第142話 夜は長い

海夜母との電話終了後——って結局海夜の母は何で電話をしてきたのか……うーん。やはり海夜が元気に過ごしているかの確認?って今はそれどころではないか。

母との通話を終えた娘が――俺をめっちゃにらんできている。うん。石になるのかな?俺。あっ、でも頬は赤く。かわいい海夜猫に睨まれている俺だった。うん、石にはならないな。って――何で俺睨まれているの?と俺が思いつつ海夜を見ていると――。


「先輩」

「うん?」

「先輩が鈴なんか付けるから面倒なことになりましたよ!どうしてくれるんですか!」


リンリン。


俺は鈴をわざと鳴らしながら海夜に怒られたのだった。って、海夜。楽しそうにしてないか?だったが。まあそれには触れず。うん。余計なことを言うと――拗ねそうなんでね。


「まあ……大丈夫だろ」

「絶対ネタにされます。どうするんですか?これこの後後日とかにめっちゃなんか言われそうじゃないですか!」

「あー、まあ、うん。海夜の母だからな――好きそうなネタか。うん。間違いなく好きだな」

「むー。先輩が変態だったがゆえに……こんなもの付けられたからー」


リンリン 。


再度鈴を鳴らす海夜。うん。気に入ってるよな?楽しんでるよな?であるのだが――うん。やっぱり聞こうである。


「海夜。なんやかんや言いつつも――その鈴、気に入ってないか?鳴らしまくってるし」

「そんなことありません!」


聞いてみたら即返事が来たのだった。海夜はプルプルしているが――こういう時はあれである。とりあえずプルプル。いや――プンプン?している海夜をその後撫でておいたらOK。猫耳が付いているからちょっと撫でる場所が――だが。うん。問題ない。問題ないである。するとすぐに……。


「先輩はもっと撫でないとダメです。怒りましたからね。もう」


そんなことを言いつつ。俺に近寄り。すりすりと甘えてくる海夜猫だった。うん。ホントに猫じゃん。何度かすりすりして猫耳が取れそうになると、ちゃんとセットしなおす海夜。うん。ちょっと慌てつつ直す海夜かわいいである。ってかちょろい。って言ったら再度怒るかもしれないが――ホント海夜って――ちょろい。撫でられたり。甘えさせると――すぐニコニコ、デレデレの最近だからな。


「はいはい。猫猫。大人しくなれー」

「まだまだ撫で方に優しさが足りないです」


さらに撫でろアピールなのか。すりすりを強化してくる海夜。


「注文が多いなぁ」

「あと……包み込んでください」

「はい?」

「——抱きしめも必要です。はい。必要なのです」

「マジで注文多いな」

「先輩」

「はいはい。締め付ければいいのね」

「違います!締め付けはいりません!」

「マジで元気だなー」

「——優しく包み込んでくれないとずっとこのままですから。寝かせませんから」

「今のところ絶対寝る雰囲気ないもんな。うん。注文通りの子としても結局テンションマックスで寝ない海夜の未来予想図だな」

「——はい」

「はい。かよ」

「今日は特別だから良いんですよ。先輩。ほらほら、ちゃんと手をまわして――あと撫でるのです」

「マジで注文多いな。っか手を回したら撫でれない気がするんだが――」

「気合です」

「そんなに手ないからな?」


結果それからは海夜のご注文通り。俺は海夜を抱きしめてあげながら、撫でるということになったのだった。片方で抱いて、片方は撫でるである。うん。俺大変――。

まあでも海夜の扱いには慣れているからな。ちょっとくらい怒ったり拗ねたりなんかも問題ない。いつもと違っても問題ないである。基本甘やかせばOKの海夜だった。それでもだめなら――というのもちゃんと知っているしな。うん。俺、海夜の扱いに関してはプロだな。などと思いつつ。

あまりにもニヤニヤの海夜猫の顔が近くになったので鼻を途中でつまんでみたら、叩かれ、撫でる時間が延長されたのだった。


ちょっとつまんだだけなのに――その代償。地味に大きかった。

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