第170話 困ることはありませ――ん?2

出遅れたというか――単なる寝坊から始まった本日。現在俺達は携帯ショップへと無事に到着したところなのだが――うん。到着しただけである。


「携帯ショップ混んでますねー」


隣に居る海夜の言う通り携帯ショップはざわざわしていた。うん、予想以上に混んでいたのだった。


「待ち時間長いな」


整理券番号を見つつ俺がつぶやく。行ったらすぐに見てもらえると思っていた俺はマジかよ。だった。


「まあショッピングセンター内ですから他を見て回ってましょう。あっ、先輩ぶっ倒れる時は早めにいうんですよ?いいですか?」


突然お姉さんキャラ――うん。全くその雰囲気はないが。でも海夜は多分そんな感じで俺に話しかけてきた。


「元気だよ。めっちゃ元気だよ。睡眠最強なんだよ。ってかなんで俺ずっと心配されてるんだよ。元気だって何度言えばいいんだよ」

「睡眠最強って何回か同じこと聞きましたね」

「海夜が聞いてくるからだよ。ってか1時間以上はかかるかー。どうする?海夜」

「お買い物デートですね」


俺が待ち時間をどうするか確認すると海夜がすぐに答えてきた。どうやらその計画もばっちりだった様子だ。


「まあ、そうなるか」

「先輩先輩。先輩がぶっ倒れないように手をつないであげます」


俺が無駄なもの買わないようにしないとな。うん。ぶらぶらしていると――などと思っていると海夜が手を繋いできた。何でぶっ倒れないために手をつぐなのか分からないが――本当に心配するなら家で待機させるのでは?とも俺は思いつつ。


「……明日海夜が遅れながら風邪をひくな」

「ひきませんから。私も元気です。先輩のお世話できるレベルで元気です」

「わからんぞ?」

「元気ですから。先輩が再度ぶっ倒れるんです。そしたらまた私が看病しますから」

「——こいつ。単に看病がしたいだけ――って、寝てたしなー看病がしたいというわけでもないのか……」

「あっ、あのお店行きましょう」


俺がつぶやいていると海夜が引っ張ってきた。


「聞いちゃいない。って、待て待て引っ張るな。っか。コロッと話変えたよ」

「なんですか?何か言いましたか?」

「もういいよ。にしても、寝てるだけあってホント元気なやつ」


自分に不都合な話は聞こえないようにしているのか。海夜は俺のつぶやきには反応せず。進んで行く。


「先輩先輩。まず服見たいです」

「はいはい」


結局俺は海夜のお供をすることになったのだった。


それから携帯ショップの順番が来るまで俺と海夜はショッピングセンター内を回った。海夜の服見たい。雑貨見たい。そういえばここ前に先輩と会って、荷物運んでもらいましたね。などなど。うん。俺連れまわされながら。過去の事もちょっと話つつという時間となったのだった。


