第163話 安静に……2

「——微妙」


翌朝。昨日の嵐が嘘のように快晴――とはなっていなかった。でも、雨は今のところ止んでいるみたいで――うん。超どんよりだな。

さあ元気に大学行こう。いい朝だ。とかは言えない。まあ俺がそんなこと言うことは一生ないと思うが――って、天気が微妙。というわけではなく。体調が微妙な俺だった。


いや、普通に大学に行くために起きたのだが――動けないということはない。でもなんかボーっと。する。嫌な予感――ということで。熱を測ってみると――「37.7度か」うん。熱があると言えばあるのだろう。でも――動けるのは動けている。ってか普段から体温を測っているとかではないのでわからないのだが。別に俺——低体温とかいうことはないと思うので――もしかしたらいつもより気持ち高いくらい。なのかもしれない。


ちなみに何かの間違えで高く出たのかな?と思い。2回目を測ってみると――「37.3度ね」うん。微妙すぎる。


寝てればいいじゃんと言われるかもしれないが――うん。今日は大学午前中だけだし。動けないこともないし。行くか。という判断をした俺だった。

それに今日行けば明日は休みなのでね。

それに、休むとね。誰かに前回の講義を――となるのだが――俺にそんなよく話す奴など居ないのでね。うん。休むと面倒なんだよ。


ということで、食欲もあり。まあ普通と判断した俺は大学へと向かったのだった。


そして1限。2限――と講義を受けて――。


「超――怠い」


お昼前。朝よりはるかに体調が悪くなっていた。でも何とか講義は終了して後は帰るだけ――って、雨がまた降りだしていた。


「何で振って来るかな」


俺は講義棟から出つつそんなことをつぶやきながら傘傘――と思い傘を探して気が付いた。


「あっ。持って来てない」


うん。朝雨が降っていなかったということと。ちょっとぼーっとしていたからか。傘を持って来ていない俺だった。

まあこの時間なら大学にある売店に向かえば――少し濡れるが傘は売っているかもしれないが――ここから売店に行くより駅の方が近いという場所に居る俺。


「——帰って風呂入って寝ればいいか」


うん。どうせもう風邪をひいている感じの俺、とっとと帰ることを選んだ。


ザァ――。


が。講義棟を出てすぐ。大粒の雨に天気が変わったのだった。

さすがにこの雨ではずぶ濡れ。昨日な海夜に濡れネズミとか言ったが――今日は俺がそれになってしまうレベルで降って来たので、大学の事務所?なのかは知らんが。まあいろいろなところが入っている建物の玄関に一時避難した俺だった。


「ついてないな」


空を見つつつぶやく俺。


俺の前を帰りの学生が普通に傘をさして歩いて行く。うん、まあ今日の天気なら傘持ってるよな。そんなことを思いつつ通り過ぎていく学生を見ている俺。すると――少し先。高校の方からの道を結構な数の学生が歩いているのに気が付いた。


「もしかして――海夜居る?」


俺はそんなことを思いつき。スマホを取り出した。


スマホを出しつつ。そういえば昨日も海夜は短縮授業で――とか言っていたことを思い出し。もしかしたら今居るんじゃないか?という一筋の望みを――ということで、メッセージより電話の方が気が付いてくれるかもということで電話をかけてみると――。


『——おかけになった電話は電波の――』


うん。繋がらなかった。ことごとく今日はダメらしい。仕方なく俺はそのまま雨が弱くなるのを待って――待って――結局30分ほど時間を無駄にしたのだった。


少し。ホント少し雨が弱くなった――と自分で思った時に俺は駅へと向かいだした。

そして駅に着く頃には濡れネズミ状態となったのだった。うん。ビチョビチョだった。何で強く降って来るかな?だよ。さらに駅に着いた時にちょうど電車が発車していくところで――見事に乗り遅れた俺。

誰も居ない駅のホームで電車を待つことになった。ことごとく。ダメな日だった。これなら雨宿りせずに帰っていた方が良かった。それならもう家で寝ている可能性があったんでね。


