第136話 海夜猫はかわいい3
首輪を海夜に付ける。
うん。これだけ言うと何かいろいろ問題がありそうというか……。
いや無理矢理とか。変なプレイ中ではないので。うん。普通にかわいくしようとしているだけである。
まあそんなこんなで猫耳と首輪を付けた海夜は――猫だった。うん。
首から上というか。これ――しっぽがあったら完璧だな。と俺は思いつつ。あっ、先に言っておくが。残念ながらこのセットにしっぽは付いてなかった。うん。残念。いや、まさかここまで似合うとはだったし――うん。まあでもとりあえずは――。
「おー、猫だな。いいじゃん」
「——しゃあ!」
今度は付けてすぐに感想を言ったのだが――怒っている海夜――って照れ隠しか。と俺は勝手に解釈して。
「怒ってる怒ってる」
リンリン。
そう言いながら海夜の首輪に少し触れてみると、いい音が鳴った。ってか、まるで海夜に合わせたかのように、首輪のサイズもぴったりだった。
いや、実はこの猫セット高くはなかった。高くなかったがゆえに。首輪のところは調節は出来ませんだったんだが――あれか海夜が平均なのか。と俺が思っていると。
「もう――先輩。これ恥ずかしいです。ちょっと動くだけで鈴が鳴りますし」
リンリン。
「まあ誰も見てないから良し。あと、海夜が動いたらすぐにわかるな」
うん。本当に少し海夜が動くとそこまではうるさくはないが。鈴が鳴っていた。って、にしても似合ってるな。であった。
「先輩が見てるんですよ。って何で私が怪しい事をいつもしているみたいな感じで言うんですか」
「えっ?怪しい動きするだろ?」
「しませんよ!」
そう言いながら海夜は自分で耳のところを触る。すると――。
「あっ。これ以外にもいい手触り」
自分の耳ではないが。今は自分の耳?となっている物を触りつつなんか癒されている海夜だった。
「自分の耳を触って感激する海夜か」
「ちょ、自分の耳じゃないですよ。先輩が無理矢理付けたんです」
「無理矢理ではないな」
「もう、ほんと今日は先輩がぐいぐい――って先輩。こんなことしたんですから……甘えてもいいんですよね?」
海夜は再度自分の耳を触りながら――うんうん。かわいい仕草でそんなことを言ってきたので。
「許す」
「即答だ!珍しい!?あれ?なんか先輩がおかしい!そうですよ。先輩がおかしいんですよ。熱ありませんか?」
ちゃんと返事をしてやったら――いろいろ疑われた俺だった。おまけに海夜が慌てて俺のおでこを触って来て――。
「熱く――はないけど暖かい?あれ。先輩やっぱり熱」
「いやいや風呂入ってましたからね?」
「あっ」
「それすらネコ化で忘れたか」
「そんなことありません!」
「って――まあ先輩がおかしいけど、元気なのはわかりました」
「おかしいは余計だろ」
「おかしいですよ。ってその――で、甘えていいんですよね?」
「うん?」
「——だ、抱っこして……ください。頑張って猫なりました――にゃ」
「さっきまで似たようなことをしていたような……海夜俺の上に座ってたよなあ?」
「あれは抱っこじゃないですよ。そのちょっと……そのまま外をぶらぶらとか――座ったままじゃなくて――」
「廊下で抱っことはレベルが高いな」
うん。いきなりハイパー甘えというか。見せつけたいのかよ。誰も知り合いなんてこんな所に居ないだろ?と俺は思いつつ。海夜も相当テンション高いよな。と思っていると――。
「違いますから!庭、お風呂がある方ですよ!何で廊下なんですか。そんなの恥ずかしすぎますから!」
「——まあわかってるが」
正確にはわかってなかった俺。うん。本気で廊下の方をぶらぶら抱っこして歩くのかと思っていたな。ということはもちろん言わず――。
「とりあえずベタベタと、ここでくっついていても暑いだけだから。うん。確かに海夜の言う通り外にでも行くか。ほら、どうくっつくんだ?」
俺が海夜を一度下ろして立ち上がると。海夜は恥ずかしそうにでも嬉しそうにして、すぐ俺の首に手を回してきたので、そのまま俺は海夜のわきの下あたりを持って、ちょっと勢いをつけて海夜を持ち上げたのだった。
リンリン。
海夜が動くとちゃんと鈴も鳴ったのだった。
「あっ、先輩。首輪だけは……取っていいですか?」
「大丈夫だろ。誰も見てないし」
「いや……音が鳴って迷惑じゃ……」
「海夜が動かなければ問題なし」
そう言いながら俺が海夜を抱えなおすと。
リンリン。
「きゃ!ちょ、先輩。って、お尻触った!」
「そうしか抱っこ無理だろが」
「……変態変態」
「はいはい。ほら、ちょっと風あたってくるぞ。そしてあまり動くと鈴が鳴りまくるぞ」
「……鈴は持ってます」
「なるほど、手で握れば鳴らないか」
「はい」
「あっ、そうそう。暴れたらそのまま露天風呂に落とすから」
「なんで!?って、甘えさせてくれるはずなのにいじめみたいになるんですか!」
「まあ今のところする予定は無いが。海夜がもし暴れたらの時も考えておかないとだからな」
「今のところってなんですか!」
そんなことを言いながら俺は猫海夜を抱いて外に出た。うん。ちょうどいい気候。気温で、身体の暑かった俺たちにはちょうどよかった。風もあってちょうどよかった。
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