第139話 母は突然登場する2
一度目の海夜母との会話を強制終了してからすぐの事。
♪♪~
再度海夜のスマホは鳴っていた。もちろんお相手は――海夜の友達。
うん。そんなことはありませんでした。いや、こう言っちゃ悪いが海夜のスマホ。ホント登録者数が限られているというか――まあ俺も人の事が言えないので言わないでおくか。うん。余計なことを言ったが。電話のお相手はまた――である。
もちろん海夜の反応は……。
「先輩。無視しましょう無視です。のんびりが壊れます。何なのもう!」
海夜母よ。さすがにすぐじゃね。海夜お怒り?というか。爆発寸前のままなんですよ。はい。もう少し時間を置くとかなかったんですかね。
――あっ、なるほどわざとか。海夜の母は――子を爆発させて面白がる計画か。
「海夜。顔真っ赤だな」
「先輩!」
これは――下手な触れ方をすると爆発だな。と俺は確認してから。
「っか海夜。これ――ずっと掛かってくるんじゃいか?出ないと」
鳴り続けている海夜のスマホを見ながら俺が言うと――一度は鳴りやんだが。またすぐに鳴りだしていた。海夜の母――絶対に楽しんでるわだった。
「……諦めてそのうちやめると――いや。うーん」
さすが子。親の事をよく知っている。自分のスマホを見つつ対処方法を考えている様子だった。
ちなみにその後も電話。海夜母からの着信は続いたのだった。
しばらくは海夜はなっても無視を貫いていたが――次第に、間間でメッセージも届いてくるようになり。
「あれれ?無視かな?」
「いいのかな?海夜の秘密二階堂さんにバラすわよ?」
「そっちに乗り込んじゃおうかしら?」
うん。めっちゃ遊ばれている海夜だった。
って海夜の秘密って何だろうか。何かあるのだろうか?などと俺が思っていると、ついに海夜はスマホを手に取り――電話に出る。ではなく。電源を切ろうとしていたので、それはそれで想像豊かにいろいろと向こうにいいように思われ。後々大変そうなことが起こりそうだったので。
「海夜。とりあえず出とけ」
電源を切ろうとしていた海夜の手を持ってとりあえず止めた。
「むー、先輩との時間邪魔されまくりですから、切った方がいいです」
「いやいや、絶対後々大変だから。めっちゃいろいろ言われるから。むしろ帰ってからだと本当に乗り込まれるから。ここでも――わからんが」
「……お母さんなら――やりそう」
海夜はそう言いつつ電源を切るのは――やめたらしい。
ちなみにまだ海夜のスマホは鳴ってる。って海夜母よ。電話かけすぎである。
普段着信なんてほとんどない海夜のスマホこの数十分だけですごいことになってるから。ホント絶好調だな。おい。という感じだった。
「さっと出て、パパっと聞いて切った方が――だろ?」
「まあ――さっと終わればすぐかと思いますが。でも……さっとは難しいかも
「——海夜母だからな。何ともいえん。あと海夜が勝手にヒートアップするからな」
「な、何で私が原因みたいなんですか」
「いや、よくやらかすし」
「なっ!?な。なにもしたことないです」
「例をあげようか?」
俺が過去の海夜のやらかしたことを思い出そうとすると――。
「だめです」
「即止めてきたよ」
「あーあー」
「ガキか」
「むっ」
「まあまあ、とりあえずずっと鳴ってるから何とかしよう」
「——わかりましたよ」
「早く終わればゆっくりできる」
「言いましたね。終わったらゆっくりしますからね?」
「はいはい」
「適当な感じに先輩言ってませんか?ってもしかして私がいじられているの楽しんでませんか?」
「ほらほら、早くというか。さすがにずっと鳴りっぱなしもだし」
「……先輩も先輩で――もうわかりましたよ」
――トン。
俺が何度か促すと、海夜は超、嫌そうに。ホント超超超嫌そうにスマホの画面をタップしたのだった。
「……何度も?」
「やっと出たわー。何々?何もできてなかったから。報告するために、バタバタして事後になったかしら?いい報告聞けるかしら?ふふふー」
先ほどと同じようにスピーカーホンだったのだが……いきなり先ほどより明るく楽しそうな海夜母の声が聞こえてきたのだった。って、マジで何を言ってるのだろうか。だった。まだ学生だよ!なんだが。まあ俺が口を挟んでも――と思っていると。また顔を真っ赤にした海夜が――。
「だ・か・ら!」
「ふふふっ、あっ、二階堂さん居るかしら」
「——一応居ます」
呼ばれたので一応返事をする俺。ちなみに隣では――プルプルしている猫が居るので――そっと頭を撫でてみると。にやけていた。
「よかったわー。あの人から伝言よ」
「——え?」
「お父さんから?うわー」
にやけていた海夜も父から、というのを聞くと――冷静になったのか。ちょっと顔はまだ赤いままだが。ニヤニヤは無くなり。嫌そうな声を出していた。
うん。海夜の顔がさらに2段階ほど嫌そうな顔に変わっただな。仲悪すぎというか。これホント何とかしないとダメなのでは?って、また何か起るのか?と俺が思っていると。