そんなことを思いつつ。ちょっとでも水を落とすか。ということで払ったり俺がしていると――。


「——あれ?先輩じゃないですか」


改札の方から制服姿の――って学校帰りか。うん。海夜が1人で歩いてきたのだった。手にはちゃんと傘があった。そして持ちてのところには何かシールって――そうか。海夜昨日傘が無くなったとか言っていたから、朝コンビニかどこかでまた買ったのか。などと俺は思いつつ。


「居るなら電話出ろよ」

「えっ?電話?」

「それすら気が付いてなかったか」

「あっ。そっか。充電切れ」

「充電しろよ」

「先輩。昨日言ったじゃないですか。充電が何故かできないからショップに行かないといけないって――って、先輩なんでずぶ濡れなんですか?」

「傘忘れた」

「今日雨用だったじゃないですか」

「ちょっとぼーっとしてたからな」

「あっ。先輩。ホントに風邪ひいたんじゃないですか?」

「問題ない」

「うん?怪しいですね――ってとりあえずタオルお貸しします」

「助かる」


俺は隣にやって来た海夜にそんなことを言いつつ。タオルを借り頭など身体を拭いてから――ちょっと服を絞ってみるなど、電車が車で極力水分を減らしていたのだった。


それから少しして電車がやって来て俺と海夜は電車に乗ったのだが――。


「先輩。顔赤くないですか?」

「……」

「熱ありますよね?」

「……」

「無言ということは朝から体調悪いですね」

「……」


車内では海夜の取り調べを受ける俺だった。うん。返事をしなかったのは――なんか全て当たっているというかね。うん。明らかに朝より身体は重いし――いやな予感はしてるんでね。ここで嘘を言っても、後から海夜に何か言われそうなので――無言だった。


それから最寄り駅へと到着してからは、海夜の傘を借りた。俺が傘を持ち。海夜とともに家へと向かった。そして海夜の部屋の前まで行くと俺は持っていた傘を海夜に返しつつ。


「海夜。傘助かった」

「はい。先輩。大人しく家に入るのです」

「はい?」


うん。ここで傘を返してさようなら。計画をしていた俺だったのだが――どうやらそれはさせてくれないらしい。


海夜は傘は受け取ったが――自分の部屋に入るそぶりは全くなかった。


「お熱測りましょうねー」

「——危ない看護師にでもなったのか?」

「先輩。とっとと入るんです。先輩の部屋行く。です」


今日の海夜は看護師になりたいのだろうか。そのまま俺を押すように俺の部屋まで付いてきたのだった。


「さあさあ体調不良者さん。まずは着替えましょう。ってかシャワー浴びます?1人で浴びれますか?」

「なんか海夜楽しんでないか?」

「この前は先輩風邪ひいてくれませんでしたからね。看病しないとです」

「帰れ」

「何でですかー看病看病です。弱っている先輩を介護するんです」

「介護ってなんだよ介護って」

「あっ。もしかして先輩、こっちは体調悪いんだから背中くらい流してくれないかなーとか思ってます?」

「1ミリも思ってない。って海夜の相手で体力使うからシャワーだけ浴びてくる」


俺はそう言うと、荷物を置いて洗面所へと向かった。

ビチョビチョの服を脱ぐのは大変だったが――うん。シャワーは気持ちよかったな。うん。本当は熱がある時は――とか言われそうだが。でも1人でまだ動けるし。濡れたからな。シャワーは必要だよ。


パパっとシャワーを浴びた俺は風呂場を出て、バスタオルを手に取る。身体を拭きながら後は寝るだけ。うん。寝れば治る。などと思いつつ。着替え着替え――って、着替え準備忘れたー。ということで、バスタオル巻いて部屋の方へ。大丈夫。海夜が居る事は忘れてない。うん。ぼーっとしていてもまだ大丈夫だ。


「あっ。先輩無事倒れることなく――」


部屋の方へと行くと海夜が濡れた俺のカバンなどを拭いてくれていたのだが――俺の方を振り返り。何故か固まっていた。何でだ?と思いつつ。俺は着替え着替えと引き出しの方へと向かっていると――。


「変態ですか!」


海夜に怒られ、なんか本が飛んできたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る