第159話 傘

とある日の事。


天気予報を信じるとちょっと今週は今までより雨の日が多いらしい。

ちなみに今のところ本日の天気も予報通りで雨が降っている。さらにお天気お姉さん――いや、お天気お兄さんだったか。って、それはどちらでもいいな。とにかく。天気予報を信じるとこの雨は降り続くらしい。まあ確かに今日の天気は朝から雨で、弱まることはあったが雨は降り続いている。


大学へ行って帰ってくるのも雨の日は大変である。濡れないようにしても濡れることはあるからな。傘をさしているのにカバンだけちょうど傘のしずくがあたって――というのが俺はよくある。

えっ?傘が小さいのではないかって?うん。俺もそんな気がする。でもさ。なんか面倒というか。傘はあるんだし――まあ壊れるまで。って感じでね。うん。使い続けているんだよ。まあ濡れているから傘の意味どうなんだ。といわれそうだが――。


ちなみに今俺は大学から家へと帰ろうとしているところである。


ちょうど先ほど講義が終わり俺は窓の外を見ている。

歩いている学生は皆傘をさしている。つまり――傘が要るレベルで雨が降っているということだ。


「やっぱり止まないか」


俺はそんなことを呟きつつ帰る準備をしていた。机の上に出ていたテキストやノート筆記用具を片付けていく。


そうそうここ最近はこんな天気のため海夜と昼には会っていないので……そのうち俺の家に乗り込まれるかもしれないなどと思っている。ちなみにだが昨日は会ったな。家に乗り込まれたから。えっ?毎日会ってるじゃんって?まあ会ってるな。同じ建物だし。普通にあいつ来るし。でも今日のお昼は会ってない。だから――そのうちと思いつつ俺はふとスマホを見てみる。まあさすがに海夜がらメッセージとかはこの時間ではないだろうと思っていたのだが――。


「——?」


スマホを見ると15分くらい前に海夜からメッセージが届いていた。何だろう?と思いつつメッセージの中身を確認してみると……。


「寒いです」


そんなメッセージが届いていた。うん。それだけ。スタンプとかがあるわけではなく「寒いです」だけのメッセージが届いていた。


「……」


海夜からのメッセージを見つつちょっと考える俺。これは――悪戯?うん?暗号?うーんって、いやいや、マジで何だよである。まあ確かに雨が降っているからか。ちょっと晴れの日よりかはひんやりしているが……寒いですはね。

多分だがこの雨の日続きが終わったら夏が待っているはずで――何なのだろうか。ってか。マジで海夜からはそれだけしかメッセージは来てなかった。誰かと間違って送った?いや――海夜に友達居たか?うーん。まあ俺も人の事言えないが……って。ホントなにこれ?である。


講義室で少し海夜のメッセージとにらめっこをしている俺。幸い次の時間この部屋は使わないみたいなので、もうしばらくこの部屋に居ても問題はないだろう。

それに少し時間をずらせば駅も空くはずだしな。ということで、海夜からのメッセージを再度見つつ考える俺。


「——ってか。そもそも海夜。まだ学校じゃないのか?」


ふと今の時間を思い出して一応確認しつつ。あっ、ちなみに俺は、海夜の帰り時間は、何となくしか覚えてない。いや、日によって違うからな。あと、海夜居残り……ではないと思うが。放課後に何かあって遅いとかがあるからな。だからわからないのだが――うん。今の時間的にはまだの可能性が高い気がする。そんなことを思いつつ俺は海夜に「なんだ?」と返事を送り少し講義室で待っていたが――海夜からの返事はなかった。


って、海夜に返事をしている間にかなり雨が強くなっていた。


窓を見るとザーという音が聞こえるレベルになっていた。すぐに帰らなかったのはちょっとミスかな?などと俺は思いつつ。海夜からの返事もない感じだったので――。


「はぁ……とりあえず帰るか」


そんなことをつぶやきつつ。俺は荷物が濡れないように持って講義室を出たのだった。


建物の外へと出て見ると――なかなかの大粒の雨となっていた。なんでこんなことに――だよ。講義が終わった時はこんなに降ってなかったぞ?海夜からの謎なメッセージで雨に濡れる確率が上がった俺だった。


うん。あとでちょっと文句を言うか。などと考えながら俺は駅へと歩き出した。


傘にたたきつける雨。マジでどんどん強くなっているという感じだった。傘にたたきつける雨の音がうるさいというレベルになって来たのでね。っか。足元はなんか跳ね返ってくる雨粒で濡れだしてるしさ。はぁ……帰ったら乾かさないとか。濡れないように帰るのは難しいである。


「——輩」


もうすぐ駅。というところまで俺はやって来た。雨は相変わらず強く。靴が重たくなってきたである。ホント大きな傘必要かな?最近の雨おかしいんだよな。降る時は滝のように降るしさ。


ドザァ――。


ほら。こんな感じに――ってマジでめっちゃ降って来た。もう足元は濡れてるし。ちょっと急ぎ足で駅へ逃げ込むか。などと俺が考え少し急ごうと足を動かした時だった。


「——先輩!待ってください!」

「……うん?」


ドザァ――という雨が降る中。なんか聞こえた気がした俺だった。まさか。と思いつつふと俺は足を止めて後ろを振り返ると――。


この激しい雨の中。傘も差さずにこちらへと走ってくる高校の制服姿の女子が居たのだった――うん。海夜だな。間違いなく海夜だった。何してるんだよ。あいつ。である。

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