第168話 不調?

昨日は俺の看病を頑張りました!と自己申告を必死にしてきた海夜を今は撫でているところである。

サラサラな髪は撫で心地良し。ってか。気が付いたら海夜ニヤニヤという感じで俺にもたれてきていた。ちょっとほっぺでも突っついてやろうかと思ったが――いや、やわらかそうで……うん。でも今はちょっと思い出した事を確認のために俺は聞いてみた。


「ってか。海夜?」

「——あっ。はい?なんですか?」


どうやら海夜。ちょっと違う世界に行きかけていたみたいだが――戻って来たらしい。


「いや、なんかスマホが充電できないとか言ってなかったか?」

「あっ、はいはい。そうなんです。ケーブル差してもうんともすんともで、少し前から差していても充電できてないー。ってことがあったんですが。ここ数日は完全にできない感じで」

「まあ……じゃあスマホあるか?」

「あっ。はい。一応持ってます」


そう言うと海夜がスマホを手に持ち――俺に渡してきた。それから俺は海夜を抱えつつ――って、抱えている必要はなかった気がするが。海夜がくっついていたんでね。まあそのまま抱えて――充電ケーブルを取りに行く。その際に「ひゃっ……もう急に持ちあげないでくださいよ。落ちるところでした」などというクレームを受けたが――知らんである。落ちたくなければ自力で捕まっていてくれである。

まあそんなこんなで、たまたま俺と海夜は同じケーブルで充電できるため。俺が普段使っているものを海夜のスマホに差して、充電できるか確認。


「……」

「……」


何も音すら鳴らない。一応電源ボタンを――だったが。充電中のマークすら出なかった。

試しに海夜のスマホからケーブルを一度抜いて――俺のスマホに差してみると……。


♪♪


普通に充電できた。それを確認してから再度海夜のスマホに差してみるが――。


「……」

「……」

「何も反応しないな。海夜のスマホ」


うん。本当にうんともすんとも言わない海夜のスマホだった。


「そうなんですよ。前は頑張れば、ってか。何度かに1回くらい充電できたんですが」

「それさ。頑張る前にショップ行った方が良かったんでは?ってか頑張ったら充電できるってなんだそれ?」

「頑張れば充電できたんです」

「……まあでもこれだと何もできないから――いろいろ面倒では?ってかショップ行って来ようよ」

「まあ――でも最近は雨でしたし」


はい。海夜の言い訳タイムが始まったのだった。人にしがみつきながらなんかもじもじしている。


「つまりは――面倒だったと」

「それに――別に壊れていても――先輩とならこうやって来たら話せますし」

「でも必要な時に使えなかったと」

「まあ、です。はい。大変困りましたし。冷たかったです」

「濡れネズミだな」

「ネズミじゃないです!」


耳元で大きな声はやめろ。と俺は思いつつ。


「まあ、今日せっかく早く起きてるし。ショップ行くか?ついていくぞ?」

「えっ。先輩――病み上がりですよね?」

「いや、もう元気。超元気」

「絶対嘘ですよね?昨日ぶっ倒れてたんですよ?私の知る限り。ホント起きないし。何も飲まないし。食べないしだったんですよ?一応心配しましたからね?」

「まあだよな。俺も途中で起きた記憶は確かにないが。でも元気」

「うーん。確かに今日はまだ早いですが――でも明日も休み。はい、今日は安静にです。私がこうやって乗ってます。明日行きましょう」

「——ちょっと待て、海夜が乗っている。しがみついているってのは安静に入らないんじゃないか?」

「良いんです。明日連れて行ってください。今日は先輩を見守ります」

「いやいや、ってか。もしかして――海夜実は超心配してくれていて。今泣いてる?」

「全くそんなことはないです」

「……ないのか」

「ないですね。まあ先輩はじめこそぶっ倒れてましたが。その後は寝ている。でしたから。だから――昨日相手してもらえなかったから、今日は相手をしてもらいます。っていう見守りです」

「いや、意味わかんない」

「意味わかんなくないです。優しい私は先輩に無理をさせないために、今日はスマホが使えないのを我慢して――先輩の見守りをすると言っているのです」

「……ふと思ったのだが――これ海夜が甘えたりなくて今甘え中で動きたくないから明日とか言ってるんだよな?違うか?」

「……」


はい。単なる寂しがり屋。甘えん坊でした。うん。そっぽを向く海夜だった。ツンツンほっぺたを突っついてみると――。


「むっ。お触り禁止です」

「言い方がおかしい」

「禁止です」

「はいはい。甘えん坊ね。まあこの様子だと動かないみたいだから今日はしばらく抱いていてやろう。で、明日ショップ行けばいいんだろ?」

「——はい」


うん、そんな感じでなんかまったりとその日は過ごすことになったのだった――って、その後のことを言うと――。


「……昼寝かよ」


それから数十分後。俺に掴まった状態で海夜は寝ていたのだった。うん。寝不足?ってやっぱり昨日変な姿勢で寝ていたから海夜は疲れがあったらしい。そのため――まあ次はちょっと布団も乾いた。ってか……ささっとだがベッドを綺麗にしたから――俺は寝ている海夜を俺のベッドへと寝かせておいたのだった。


ちなみにお昼前まで海夜は寝ていましたとさ。安心したのかは知らんが――うん。寝ていたのだった。まあ今日はのんびりで正解だったらしい。

  

ちなみに午後から夜にかけてもまた海夜が引っ付き虫だったのだが――それはいいな。うん。甘えん坊が居ました。おしまいである。ホントずっとくっついていたが――なんなんだろうな。俺から体力を抜き取ろうとでもしていたのだろうか?まあいいか。別にいやではないし。うん。とりあえず一日中海夜が甘えてましたとさ。おしまい。うん。

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