なおその途中。雑貨店にて――。


「海夜海夜」

「はい?なんですか?何かいいものありましたか?」

「犬耳とキツネ?うん。キツネの耳どっちがいい?」


俺が商品を手に持ち海夜に聞いてみる。


「——な。何をいきなり聞いてくるんですか!って、先輩そのシリーズ好きすぎますから!」


いや、たまたま雑貨店でコスプレ?の商品がいっぱいあってね。ふと新たなものを手に取ってみたら――海夜に怒られたのだった。


「あっ、海夜は――巫女さんもいいかも?」

「先輩が変態すぎて困ります」

「いや、似合うって言ってるんだが――」

「変態」

「店内で普通に言うな」

「変態」

「おい」

「はぁ――誰ですかね。こんな先輩に育てたのは」

「海夜」

「ち、違うますよ!?私買ってないですから。先輩が買っただけです」

「まあ始まりは海夜母か」

「——先輩とお母さんは――似ている……ダメダメ」


隣で海夜が頭を振りながら何か言っていた。


「なんかぶつぶつ言ってるよ」

「先輩。このお店はダメです。出ましょう」


その後また俺の手を掴み引っ張り出したのだった。


「いや、暇つぶしには良くないか?」

「先輩が変態になりますからここはダメです」

「店内です変態変態と言わないように」

「ド変態の先輩」

「おい。悪化してどうする。周りから変に見られるだろうが」

「先輩が悪いんですよ。あんな恥ずかしい姿――さあさあ、まだ時間はありますから。何か飲み物でも飲みに行きましょう」


はい。結局雑貨店ではお買い物とはならなかったのだった。いや、海夜ならいろいろ似合いそうだったんだがな。残念。またの機会にしよう。


雑貨店を出た後の俺達は水分補給と言いつつ。たまたま通りかかったペットショップでしばらく止まっていたのだが――まあそれはいいか。

いや、犬や猫が居たんだがな。海夜が気が付いたら吸い寄せられていき――だったよ。あれだな。似た者同士引き寄せられたのだろう。


「かわいい。先輩めっちゃ可愛いですよ」

「あー、寝ころんだ」

「あー、乗っかりました。じゃれてますね」

「先輩先輩。あれ先輩みたいなわんちゃんが居ます」

「——はい?」


うん。途中でなんかおかしなことを言われた気がするが――まあいいか。うん。俺は犬ではないからな。うん。


「いやー、癒されました。って、先輩そろそろ携帯ショップ見に行きましょうか」

「了解」


しばらくペットショップにて海夜が張り付いていてから、その後俺達は結局水分休憩へとたどり着くことなく。携帯ショップへと再度向かい――ちょうど順番だったのでそのまま案内され海夜のスマホは無事に――直りませんでした。


はい、直らなかったのだ。


俺達はショップの人と話して――見てもらって――出てきた。という感じだった。


「まさかです。ショップで直るかと思ったんですが――」

「まあケーブルとかの問題じゃなかったからな。嫌な感じはしていたが――」

「これは――お母さんに資金調達ですかね」

「まあそうなるだろうな」


携帯ショップから出てきた俺と海夜。海夜は電源の付くことなく手元に戻って来たスマホを見つつつぶやいていた。

ちなみに買い替えを進められていたが――なんせいろいろと高いのでね。うん。高い買い物さすがに親への――ということでお店を出て来たところである。


「何で壊れちゃいますかね。まあ別に先輩と連絡できないだけなので――なんですが」

「さすがぼっち」

「先輩に言われたくないです。でも先輩と連絡できないと――困ります」

「困るか?」

「困りますよ」

「ふーん。って、まあ俺もメモリーの事で言えば、俺も消えても問題――って忘れてた!」

「どうしたんですか?急に」

「せっかく来たならパソコン見ようとしてたんだよ。まあパソコンも高いからな。一部親に支援してもらいたいが――」


そうそうぶっ倒れていたから忘れかけていたが。パソコンよパソコン。あいつも中のデータは――諦めよう。うん。課題とかのが入っていたが――あっ、でもメモリーカード。USBの方にも入れてた気が――しないわ。うん。USB持ってはいるが――保存した記憶はないわ。本体に入れておけばいいや。って感じで――うん。今度からは保存するか。


「あっ、そういえばですね。私が――壊した」


ちょっと落ち込む海夜。


「いや、まああれは海夜ではない。ボロ買った机が悪い」

「ですね!」


あれ?今落ちこんでいるように見えたのだが――気のせいだった?えっ?


「切り替え早っ。って、海夜はどうする?」

「えっ?何をですか?」

「この後だよ。実家――行ってくるか?スマホの買い替え」

「——とりあえず電話にしておきます」

「極力接しようとしない子だった」

「だってー。いろいろ言われますもん。疲れますもん」

「……まあそれには納得」

「ということで先輩」

「うん?」

「スイーツ食べて帰りましょう。あっ。先輩のパソコンの偵察をして?ですかね」

「まあせっかく来たからパソコンは見たい」

「じゃ決まりですね」


そんな感じでとりあえず今日は――海夜と話しながら歩いていると。だった。


♪♪~


珍しいことに俺のスマホが鳴った。そのため俺が通路の隅に移動するとそれに気が付いた海夜も付いてきた。

ってか。スマホが鳴るのはそこまで珍しい事ではな無いんだが――ね。でも電話ってなかなかなくて。かけてきそうな奴はスマホ壊しているし。などと思いつつ画面を確認すると――うん。これは――何だろうな。タイミングよくというのか。怖いな。


「——海夜」

「はい?ってか。先輩それ――電話?ですよね出ないんですか?」

「いや、海夜母からなんだが――そういえば登録は――したっけ?まあいいか」

「なっ!?何で先輩のところに――えっ!?」

「海夜のスマホが繋がらないからでは?」

「……なるほど」


うん。ドンピシャというのか海夜母からの電話だった。とりあえず俺は通話ボタンを押してみることにした。

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