第154話 お別れ2

ちょっと過去の事を思い出していた俺。現在は――。


「っか。これって――何ゴミ?可燃ごみ?破砕ゴミ?」


足の折れてしまった机を玄関まで持って来てからふと俺は手に持っている机が何ゴミになるのか考えていた。

ちなみに可燃ゴミならゴミの日にアパートの前。破砕ゴミだとちょっと離れたところに捨てに行くことになる。

って、ゴミの日も確認しないとだな。可燃ゴミなら週に2回。ちょうど明日で――破砕だと2週間に1回だったんだよな。などと俺が思っていると――。


「あっ、先輩先輩」

「うん?どうした海夜?」

「これ――お別れですね。とかさっきは言いましたが。私がもらってもいいですか?」


俺の服を引っ張りながら海夜がそんなことを聞いて来た。


「えっ?でも足折れてるぞ?直すとかだとかなり大変だぞ?」

「大丈夫です。机としては使いませんから。残っている足は全部折りますから」

「——はい?」


なんかいきなり物騒なことを言い出す海夜だった。うん。服を引っ張るというかわいい事をしつつ。何を言い出すのだか。って、ちなみにいつの間にか海夜の手にはスマホが握られていたのだが――あれ?もしかして海夜何か調べていたのだろうか?

俺はそんなことを思いつつとりあえず玄関に足の折れた机を置いた。


「で、物騒なことを言っている海夜」

「物騒なことは言ってないですよ」

「言ってただろうが。足を全部折るとか」

「あー、まあそれは言いましたが。それは再度使うためです。リメイクです」

「リメイク?どうするんだ?壊れた机を」


俺は再度足が3つしかない机を見てから海夜を見ると、海夜は手に持っていたスマホの画面を俺に見せてきた。


「これです。私の部屋で台車?って言うんですかね?作業台とここでは書かれているんですが。これあると便利そうじゃないですか。ふと先ほど思い出して調べてみたんです」


海夜のスマホには、なんと言えばいいのだろうか?木の板の裏にキャスター?うん。キャスターでいいよな?まあ台車で伝わるか――えっ?伝わらない?いや、俺もこれなんて言うのか……ってこんなところで詰まっていると海夜になんか言われそうなので、海夜のスマホには台車の画像が出ていた。うん。はい。そういうことだ。


「これ――何に使うんだ?」

「えっとですね。例えばこの上に箱とかを置いたらちょっとした時にすぐ動かせるじゃないですか。私1人でも」


海夜が何を言っているのかは何となくわかった。

先ほど海夜の見せてくれた画像にも籠を置いたり。ゴミ箱を――とか書いてあったので、まあ物を動かしやすくするためだろう。


「まあ――そういうのなら使えなくはないだろうが――」

「せっかく長年先輩のところで活躍していた机ですからね。私がその意思を引き継ぎます」

「いやいや、そんな高い机とかじゃないからな?たまたま昔から使っていて、折りたためて便利で持ってきただけだし」

「良いんです。先輩が使っていたものですから」

「——なんか引っかかるような……」


海夜は俺が使っていたものが欲しい……?いや、違うか。単にモノは大切に?なのだろうか?うーん。わからんな。


「いいのですよ。だから先輩。机はまず私の部屋に運んでください。あっ。机の足はいらないので――ここで取っちゃいましょうか?」

「やっぱり物騒なことを言ってるよな」

「言ってないですよ。工作です。リメイクなのです」

「はいはい」


それから俺たちは玄関で机をひっくり返して――残っている足。3本の机の足を解体にかかったのだが――。


「——地味に硬いな」

「ってか。1本折れた割に他はまだまだしっかりしてますね」


残っている3本の机の足。取るのにかなり苦労した俺と海夜だった。


「海夜。ちゃんと持っててくれよ」

「持ってますよ」

「何でこのボルト――ネジ回らないかな――硬すぎる」


俺は部屋にあったドライバーで解体を試みているのだが――まあ一応簡単な机とはいえ机なのでね。そうそう簡単に外れなかった。ネジのところが錆びているのか。全く回らないのだった。俺の力が弱いという可能性もあるが――。


「先輩。交代です私が外します。先輩がしていると机とのお別れが嫌なのか。なかなか進まないじゃないですか」

「いやいや、何を言うか。マジで固いんだよ。全然回らないんだよ」

「貸してくださいです。ポポイと私が解体しておさらばさせてあげます」


海夜はそう言うと俺が手に持っていたドライバーを持ってき――俺に場所を代わるように、手で言ってきたので俺が呆れつつも一応海夜と場所を代わり――そこから3分後の事。


「うーん……全く動かない……もう!」

「だから言っただろ?」


予想通りの光景だった。

大変。とってもか。うん。海夜が力をこめて机の足を外そうとしているのだが――びくともネジは回っていなかった。3カ所すべて海夜は試していたが。どこも動く気配がなく。ただ海夜が唸っているだけだった。


「——先輩。この机しつけがなってないです」

「しつけって――あのな。まあこのドライバーがちょっと小さいからかもだが――あまり無理にやってネジの――溝?って言ううんだっけ?これがつぶれてもだからな」

「わかりました。先輩」

「うん?」

「ホームセンター行きましょう。先に台車に付けるキャスターを買いがてら、大きいドライバー1つ先輩は常備してください

「それ――買って使う場面あるのか?」

「また何かが壊れて私がリメイクするときに使うかもしれませんし。何かの時には使えますよ」

「……いやーどうなんだそれ?」

「はい。いいから行きましょう。先輩。行きますよ」

「まあいいが。うん。じゃあホームセンター行くか?」

「はい。じゃ、ちょっと準備してきます」

「はいよ。俺も――って貴重品持って行けばいいだけか」


それから少しして俺と海夜はホームセンターへと向かったのだった。

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