第171話 困ることはありませ――ん?3

現在ショッピングセンター内の通路隅っこに居る俺と海夜。いや電話がかかって来てね。とりあえず――。


トン。


スマホをタップして俺は電話に出る。


「——はい」

「あっ。二階堂さん。元気?」


うん。普通に海夜母の声が聞こえてきた。


「えっ。あっ、はい。えっと――どうしました?突然」

「いや、ちょっとね。海夜の事なんだけど」

「あー、はい。ですよね」

「あの子なんか拗ねちゃっうてるのか。怒ってるのか。全然昨日から電話に出てくれないってか。電源切ってるみたいで。二階堂さん海夜どうしてる?ってね」


海夜母――心配はしてないと見た。うん。心配をしている雰囲気ではない。むしろ楽しんでいる感じに俺には聞こえてきた。


「……あー、まあ拗ねてはないかと。あと、怒ってもないかと」

「ですよねー。だから二階堂さん経由でかけて見ましたー」

「——テンションがおかしい。こういう時は――海夜。話すか?」

「あら?海夜居るの?まあまあまた甘えてるのねー」


俺がスマホを海夜に渡す際になんか聞こえて気がしたが――聞こえなかったことにしよう。


「あっ、えっと、わ、わかりました――――もしもし?」

「——」


さすがにショッピングセンター内なので海夜母の声は俺には聞こえなくなったが――その後海夜は――なんかワタワタ?いや、怒りつつ?うん。なんかいろいろ言いながらも母にスマホが壊れたことを伝えていた。話しながら少しずつ俺から離れていったのは――なんなんだろうな?話が聞かれたくなかったのだろうか?それとも――いつものパターンか。


まあ俺がそんなことを思いつつ待っていると――。


「——わかった。あとで――うん。先輩。終わりました」


俺がしばらく海夜の隣で壁に持たれつつ待っていると電話は終了したらしい。海夜がスマホを返してきた。


「どうなった?」

「スマホはないと連絡に困るから、今から帰って来て買い替えなさいと」

「まあだよな。さすがに連絡取れないと心配だろうから」

「あと――先輩」

「うん?」

「先輩は帰ってください」


あれ?珍しいな。だった。海夜が別行動を選んで来たよ。


「えっ?」

「——先輩が一緒だと――余計な事言われます」

「あー、なるほど。いやでも実家行ってまた買いに――だと夜にならないか?」

「大丈夫です。何か言われるより――です」


どうやら海夜俺と母親を合わせたくないらしい。まあ海夜が恥ずかしがる。って未来が見えているからな。などと俺が勝手に思っていると――。


♪♪~


再度俺のスマホが鳴った。相手は――海夜母。何か伝え忘れたのだろうか?などと思いつつ俺が今度はすぐに出てみると――。


「——はい」

「あっ、二階堂さん。良かったわー。出てくれて」

「はい?」

「先輩――まさか」


隣では海夜が――嫌そうな顔をしている。うん。海夜あたりだ。そんな海夜を見ている間も海夜母からのお話は続いており。


「海夜がね。1人で行くとか言い出してないかなー。って思ってね。二階堂さんには悪いんだけど。一緒に来てもらえないかしら?時間的に遅くなっちゃうかもだしー」

「……本人に代わりましょうか?」

「大丈夫よー。切られちゃうから」

「——よくわかってらっしゃいます」

「あっ。海夜に1人で来たら――ふふふっ。って、伝えてくれるかしら?」

「——お2人で話した方が――」

「ふふふっー」


プチ。


「……切れた。切られた」


うん。何だったんだよ。と俺が思っていると――。


「先輩。お母さん?ですよねー」

「ですね。なんか一緒に来ないと――ふふふっ。とか言いながら電話切られた」

「……先回りされた」


頭を抱える海夜。うん、親子だからね。うん。海夜の行動は読まれているだった。


「まあ夜になるし付いていくよ。海夜のところここからなら近いし」

「——先輩。お父さんが居たら殺されますよ?」

「……その可能性忘れてた。ヤバいな」


うん。本来なら身のために覚えておかないといけないことなのだが――綺麗に忘れていた俺だった。あれ?思っているほど俺怖がってない?うん。まあとりあえず今のところはいいか。


「まあ大丈夫です。前にも言いましたが死ぬときは一緒です」

「まだ死にたくないわ」

「なるべく刺されないように警戒はしてますね」

「何でいつも刺される設定なのか……」

「何となくですね。串刺しの先輩――」

「怖いからやめような?」

「大丈夫です。守りますから」

「おかしいからな?ってか――どうなることか」

「だから言ったじゃないですか。私一人で行くって」

「いやでも、それだとなー。海夜が1人になるし」

「なんやかんや言って最期まで優しい先輩でした」

「——ちょっと待て、海夜。今俺殺されなかった?」

「てへっ?」


ちょっと悪い顔の笑顔をしている海夜――これは……。


「……あとでお仕置きだな」

「な、何でですかー。ってか先輩お仕置きって言葉ハマってます?よく聞くような――」

「海夜が調子乗らないように教育も必要かとな」

「必要ないです。まあとりあえず先輩。行きましょう」

「まあだな。話していても遅くなるな」


俺が歩き出すとすぐに海夜が横に来て、今度は腕に掴まって来たのだった。うん。引っ張れなのかな?しっかりくっついてきた海夜だつた。


はい。海夜母に完璧に予想されたことにより。俺達はショッピングセンターから海夜実家へと向かうことになったのだった。

この後どうなるかは――全くわからない。うん。嫌な予感しかしないのは――何故だろうな。

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