第143話 夜は長い2

ちょっと時間はかかったがやっと海夜のお怒りが収まると……いや、お怒りはとっくに収まっていたな。単に海夜が甘え続けて終わらなかっただけか。うん。とりあえず。海夜が撫でられ、甘えるということを満喫すると――。


「——ホントにいきなりのお母さんとの電話は疲れましたよ。何ですかね。もう邪魔してきて。こっちはのんびりしていたのに」

「気になったんだろうな」

「気にしなくてもいいのに。どこに行っているかも知ってるし。問題ないですよ。ホント疲れました」

「じゃ、疲れたなら――次は寝る。だな」


話していると海夜が疲れたと言ったので、海夜を寝かせようと俺がちょっと動こうとすると――海夜の行動は早かった。


「それは嫌です。まだダメです。寝ません」


俺の行動は即止められたのだった。うん。海夜が必死にしがみついてくる。まあこのまま立てないことはないんだがね。今のまったりをやめたくないのか。海夜が必死にしがみついてきて、俺が動かないように頑張っている。離れたくないのかな?いつもに増して甘えん坊である。


「はぁ……なんでだよ。疲れた言ったじゃん。疲れた。ってことは――寝るになるんじゃないか?夜なんだし」


俺が外を見つつ言う。うん。真っ暗。寝る時間であっているだろう。露天風呂のところはいい感じに明かりが付いていて、良い雰囲気――って、ほんといい感じだな。うん。見るだけでもいい感じじゃんである。

って、危ない危ない。海夜の事を気にしてやらないとな。また拗ねるよ。


「いや、だってー」

「だって?」

「えっと――そ、そうです。先輩が私を猫にしてきて……まだまだです。そうです甘えれてません。甘やかされてません!」


リンリン。


そう言いながらまた鈴を鳴らす海夜。って、めちゃくちゃ気に入ってるよな?あと――必死だな。と、再度俺は思いつつ。


「十分に今甘えていた気がするが……それに途中から全く猫語がないしなー。今の海夜は猫とは言えないか。耳と鈴はあるが――こういう時こそちゃんと猫語で話さないとなー」


俺がちょっと意地悪な感じで言ってみると――。


「なっ。この先輩は――――うー。自分も変にテンション高いくせに――って、言われてだと何か恥ずかしい…………にゃ」

「うんうん」


照れながらの猫語。良いぞである。


「なんですか――にゃ」

「頑張ってる。頑張ってる」

「——にゃ!」


猫モードへと頑張って変換中の海夜を俺が見守っていると、海夜がジーと俺を見てから……。


「……先輩。意地悪しないで、もっと撫でてください――にゃ」


そう言いながら海夜は頭をこちらにお辞儀する形になった。うん。俺の顔に猫耳が迫ってきたのだった。


「猫耳が迫ってきたから、耳を撫でればいいのか?つまむ感じに?」


そう言いながら猫耳のところをつまんでみると。


「なんか違います!もう!」


ペチペチ。


再度意地悪をしたら海夜に腕を軽く叩かれたのだった。あと、数回ペチペチされたあとつねられたのだった。


「先輩!さっきはノリノリで耳や鈴付けてきましたよね?今日はそんな感じでいくもんじゃないですか?意地悪はなしです。ほら!」

「まあ、でも、海夜母が登場でちょっと落ち着いたな。うん」


いや、まあテンション高めというか。いつもと場所が違うから未だにウキウキ感はあるか。うん。なんかね。ちょっといつもより楽しいというか――まあ結局海夜の反応が面白いから。ってことにしておこう。


「なっ、そのままで……よかったのに。やっぱりお母さん邪魔しかしてない――もう」

「それに2人っきりはいつも通りだがな。空間は全く違うが――って、あまりベタベタもだからな」

「くっつくのは――問題ないです……にゃ」


まあ今もめっちゃ密着してますね。と俺が思いつつ。思い出したかのように猫語を付ける海夜に対して。


「猫猫。って、ほんと今日はずっとくっついてきている海夜だよな」

「にゃ」


リンリン。


猫が返事をして頷く。うん。っかこの鈴近所迷惑――ってまあそんなに大きく鳴ってないし。部屋は離れているから大丈夫か。うん。大丈夫だよな?

ってか。さすがにずっとくっついているのも――だし。と俺は思いだして……。


「でもまあ、そろそろ一度離れ――」

「ません!にゃ」


うん。勝手に言葉を変えられた。

俺が話している途中に海夜に割り込まれた。まあ予想通りでもあるのだが――いや、だってね。海夜が離れるとは思わないし。っかそもそも猫バージョン海夜とかレアだからね。俺も離れようと言いつつも――離れる必要はないよなー。と思っているところもあったので。


「元気だな。ってか海夜」

「はい?なんですか――にゃ?」


にゃ、しか言ってないがめっちゃ可愛いというね。うん。猫海夜最高である。


「いや、猫バージョンもやっぱりかわいいわ。うん」

「な、何ですか。突然」


驚く海夜の頭を撫でると、すぐに海夜の顔が溶けていた。


「いや、マジでかわいいからな。とりあえず――もっと撫で回すか。海夜はそれでいいんだろ?わしゃわしゃと」

「はい――って、わしゃわしゃ?なんかおかしく――って、にぁあ!?」


俺はそう言いながら撫でていた手で、海夜の頭をわしゃわしゃしてみたのだった。

うん。普通に撫でるよりこういうのも面白いと思ってな。


わしゃわしゃである。

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