第164話 安静に……3

「この変態先輩。バスタオル1枚で普通に出てこないでください。ビックリじゃないですか。変態」

「病人に対して厳しい。って、ちゃんとバスタオル巻いてただろうが。素っ裸よりはるかにマシだ――ハクシュン!」

「——変態な姿で出てくるから」

「着替えを出し忘れたから仕方ないだろうが」


海夜に本を投げられたのは数分前。今はちゃんと着替えて、寝る気満々の俺の隣で海夜がぶつぶつ言っているところである。ってか、寝ると俺は言っているのになかなか帰らない海夜である。


「で、先輩。何で寝ないんですか?」

「誰かさんが帰らないからだよ!?帰ったら即寝るよ即」

「私は看病に来たのでどうぞどうぞ。先輩はグースか寝てください」

「……超寝にくいじゃん。こいつ俺の体調不良を悪化させたいのか。っか。風邪うつっても知らないぞ」

「大丈夫です。先輩の風邪菌とか余裕です。見ての通りぴんぴんしてます」


細い腕で――力こぶを作っている海夜。うん。すごくやわらかそうに見えるのは――言わなくていいか。って、まあそんなすぐにはうつらないだろである。


「——はぁ……相手してると疲れるから寝るか」


海夜は帰る気がないと判断したのとマジで疲れてきたので俺は海夜がまだいるがベッドに横になった。うん。あー、楽。


「はいはい。寝るんですよ。先輩。子守歌いりますか?」

「……」

「寝ました?」

「……」

「無視ですか。いい度胸ですね。勝手に子守唄コースですかね」

「寝かせろ!」


うん。確定だろ。完全にこいつは俺をぶっ倒すために居ると認定した。元気になったら――なんかしてやろう。


「——びっくりするじゃないですか」

「マジで怠さレベルが上がってるからそっとしておいてくれ」

「わかりました。お大事にです」


その後やっと海夜が静かになり。俺は――すぐに夢の中。うん。即夢の中だ。

やっぱり疲れていたんだな。横になって目をつぶったら即夢の中。うんうん。

ってか。海夜が帰ったかの確認や。あっ、帰ったんなら玄関のカギ閉めてないが――まあ別にいいか。留守じゃないんだしな。


――――。


それから俺はしばらく夢の中で元気に動き回り――いや、なんかはっきりは覚えてないが。なんか快適に?うん。気持ちいい空間の中を動き回っていた夢を見ていた気がしてね。もう忘れたが――でもなんか気持ちい夢を見ていたと思う。うっすら頭の隅にね。気持ちいい感じが残っていたんだよ。

まあそんな快適な夢から目覚めたときは――部屋が真っ暗だった。外も静かな雰囲気だった。確か俺が横になった時はお昼を過ぎたところ――などと思い出しつつ。


「——うん?何時だ?」


――ムニュ。


「うん?」


暗闇の中多分近くにいつもならあるスマホスマホ――と探すと――何かやわらかいものに触れた。俺の横に――何か居る?って、それと同時にスマホに手があたり俺はスマホの画面を見る。時間は――深夜4時。うん。早朝4時かな?

ってか。なんか――腹減ったけど。もうこのまま我慢で朝でいいや。という時間だった。って――身体が軽くなっていた。うん。めっちゃ軽いじゃん。おっ?まさかの寝たら全回復?と身体を動かし確認する俺だった。


俺の身体すごいな。薬とかなく。単に寝ただけで回復かよである。でもまあ――って待てよ?俺――12時間くらい寝てないか?これは――寝すぎ?いやでも回復したからいいのか。うん。って――ムニュってなんだ?


俺はちょっと恐る恐る自分の近くをスマホの画面の明かりで照らしてみると――。


「——むにゃむにゃ」

「……馬鹿か」


ベッドにもたれるように海夜が寝ていた。こいつ――こんな体勢で寝れるのかってよくよく見たら俺の服を着てる。つまり――。


「ずっとここに居たのかよ。風呂くらい自分とこで入れよ。何をしてるんだよ」


俺は起き上がりちょっと背伸びをする。うん。本当に回復してるな。全く怠さはない。まあでも汗をかいたみたいなので風呂には入りたいな。って――まずはベッドにもたれている馬鹿を何とかしないとダメだよな。でも俺のベッドに寝かせるのは――なんかな。汗かいたし。うん。こういう時は――連れ帰るか。である。


