第151話 雨降り2

海夜の頭を長時間撫でる――ということになりつつあるが――うん。俺は気を紛らわすために――いや、なんかね。ただ撫でているだけ――というのも……うん。いろいろありましてね。沈黙ではないが。なんかむず痒いというか。うん。とにかくだ。海夜の頭を片手で撫でつつ。もう片方の手で、俺は「明日の天気天気」と思いつつ。ちょうど近くにあったテレビのリモコンを手に取り電源を付けてみると――ナイスタイミングだ。ちょうど天気予報をやっていた。


結果から言うと、明日も雨。さらに言っておくと今週晴れの日なしだった。傘マークに曇りオンパレードの週間予報の図が映し出されている。ホント傘マークばかりだった。


「明日はさらに天気悪いな。土砂降りになるかもしれないな」

「えー。晴れて欲しいです」


俺に頭を撫でられつつの海夜もテレビの電源が付くとくるりと向きを変えてテレビの方を見て口を尖がらせていた。


「無理だな。明日は100パーセント雨だし。しばらく――だからな」

「むー。天気の馬鹿野郎ですね」

「あと――気温も低いな。ちょっとひんやりかもな。数日前は暑かった気がするがいろいろ極端だな。ホント」

「太陽が出ないからですかね?でも湿度があると蒸し暑く感じるかもしれませんが――って先輩先輩」

「うん?」


突然何か閃いた。思いついたのか海夜が俺の顔の方を見て、俺の背中にあった自分の手でポンポン俺の背中を叩いてきたため海夜の方を見ると――。


「先輩あれですか。ひんやりとか言って、ずっと私を抱いてもいいかという感じに話をもっていきたいんですね?そうですよね?」

「全く違うな」


俺のシンキングタイム。回答までの時間約1秒。即答ということだ。何をいきなり言い出すかと思えば――お馬鹿な子だった。一応だが。俺はそんなことを微塵も思ってなかった。


「……」


俺が即返事をすると――大変。それはもう大変不満そうな顔で海夜がこちらを睨んできた。うん。とりあえずかまれないように片手は頭の上に置いておこう。ということで撫で続けてはいる。


「あっ、そうそう、海夜も今晩から涼しいかもだから腹出して寝るなよ?風邪ひいても知らないからな?」

「ね、寝ませんよ!何でそんな姿でいつも寝てるみたいに言われないといけないんですか」


俺を睨んでいた海夜の表情が変わり今度はちょっと恥ずかしそうな表情に変わる。うんうん。俺言葉を間違えなかったらしい。


「いやー、だらしなく寝てたからな。お出かけの時も」

「なっ!?そ、そんな……そんなはずはないですよ」

「まあ嘘だがな」

「そうですそんな姿で――って、嘘言った!もう!先輩!怒りますよ。怒りました!私を最近いじめすぎです。罰が必要です!」


――言葉を間違ったのか。急にお腹を海夜に攻撃される俺。優しくだが。ポコポコされている。


「——えっと、じゃ怒って帰るか?」

「帰りま……すん?」

「すん?」


突然新しい言葉を生む海夜。うん。いや、海夜の攻撃からしても本気で怒っている感じはないのでね。ちょっとそんなことを俺は行ってみたのだった――うん。新しい言葉が生まれ。海夜は俺を攻撃するのをやめて――。


「そ、そうです。すん……です」

「それは悩んでいると?」

「むー。先輩楽しんでますよね?」

「楽しいな」


うん。考え中。どんな行動をすればいいのか思いつかなかったのか。どうしようか。という感じで海夜が俺を見ている。


「……もう。こうなったら――罰として晩ご飯にケチャップライスを希望します」

「夜。食べてくのかい。っか、メニュー指定してきたよ」

「食べたいです。一緒に食べましょう」

「米あったかなぁ……?」


冷凍庫の中を思い出す俺……うーん。わからん。覚えてない。


「炊いてください」

「ケチャップライスか……玉ねぎやら……」

「なかったら買ってくるんです」

「雨降っているが?」


窓の方を見つつ言う。うん。普通に雨は降っている感じだった。あと、なんか既に暗いな。こんな時に出かける。買い物はなー。だった。


「……先輩なら風邪引いても大丈夫です」

「おい」

「……嘘です。ごめんなさい」

「うん。許す」

「だからケチャップライスです」

「また戻ったか」

「あとスープもですね」

「注文多いなって。まず離れないから?材料確認すらできないんだが……」

「……もうちょっと」


うん。ご飯作れとか言うくせに離れない海夜。マジで食材の確認ができないから、OKOKも無理無理も何も言えない俺だった。


「甘えん坊」

「……」

「甘えん坊海夜?」

「……むー」

「猫耳水着海夜?」

「なっ。ば、馬鹿先輩。今はそれは関係ないです。それに――全て私が持ってます。保管です。回収してます。あんな危険なもの……」


海夜の頬がちょっと赤くなった。うんうん。自分で自分の姿を想像しているらしい。あれは可愛かったからな。うんうん。


「——実は再度猫耳に関しては買ったとか言ったら?」

「……先輩。必死ってか、ちょっとそれはさすがに……ですね」


冗談でそんなことを言ってみたら、ちょっと俺も調子に乗りすぎたか。冷たい声が返って来た。


「いやいや、嘘嘘。マジで引くな。キモいみたいな目で見るな」

「……」


うん。冷たい目線が――俺に刺さっている。


「はぁ……はいはい。晩御飯作りますよ。材料なかったら買ってきますよ」

「よろしいです。残念な先輩。すぐに準備に取り掛かってください」

「いろいろ注文が増えるなー。くすぐるぞ?」

「なっ、や、やめなさいです。離れなさいです」

「くすぐってからご飯か。ってくっついてるの海夜な?」

「ち、違いませんが――うん。くすぐりはダメですからね」


その後海夜が俺の脇腹を突っついてきたので、ちょっと仕返しに海夜の脇腹も突っついたところ海夜が可愛く鳴いてから――いい音が響き。俺は海夜のご希望を叶えるために動き出したのだった。


……いい音が何かって?ちょっと俺の背中がね。痛かったんだよ……こういう時は手加減を知らない海夜だった。うん。ちょっとヒリヒリ。ジンジンしていたな。

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