第177話 こっちの実家も大変

「唐突ですが。先輩。実家?には帰らないんですか?」

「またホントいきなりだな」


夕方。リビングにてのんびりしていたら学校帰りの海夜がそんなことを聞いてきた。そういえば最近よくよく海夜はこのことを俺に聞いてくる気がする。って、海夜のスマホぶっ壊れてから毎日のような気もするんだが……うん。まあまだ数日だが毎日聞いてくる気がする。


「帰らないんですか?」


俺がいろいろ考えていると2回も聞いてきたのだった。


「なあ、海夜、最近はなんで急にこの話ばかりになったんだ?俺の実家なんていいだろ?」

「いえ、先輩は私の親——まあお母さんだけですが何回か会ってますし。そろそろ先輩のところにも……かな?と、ふと思いまして」

「やめとけやめとけ」


俺は手で払いつつ嫌な予感を予想しつつ返事をする。


「なんでですかー。って、そういえば先輩ほとんどそういうこと話さないですよね?前も聞いた気がしますが。触れちゃダメなんですか?」

「……いや……うん。まあ、ダメってことはないが……触れない方がいい」

「?どういうことですか?」


曖昧な返事ですね。みたいな表情で海夜が見てくる。いや――ホントなんだよ。うん。曖昧にしか――というか、詳しく言いたくないというか……疲れたくなしい。うん。相手すると疲れるんだよ。向こうも。


「——海夜の母の数倍やばい可能性だな」

「え?」

「やばいんだよ。無駄に」

「いや、えっと……どういうことですか?」


俺が言えるのはそのくらいだな。これで海夜が諦めることはないと思うが――諦めてくれたらラッキー……。


「そうだなー。海夜が赤面することになる?いや――俺が疲れる、やっぱりそれだけか」

「えっ!?私が?なんで!?先輩の実家ですよね?」

「そういうことだからやめとけ」

「——でも、先輩パソコン無くてぶつぶつ言ってるじゃないですか。それこそ毎日言ってますよ?」

「……気のせい」

「言ってますよ」

「……」


海夜に言われて、よくよく考えてみたら。俺もパソコンに関してはつぶやいているかもしれない。いや、パソコンないとね。スマホだけではできないこともあるのでね。


「先輩。そういうことで行きましょう」

「なんでグイグイなんだよ」

「好奇心?」

「はぁ……うーん。まあさすがにパソコン必要だから……毎回大学のパソコンは休みに出来ないしな。一回は資金獲得に――か」

「じゃ、行きましょう。資金獲得に」

「いや。海夜来なくてもいいだろ?」

「行きましょう」


あっ。ダメだこいつ。来る気満々だ。と感じた俺は――無駄な体力を使う前に早々に諦めたのだった。後は――向こうがちょっと大人しくなっていてくれたらいいのだが……まあ無理だろう。久しぶりだし――相当ウザいかもしれない。などと思うだけだった。


「……はぁ、わかった、わかった。連れて行ってやるよ。そのかわり――」

「そのかわり?」

「……親父と仲良くならないこと」


うん。これ大切。ここ重要ってやつだな。海夜と親父――なんか合わせると仲良くなりそうなんだよ。俺の直感だがな。俺的に海夜の母に近い感じがするが――でも海夜からするとまた別タイプ。もしかしたら、無駄に話が――と言うのがあるんでね。


「え?なんでですか?ってか先輩そういえば先輩って……お父さんとお2人?でしたっけ?前にチラッとだけ――」

「あー、言ったような言ってないような……まあぶっ飛び親父が居る。だから仲良くならないように」

「——ぶっ飛び?って、普通仲良くするべきでは――?」


まあもう遠い昔のことは忘れた。ってか、うん。できれば海夜は会わせたくないんだよなぁと再度海夜の声を聞きつつ思う俺。

絶対――馬鹿親父が気にいる気がするんだよ。信じられないくらい気に入るだろうから。海夜――いじりやすいというか。うん。今の雰囲気ならね。前の海夜なら――だが。今の雰囲気は……親父好きそうなんだよ。うん。いじれるまたは――意気投合が最悪のパターンか。俺が死ぬ。


まあそれからことはとんとん拍子で進んでしまったんだがね。


いきなり実家に帰る――というのは、まあさすがに向こうも――ということで、俺は一応メッセージにて久しぶりにホント久しぶりに親父に連絡をしてみると……。


メッセージを送って約7秒だった。


♪♪


「あっ。先輩。早速お返事じゃないですか?」


連絡の際俺の隣に居た海夜がすぐに反応して、俺のスマホに手を伸ばしていたので、俺は変な物を見せるといけないので、サッと海夜の手からスマホを回収。


「どれどれ」

「ちょ先輩。見せてくださいよー」

「個人情報だ」

「何でですかー」


海夜とそんなことを言いながらメッセージの確認をしてみると……いろいろ気持ち悪かったのだった。うん。変わってないどころか。悪化している気がした俺だった。

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