第161話 傘3

駅に着いてからは俺達はなるべく早く家へということで、急いでアパートを目指したのだが――雨はどんどん強くなるばかり――マジでなんなんだよこの天気。いじめかよ。さらには風も出て来て横殴りになって来るという状況だった。


「先輩。冷たいです」

「風に文句言ってくれ。傘がほぼ意味なしだからな」

「靴が気持ち悪いです」

「同じく。めっちゃ重い」

「なんなんですかー。この天気」

「近くに雨女が居る可能性だな」

「違いますね。雨男だと思います」

「——または両方か」

「そういえば――先輩と初めて会った時も嵐――」

「マジか。って、余計な事話してないで早く行くぞ」

「あっ、はい。もうこのバカ天気ー」


俺と海夜は駅から家まではいろいろ空や雲。雨に文句を言いながら急いで移動したのだった。


――ガチャ。


「ふー。着いた」

「着きました」


俺の家の玄関密っている。2人は狭いんだよ2人は――って。おかしくないか?おかしいよな?ここは俺の家である。


「海夜」

「はい?」

「何でここに居るんだ?」


うん。海夜の部屋は――ここではない。


「あっ。何で私連れ込まれてるんですか?先輩何する気ですか」

「言い方言い方おかしいから。勝手に付いてきただろ」

「そ――そ……くちゅん!」

「……目の前で盛大にくしゃみをするな」

「盛大にくしゃみはしてまちぇん!」

「……笑いでも取りたいのか?」

「違います」


ってか。玄関でこんなことを言い合っている場合ではないな。


「——早く帰って風呂入れ」

「先輩の家のお風呂の方が近いです」

「意味わからんことを言っている間に帰れると思うがな?」


ガチャ。


そう言いながら俺が海夜が帰りやすいように玄関のドアを開けると――。


ビューーーゴォーーー。


「「……」」


玄関のドアを開けたと同時に強風が――そして再度濡れた俺と海夜だった。うん、室内も少し濡れたじゃないか。なんだよこの雨。性格悪すぎだろうが。マジで誰だよこんな雨風を呼んでいるのはである。


「先輩。今のはいやがらせですか?」

「違う。天気が悪い。ってかホント真横に雨降ってるし。ここ屋根あっただろ?屋根無くなったのか?」


うん。確か玄関の前には通路があるので屋根があったはずなのだが――ホント誰だよこんな嵐に天気をしたのは。って。玄関付近濡れたから掃除しないとじゃん。はぁ……だよ。


「外出たくないですね」

「……まるで海夜に味方するかのような雨。って――もうどうせ濡れているから濡れながら帰ってもいい気がするんだが――」

「——ひどい先輩で――くちゅん!」

「はぁ……風邪ひいたなこいつ。って、ほら早くここでいいから風呂入れ。床濡れたから拭かないとだから。もうそのまま靴脱いだら風呂場行け」

「お借りします」


俺が許可を出すと海夜は靴を脱いで――洗面所。風呂場へと向かう――って、海夜も靴下までずぶ濡れ。しっかりと海夜が歩いた跡が室内に残ったのだった。自分と比べると小さい足跡が洗面所へと伸びている。


「掃除か。寒いな」


俺は文句を言いつつ。洗面所でごそごそしている音は気にも留めず。

玄関にて靴下を脱いで――とりあえず適当に濡れた靴下は放置して濡れた床を拭くために荷物をまず置いて――って、荷物もなかなか濡れてるし。さらには海夜も普通に玄関にカバン置いていってるし。


俺は海夜のカバンと自分のカバンを持って室内へ。そしてまゴミ袋を床に敷いて――その上にカバンを並べておいたのだった。ちなみに俺が歩いてきたところもしっかり足跡が付いていたのだった。


「掃除が一番面倒だよ」


俺はそんなことをつぶやきつつ。シャワーの音が聞こえる中。床掃除をしたのだった。うん。床が綺麗にはなったが――やっぱり濡れたままは寒いな。うん。着替えればよかった――って、どうせ俺もシャワー浴びるし。うん、もう少しの我慢か。動いていれば問題ないな。


