにこちらを見てきた。
「しばらく帰ってこなかったから――道間違えた?」
「えっ!?そんなことあります?」
まあ驚くよな。うん。自分の実家も忘れたんですか?とね。でも――うん。おかしいな。かなりおかしい。俺の記憶の中では――バス停からバス通りをまっすぐそして曲がると――実家が。のはずなのだが――。
「おかしいな――この更地になっている場所なんだが……」
「はい!?」
再度俺の言葉により海夜が驚いているのは置いておいて……って、俺もかなり驚いている。いや、だって、数年前まではここ。今俺達が居る場所の目の前。今はどう見ても更地だが。そこに家があったはずなんだよ。普通になんか親父と揉めつつと言うか――うん。揉めつつしておこう。そんなことがありながらも過ごしていた家があるはずなのだが――今そこは綺麗に更地になっていた。うん。どういうこと?慌てふためくということはなかったが――俺これでもかなり動揺してますからね?家が無くなってるんだもん。普通ない事だろ。
――マジでどういうこと?だった。しばらくぼーっと考える俺。うん。立ちすくむって感じだな。
「ちょ、先輩先輩」
「——うん?」
海夜の声により俺は現実に戻るまあこの間数秒の事だと思うがね。
「こういう時は連絡かと思いますが――?」
「あっ。それもそうか。昨日連絡出来てるんだもんな。死んではないもんな、幽霊が返事していただと――だが」
「ゆ、幽霊なんていませんよ」
「——もしかして海夜幽霊怖いの?」
「——こ、怖くないです」
「ふーん」
「なんですか」
「別に」
偶然だが海夜の弱点をまた知った気がする俺だった。まあそれはちょっと頭の隅に移動させて――。
俺は海夜に声をかけられた後。スマホを取り出した。
って――マジで何で家が無くなっているんだよ。おかしいだろ。この驚き。ドッキリは――予想してなかったよ。他はいろいろ予想していたんだが……。例えば、親父が性別変えてるとか――えっ?それこそない?まあそうか。あとは――再婚するとか。下手したら既にしていて子供いるとか。あとは――何だろうな。基本おかしなことというか。俺には何も言わずにするからな。まあでも俺を自由にさせてくれているのは感謝だが――。
俺はそんなことを思いつつメッセージで「家がないぞ」と送ってみると――3秒で返事があった。
そうそう。先に言っておこう。昨日から俺が親父との連絡で、メッセージでしか使ってないのにはちゃんと理由がある。
うちの親……電話だと長電話。話し出すと切らないのでね。うん。だからメッセージで俺は連絡しているのである。って――昨日よりさらに早く返事が来たのだった。それはそれでビックリだよ。
「なんて返事来ましたか?」
海夜が俺の手をぴっぱりつつ。見せろ、という感じでスマホの画面を覗いてきたので――まあそのままメッセージを開いてみると――。
『ああ!そういえば昨日言い忘れたな。引っ越したんだったー。ごめんごめん。バスでさらに山の中まで乗って終点の近くだから。終点で降りて、そのまま山道登ったところだから。すぐわかるよ。ってことで、待ってるから早く帰ってこいよ仁悠ー。早く会いたいぞー』
そんなメッセージが返って来ていた。
「……」
「……先輩のお父さん――面白いですねー」
「帰っていいかなー。Uターンという選択肢もある」
「行きましょうよ。って。もしかしてさっき乗って来たバスですかね?」
「だろうな。1時間に1本だからな。ここから終点だと距離があるからタクシー呼んだ方が早いかもな」
「じゃあタクシーの番号調べましょうか?」
ちなみにその後の事を言うと、結局タクシーが来るまで、30分以上かかると言われたため。俺と海夜は先ほど降りたバス停まで戻り。そこでしばらく話しながら待って――次のバスで山を目指したのだった。
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