「——えっとね……何だったかしら?」
「……」
「……」
なかなか海夜母からの次の言葉が聞こえてこなかった。あれ?もしかして――適当に言っている?と俺が思っていると。
「そうそう。早く娘を
「——違う!!」
「「——うん?」」
やっと海夜母が次の言葉を言ったと思ったら。小さかったが、でもはっきりと別の声が――って向こうは向こうでもう一人居たのか。って、いやいや居たのかよ。マジ!?と俺が思っていると。
「ほんとなんなのって、お父さん居るじゃん。自分は隠れてばかり――」
俺の隣では隣で、ぶつぶつ言っているお方が居たのだった。
って今俺たちは何をしているんだろうか?なんか状況もおかしなことになってないか?と、俺が思っていると……電話口から先ほどまでの明るい声ではなく。余所行きというか。ちょっと冷静な声が聞こえてきたのだった。
「ちょっと海夜。二階堂さん待ってて、静かにさせてくるから」
「……」
「……何してるの。ホント」
それからガタッ。という音が聞こえて――静かになった。これは――スマホを机とかに置いたのか?と俺が思っていると。横では呆れている娘が居た。
「一応確認だが仲良いんだよな?って今の声は……海夜の父でいいんだよな?」
「……まあ、お父さん。ですね。違ったら面白いかもですが」
「そんなこと起こっていいのかよ」
「どうなるか見ては見たいですね」
「おいおい」
「まあなんやかんやありますが……仲はいいみたいなんですよね。ホント不思議なんですが。あんなお父さんのどこがいいのか――」
「ボロボロに言ってるよ」
「だって――」
海夜はそう言うと俺の方に持たれつつ甘えてきた。うん。猫が甘えてきたという感じだな。俺はそんなことを思いつつ。ちょっと海夜の顎当たりを触ってみる。
リンリン。
「ちょ、先輩。くすぐったいです」
「ここもダメなのか」
「そもそもくすぐり禁止令ですから!」
「あれはあれでかわいいのに」
俺はそう言いながら顎から、頭の方へと手を移動させて撫でてみると――。
「くすぐりはだめです――撫でるのはたくさんしてください」
「注文が多いな。って、危ない危ない現状を忘れてた。って――海夜の母何してるんだ?静かだけど――」
「そういえば――」
俺と海夜が何が起こっている?という感じで話していると。
「……ぎゃぁぁぁぁぁ」
電話の向こうから何かが聞こえた気がしたのだった。うん、気がしただ。気のせいかもしれないしな。恐ろしいことが向こうでは起こっていて悲鳴が聞こえてきた――って誰の悲鳴?えっ――まさか。うん。こういう時はあれだ。考えてはいけないというか。考えなくていいというか。
ちなみに海夜は――何?という感じでスマホを見ていたが……すぐにため息というのか。再度呆れている感じだった。
するとそれから少しして。
「ごめんなさい。ちょっとバタバタして」
「——なら切っていい?」
海夜が怖い怖い。何で電話をかけてきたのかわからないまましばらく経過して、いろいろ言われて――からの放置で海夜のお怒りゲージが溜まっていたらしい。
「でも切らない海夜。優しいわねー」
って、そこでさらにお怒りゲージを爆発させようとしてくる海夜母。強いだった。もちろん海夜の反応は――。
「切る」
だったのだが。海夜が通話終了を押す瞬間。
「あっ、そうそう海夜さっきから鈴の音しない?あっ、もしかしてそういうことしてるの?まあかわいいわー。写真送って頂戴」
「にゃ!?」
いきなり話が変わり猫語復活の海夜だった。
って、忘れては無いのだが。そういえば海夜なんやかんやでずっと猫なんだよな。改めて見るとホント猫耳似合ってるし。首輪もずっとつけてくれているし。
「ふふふっ」
「な、なんでもないから!気のせいでしょ!」
海夜が恥ずかしそうに、そして首に付いている鈴が鳴らないように手で握りながら返事をしている。っか、待て待て。いつ聞こえたんだ?っていきなり何でその話!?と、俺が思っていると――。
「リンリンってかわいい音が聞こえてたわよー。私の勘では――二階堂さんがお願いしたのかしら?」
「いや……気のせいかと」
何でそこまでバレている――実は監視カメラどこかにあるのか?と一瞬思う俺だった。
「き、切るから」
「海夜。しっかり可愛がってもらうのよ。あっ、お土産お願いねー」
「切る!」
リンリン。
スマホをタップすると同時に海夜が立ち上がったため鈴が鳴っていた。
って、これが聞こえていたのか?と、俺が思っていると。何故か海夜に……睨まれていたのだった。うん。めっちゃ海夜猫に睨まれている。
こういう時こそ――お助けで海夜母さん電話鳴らして――なのだが。それ以降一切海夜のスマホが鳴ることはなかった。
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