第150話 雨降り
窓の外はグレーの空。そして雨がちょっと斜めに降り続いている。どうやら風が出てきたらしい。
「……」
「……」
「……」
「……あの、先輩」
「うん?どうした?」
海夜との秘境旅館?旅行?うん。とりあえず山奥へと行ってからしばらく経ったある日の事である。
俺がボーッと雨音を聞きつつ。自分の部屋でのんびりとしていたら、学校帰りにそのまま俺の部屋へとやって来ていた海夜が俺の隣へと話しかけながらやって来た。そして――。
「……なんで何の変化もないんですか!」
いきなり怒られたのだった。理不尽すぎるだろ。俺。雨降ってるなー。などと思いつつのんびりしていただけなのに。いきなり怒られたのだった。
「いきなり叫ぶなよ。近所迷惑だろうが」
「だってだって……お出かけから帰ってきてから何もないじゃないですか!」
「——えっ?」
何故に今更というのか。お出かけの話が出てくるのだろうか?俺がちょっと理由を考えようとしていると――。
「だ、か、ら。お出かけでさらに――仲良くなりましたよね?なりましたよね!?」
海夜が先に話し出した。というか。続けてそのまま話した。うん。マジで俺何で怒られているんだ……?って、うん。なんとなくだが。海夜が言いたいことはわかった。うん。わかったはず。なのでこういう時は――。
「——あー、わかったわかった。変態は大人しくな。ハウス」
「何でそうなるんですか!あと私は犬じゃないです!」
「だから叫ぶなよ」
「もっと叫びますよ!?お巡りさん来るかもですよ!その場合嘘言いますよ!連れ込まれました!とかとか」
「なら、口にガムテープ貼るからちょっと待ってろ」
「嫌ですよ!」
「ついでに手首も縛らないとな。自分で剥がすから。このうるさい猫は」
俺はそう言いながら立ち上がりガムテープガムテープ。あと、ヒモは何かあったかなぁー……と、思いつつ部屋の中を探そうとすると――。
「ちょ、先輩真面目に準備しないでくださいよ。冗談ですから冗談です。騒ぎませんから。真面目に探そうとしないでください」
俺の隣へと移動してきた海夜に俺は手を掴まれた。探すならしい
「足も縛っとくか?」
「先輩!」
「嘘嘘。って、どうしたんだよ。甘えん坊」
「あ、甘えん坊じゃないです!」
「俺の記憶が正しければ、学校帰りにすぐ乗り込んできたじゃないか」
「……」
ちなみに今日は平日だ。俺も大学へと朝から行っており。昼過ぎに帰ってきた。その後今日は雨ということもあり。部屋でのんびりしていたら――学校帰りの海夜がやってきて、はじめこそ勉強?課題?をしていたから静かだったが――って、何故に俺の家でそれをしているのか。だが――まあ勉強は大切だからそれは何も言わないでおこう。でもだ、それが終わったのか。先程から甘えられている。まあこれもいつものことと言えばいつもの事なのだが――甘えん坊登場は大変なんだよな。うん。なんかいろいろ不満?があるのか。グイグイ来ているし。
そりゃ、まあ先ほど海夜が言っていたように、これだけ一緒にいれば――うん。そりゃ仲良くなるというか。親密になるというか。いろいろあっても――って俺は何を考えさせられているのか。うん。単なる子守。そうだ。子守なのだ。そう思っておくのがベストだな。うん。海夜に合わせると――いろいろ2人ともが調子に乗って――ということが起こりそうなのでね。
「あっ、先輩が今変なこと想像しました」
「何も考えてないし」
「想像してました。私のこと甘えん坊とか思いましたね」
エスパーかよ。声に出してないのにバレたよ。あれ?口に出した?出して――ないな。うん。出してないよ。何でわかるんだよ。ってか――自分でも海夜自覚ある?まあ無いことはないと思うが――。
「……そんなこと思ってない。いつも通りだな。って、思っただけだよ」
「いつも通り……?」
不思議そうな顔をする海夜。
「甘えん坊ってことだな」
「そうですか――甘えん坊……甘えん坊って、やっぱり思ってるじゃないですか!」
「元気だな。学校行ってたんじゃないのかよ」
「……むー、先輩。学校疲れましたから……その……えっと」
突然もじもじしだす海夜。いやいや、かわいい仕草してますね。調子乗っている時はグイグイなのに。今日は――恥ずかしがり屋の甘えん坊?それとも――自分から言い出すのはなのか?などと俺は思いながら海夜を見て。
「なるほど、追い出して欲しいと?」
「……」
もう少しふざけていてもいいかなー。だったので、そんなことを言ってみたが……流石にめっちゃ睨まれた。いじめるのはそろそろ終わりにした方が良いらしい。俺の身が危険になるからな。って――気が付いたらなんか俺もテンションがおかしいというか――ダメだな。ついさっき自分で言っていた気がするのに。海夜と居ると最近おかしな方向になってしまう。注意しないとな。うん。
「悪い悪い。ほらほら海夜」
俺が軽く手を広げると、ちょっと拗ねた表情?のち、ゆっくり海夜がくっついてきた。うん。海夜の香りがする。いや、変な意味はない。あれだ――えっと。洗剤の香り?うん。そういうことにしておこう。
「……もう、この先輩は意地悪が最近多いですね。今日は雨でお昼も会えなかったのに……」
「なるほど。それで夕方乗り込んできたか。まあ雨の日は仕方ない」
「……わかってますけどー」
「もうすぐ梅雨だからな」
「わかりました。先輩。高校来てくださいよ。どこかいい場所があるはずです」
「無茶を言うな。不審者になりたくはない」
「じゃあ――降格するとか?」
「なんだよ降格って。スポーツチームか何かなのかよ。俺は」
「……じゃあ……」
「じゃあ――って、そんなこと考えるな。って――もしかしてまた学校で何かあったか?」
「あっ、いえ。そういうのは特にないです」
「ないなら――何故に?」
「そりゃ……先輩と居るのが一番楽しいですから。だから雨の日は先輩が高校に――晴れたら私が行ってますし」
「アホか。ってか、俺は来いとは言ってない」
「なっ」
「ちなみに俺的にはいじめられて泣いて帰ってくる海夜でもOK」
ペチ。
うん。部屋に海夜の攻撃音が少し響いたのだった。
「——先輩だってずっとぼっちのくせに……いじめてきた生意気」
「生意気って。っか、ぼっち関係なくない?」
「ぼっち」
「おい」
「ぼっち」
「繰り返すな」
「ぼっち先輩」
「言葉増やしただけじゃないか」
「ぼっち先輩生意気」
「……悪口言いたいだけか?」
「ぼっち先輩生意気意地悪……でも優しい」
言ったことが恥ずかしかったのか。俺に胸あたりにぐりぐり顔をしてくる海夜。ちなみにだが。なんか拭いているわけじゃないよな?うん。聞かないが……違うよな?
「……突然変わったよ」
「……」
「はいはい。撫でますよ。恥ずかしがって」
「むー」
海夜の頭を撫でる。ちなみに湿度が高めでもさらさら髪の海夜だった。すごいな。ホントさらさらだだった。超触り心地良いだった。そのまま少し海夜を撫でていると――。
「先輩、あと1時間」
「長いわ!」
うん。ホント海夜を調子に乗せてはいけない。
何で部屋の中でくっついて長時間海夜の頭を俺は撫でないといけないのか。うん。撫でてる時の海夜の表情がね。油断しまくりというか。とろけていて……うん。可愛すぎるため――危険なんだよ。って――俺たちは部屋で何をしているのかか。
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