「鍵探すためだからな」


俺は部屋の豆電球だけ付けてから――寝ている海夜に声をかけ。スマホのライトを頼りに部屋の隅に置いてあった海夜のカバンを漁り――って、いつも海夜が鍵を入れている場所は見ていて知っていたのですぐに発見出来た。そして荷物を持ってから――海夜を持ちあげた。うん。起きていたら騒ぎそうだが。とりあえず寝ている海夜を持ちあげる。熟睡中なのか。全く起きる気配がなかった。っか。普通に俺の服の上下を探し出したのか来ている海夜。サイズがあってないから――また脱げるぞである。まあもちろんめくるとかそんなことはしないが――無駄に気を付けないとじゃないか。と思いつつ。海夜を持ちあげた。


それから俺は薄暗い部屋を慎重に進み――外へ。

まだ暗い時間。外もかなり静かだ。たまに車の走る音が聞こえるくらい。雨も――あがっているみたいだった。ってか、海夜を落とさないように慎重に――って、こいつ軽いから運ぶのは簡単なんだがね。

そんなことを思いつつ俺は海夜の部屋の前へと到着。そして海夜を抱えたまま――ちょっと頑張って鍵を開けて――室内へ入った。不法侵入には――ならないよな?うん。


ってか。このまま寝かせていいのだろうか――?と、思いつつも海夜の部屋を漁るわけにはいかないので――あとが怖いからな。とりあえず海夜の部屋に入り。電気を付ける。うん。これでも海夜は起きなかったので――そのままそっと海夜ところのベッドに下ろして――布団をかけて俺はさようならだ。


鍵は――俺が持っていていいよな。さすがに鍵閉めてやらないとだしな。


ということで、海夜を運び。海夜のところの玄関の鍵を閉めた後。俺は自分の部屋に戻ったのだった。


俺の予想では――明るくなったら海夜が俺の部屋に乗りこんでくるだろうである。そんなことを俺は思いつつ自分の部屋に入ると次は電気を付けた。すると――先ほどは豆電球だけだったから気が付かなかったが。俺の部屋の玄関に海夜の傘があった。まあそうか。海夜と一緒に帰って来たからな。って、さらに別の物があった。何があったって?靴である。そういえば――そうだよな。うん。裸足で来る奴は居ないからな。まあこれもあとで渡せばいいか。などと思いながら地味に忘れ物が多いなと思いつつ室内へと入り電気を付けると――。


「うん?」


机の上に袋が置いてあった。あれ?俺こんなもの置いていたっけ?と思いつつ中身を見ると――熱が出た時に貼るシートと、飲み物。ゼリーに身体拭きシート。お菓子の袋があった。って、ふと俺はおでこを触ると――なんか貼ってあった。

うん。海夜の奴が貼ってくれていたらしい。いや、まったく気が付かなかったよ。うん。俺こんなの貼ったまま外に行っていたらし。まあ誰も会ってないからいいが。って、お菓子の袋は食べたあとだったので――。これは海夜が食べたゴミと見た。看病してるのか。くつろいでいたのか知らんが――でもまあ。


「あとでお礼はしないとか。いろいろ買ってきたみたいだし」


俺はそうつぶやきつつ。ゼリーを手に取り頂いたのだった。うん。美味い。マスカット味だな。いや、食べ物があったらやっぱり食べたくなってね。って、次は水分水分――すると飲み物を取ろうとした際。机の上。袋近くにメモが貼ってあったのに気が付いた。


『先輩。冷蔵庫に半分冷やしてあります!』


可愛い文字でそんなことが書かれていたので――冷蔵庫を見てみると。ちゃんと冷えている飲み物もあったので、今は冷たいものが欲しかったため。俺は冷蔵庫の飲み物をもらったのだった。うん。水分補給完了である。


それから俺は寝すぎたのだろう。うん。あれは寝すぎだ。当たり前だがその後全く眠くならず。むしろどんどん俺は元気になり――。

明るくなってきたころには風呂に入っていた。って、いつの間にか洗濯までしてもらってあった――海夜。めっちゃいろいろしてくれていたというね。ってか。ここにも忘れ物があった。海夜の制服も一緒にあったというね。もしかしたら買い物に行ってくれてその際に濡れて干してあったのかもしれない。


ちなみに――ホントに海夜の奴ここで風呂に入り。俺のと自分のまで洗濯したみたいだったので――うん。パパっと洗濯を片付けて――なんかいろいろ見た気がするが問題ないだろう。

片付けた後俺は朝風呂だ。うん。気持ちいわーだった。


その後風呂から出た後はのんびり過ごしていて、さて、朝は何を食べようかな。などと俺が思いながらテレビを見ていると――。


俺の予想より早く海夜が戻って来たのだった。

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