床掃除が終わった後は――うん。とりあえず靴もずぶ濡れだったため、新聞紙か何かを突っ込んでおきたかったが――あいにくこの部屋に新聞紙はない。


「キッチンペーパーでいいか」


ちょうど目に付いたのがキッチンペーパーでね。俺は2人のずぶ濡れの靴に突っ込んでおいたのだった。って、すぐに濡れたのでペーパーの交換作業を行っていると後ろから――。


「——あの――先輩」


洗面所から海夜の声が聞こえてきた。


「なんだ?」

「——その――バスタオルと着替えをお願いします」


あー、そういえば風呂に行かせたが。着替えとか何も準備してなかったな。と俺は思いつつ立ち上がった。


「バスタオルだけでいいか?」

「変態ですか!」

「嘘だよ。でも何着る?」


俺がバスタオルを取りに行きながら問いかけると――。


「——先輩の服なら何でもいいですよ」

「ジャージでいいか?紐縛れば着れるだろ?」

「あっ。はい。大丈夫です。あっ、あとビニール袋があると嬉しいのですが――」

「はいはい、下着はちゃんと持ち帰れよ。その辺にほっておいて後々揉めたくないからな」

「持って帰りますから!」

「あと、制服はタオルとかで拭いてとりあえず干しておいたらどうだ?ハンガーとタオルこっちに置いておくから」

「——すみません」

「まあ暴風雨が悪いな」

「ですです」


それから俺が洗面所にバスタオル着替えを置いてリビングにはハンガーとタオルを多めに積んで待っていると――海夜がやって来た。


「お先です」


さすがに海夜に俺のジャージは大きかったみたいだが――うん。室内に居るからな。問題ないだろう。ぶかぶかだから――なんかトラブルが起こりそうな雰囲気だが――いや、大丈夫だろう。海夜も気にしてるのか。かなりきつく縛っているみたいだからな。いつも以上にくびれがしっかりついてるし。


「——制服は早く拭いた方がいいぞ。ハンガーとかはここに置いてあるから。俺は風呂へ行く」

「あっ。はい。すみません」


海夜にハンガーなどを教えた後。俺は着替えを持ってすぐに風呂場へと向かったのだった。うん、冷えたよ。濡れた体のままは寒いんだよ。服も冷たいしさ。濡れてるところの肌は冷たいしさ。そもそも濡れてると服が脱ぎにくいから嫌いである。って、シャワー快適だった。うんうん。気持ちよかったよ。


しばらく俺はシャワーでくつろいだあと、着替えて俺はリビングへと戻った。


リビングへと戻ると――ってその前に海夜の姿は見つけた。


「……何を漁っているのか?」

「あっ。先輩。お帰りなさい。いえ。何か飲み物ないかなーと」

「既に自分の家のようにキッチン。冷蔵庫を漁る濡れネズミだったか」

「なっ。ねずみじゃないです!」

「はいはい。でもあいにくだが。海夜が好きそうなのは――あったかね」


うん。冷蔵庫とか特に何もなかった気がするな。ってか、今は冷たいものより暖かいものでもいいかな?


「今日は駅で先輩が買ってくれませんでしたから」

「そんな時間がなかったな」

「じゃあ……また今度買ってください」

「何でまた今度そういうことがあるような感じで言うかね。ない方がいいだろ?」

「まあですが――これから梅雨や台風ですし」

「……嫌だな」

「嫌ですね。って先輩。何か暖かい物飲みたいです」

「今日はお茶でどうだ?お茶ならティーバックあったと思うぞ?」

「じゃ、お湯沸かします」

「頼む。コップとか準備す――くしゅん!」

「……先輩?」

「——嫌な予感」


うん。風呂に入ったのに――悪寒?いやいや気のせいだな。

海夜がくしゃみをしまくっていたから、なんか俺の身体もくしゃみをしたくなったのだろう。

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