第138話 母は突然登場する

♪♪~


ちょっと海夜とイチャイチャ――というと何か恥ずかしいな。うん。

……あれ?さっきまでは勢いで海夜をいじれていたが――何だろう。

海夜のスマホが鳴っていて、別の人が居る――って、わけではないが。2人の空間ではなくなったからというか。うん。海夜が俺から離れたことによって、ちょっと冷静になってきたら――恥ずかしい事してたな。おい。と俺が思い出していると海夜が自分のスマホを見つつ。


「——先輩。お母さんですけど。無視していいですよね?」


面倒くさいという表情をしながらこちらに言ってきたのだった。


「……一応2回かかって来たんだから、出た方がいいだろ?急用かもだし」


とりあえず俺は海夜にそう返事をしつつ。頭の中では予想あたり。と思いながら一度冷静に。うん。うん。目を覚ましたというか。急に自分たち以外の人の存在を思い出すと――だな。恥ずかしい事したというか。海夜は猫耳とか付けたままなんだが――うん。あいつは恥ずかしくないのだろうか。


「はぁ……何だろ。嫌な予感しかしないんですけど……」


――トン。


俺がいろいろ考えていると、海夜はそう言いながらスマホの画面をタップしていた。


「——もしもし」


それからちょっと不機嫌そうに海夜は話しだしたのだった。


「……」


さすがに離れているので海夜の声しかこちらには届いてこない。のだが――。


「……なっ。な。なにもしてないし!そんなこと聞くためにわざわざ電話してきたの!?」


電話をしている海夜を見ていると、つい先ほどまでは、面倒くさい。という表情だったのだが。今は顔を赤くしつつわたわた海夜はしていたのだった。


まあ聞かなくてもわかるというか。あー、あれは、いじられてるな。余計なことをいつものように言われているな。と俺は思いつつ。

俺は今のところ巻き込まれていないので、ちょっと移動し。机の上に置きっぱなしだった飲み物を飲んで水分補給をしていたのだが――。


「——か、かわらなくていいじゃん。ふ、普通にのんびりしてるだけ――もう……何言っても聞かないんだから――――先輩。先輩」


……やっぱりと言うべきか。多分そのうち俺にも話が飛んでくるだろうな。と思っていたら、案の定海夜がスマホを持ってこちらへとやってきたのだった。


リンリン。


「——何故に俺が必要?まあちょっと予想はしていたが……」

「とりあえずお母さんが先輩にかわってほしいしか言わなくなりました。壊れたカセットテープの真似でもするかのようにリピートしてます」

「……会話不成立だったのか」

「初めからぶっ飛んでましたよ。ホント」


頬を赤くした海夜がぶつぶつ言いながら俺にスマホを差し出してきた。


「……大変なこった――――――はい。かわりました」


海夜からスマホを受け取り電話に出てみると――壊れたカセットテープ。ではなく。


「あら、二階堂さん。2人のお邪魔したかしら?事後?事後よね。ムフフーな展開?あの子迷惑かけてないかしら?甘えまくってるでしよ?ごめんなさいねー」


いきなりぶっ飛んでいた。

大変明るい声。とてもとてもテンションハイの海夜母の声が聞こえてきたのだった。


「——いえ、普通にくつろいでいます。はい。こんないいところありがとうございます」

「いいのよいいのよー。で、二人っきりはどうなの?完了?いつもと違う空間で完了したかしら?」


いやいや、完了ってなんだよ。ってかいろいろ言いたいが……ここは冷静に。と俺は考えつつ。


「いや――いつも通りですね。のんびりして過ごしてますよ?」


うん。海夜と2人っきりっていつも通りなんですよ。はい。

ちょっと一緒にお風呂イベントはありましたが――放送禁止。みたいな状況ではなかったし。そうプール。海みたいな感じというか。ちゃんと着てたしな。と俺が思いつつ返事をしていると。

急に俺の横に熱が――って、海夜がぴったりと俺の横にくっついてきていて、必死に母の声を聞こうとしていた。まあ母が何を言っているか気になってるんだろうな。などと俺は思いつつ。

そうか。スピーカーホンにすればいいじゃん。ということで俺は海夜のスマホの画面をささっと操作してスピーカーホンにして机の上に置いた。するともちろん海夜の母の声は海夜にもちゃんと聞こえるようになり。


「——あらー。海夜ったら。せっかく邪魔が入らなくて、自由にできる空間に居るのに――恥ずかしかったのかしら?それか見せれないほど……幸せ太りしたのかしら?おデブさんになっちゃった?それはそれでかわいいわね」

「お母さん!?何言ってるの!太ってないし!」

「あらあらー。聞いてたのねーおデブさん?」

「喧嘩売って来た!もう!切るからね?良いよね。おやすみ。おやすみ!」


2回おやすみ言ったよ。必死というか。即切りたいんだな。って海夜の母よ。海夜は細いくらいですよ。マジで。心配になるくらい細いんだよ。まあ食う時はちゃんとっているんだが――不思議だな。って、もちろん。海夜の思うようにはこの後進まず……。


「いいのかしら?今切ったら大切な事聞けないわよ?」

「な、何がさ――」

「今切るとー。重要なー。連絡がー……ふふふっ」


焦らすというのか。うん。明らかに海夜母は今を楽しんでいる。という声が電話の向こうから聞こえてきている。


「な、何さ。もう」

「ふふふー」

「も、もう。絶対何もないじゃん。切るからね!」


切ると言いつつも気になっているらしく海夜もなかなか通話終了のボタンが押せずにいる。


「遊ばれてる遊ばれてる」


横でブーブー言っている海夜を見つつ。和むな。と俺が思いながら言うと――。


「先輩黙る!」


怒られたのだった。って海夜はまだ猫バージョンなので――うんうん。かわいいだった。怒っている海夜猫もグッドだ。


「海夜。そんなんじゃ抱いてもらえないわよー」

「なっ!?何言っちゃってるの!?って、そ、そんなことないもん」

「プンプン怒ってばかりで。嫌われちゃうわよ?知らないわよ?ふふふっー」

「な。なんなのー。もう!って、そもそもなんで電話してきたの。何かあるみたいなこと言って何も言わないじゃん!」

「海夜。大丈夫よ。勢い勢い。やったら勝ち」


おいおいどんどんエスカレートしてるな。ということで俺が一度忘れられているとなので口を挟むと――。


「……あの、俺聞いてますので」

「あらー、二階堂さん。聞かなかったことにして、頑張る海夜見てあげて、それはそれでかわいいわよー。絶対。必死にー――」

「切る!」


――トン。


はい。海夜により強制終了となったのだった。どうやら我慢の限界。海夜の顔が真っ赤になっているので――うん。これ以上は無理。という事だろう。って――結局海夜母は何で電話をかけてきたのだろうか……?一応確認?というか。元気にやっているかの確認だったのだろうか?と俺が考えていると。


「なんなの、もう」


リンリン。


電話を切った海夜猫は真っ赤な顔でぶつぶつと何か言っていた。すると――。


♪♪〜


すぐに海夜のスマホがまた鳴り出したのだった。

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