第125話 夕方の時間
今はまだ15時前くらい。引きこもり生活は始まったばかりだ。俺がそんなことを思いつつ露天風呂があったところから海夜の方へと向かうと……。
「先輩先輩。やばいですね。ベッドふかふか。大きいです」
テンション高めで目を輝かせているガキが居た。
「海夜がガキだ」
「なっ、いいじゃないですかー。めっちゃリッチですもん。こんなの超非日常ですよ。やばいですよ」
「—―まあな。確かにいろいろやばい。テレビとかもな。何インチだよ」
「ですよね。何インチ?ですかね。とにかくデカイです」
2人で畳の方の壁にドーンとあるテレビを見る。うん。あれ――マジで何インチ?ここちょっとした映画館?だった。
そんな感じで俺は再度部屋をくるりと見て見る。
「あと――部屋綺麗だよな」
「はい。ずっと居たくなりますね。部屋の壁とかに装飾?ですかね。細かくて綺麗ですし。あっ。このライトもおしゃれですよね」
「まあ、ずっと居たい場合はそれは両親にお願いしてくれ。そんなお願い俺にしても破産するだけだからな」
「大丈夫ですよ。そんなこと言いませんし。先輩が居ないならここに居る必要ないじゃないですか。でも――やっぱりたまにはですかね。こういう普段とは違うところいいですね。ってことで、先輩。楽しみましょう。バスとかでいっぱい寝たからオールナイト可能です!」
そう言いながらVサインをこちらにしてくる海夜。あの間抜けな寝顔見せてやろうかな――と俺は思いつつも。今じゃないか。と思いとどまり。
「—―やっぱりガキだ」
そんなことをつぶやいておいた。
「むー、ってか先輩」
「うん?」
「早く露天風呂入りたいですか?」
「なんだよ。急に」
「先輩がにやにやしてますからねー」
「してないし。ニヤニヤは海夜だろ?」
うん。俺の目の前に居る海夜なんかめっちゃ怖いほど笑顔だぞ?である。本人気が付いてないのかもしれないが……。
「ち、違いますよ。私は仕方なく。優しいから先輩のお相手するんです。だから――早速お風呂チェックに先輩が行っていたみたいなので聞いてあげたんです。私は優しいですから」
「—―仕方なくなら。別に一緒じゃなくてもいいぞ?ゆっくり風呂に入れるしな。あれは1人のんびりもなかなか非日常でいい感じだったし」
「なっ、なんでそうなるんですかー。ちょっと言ってみただけです。意地悪ですね。この先輩は。一緒に入りたいくせに強がって――」
「海夜が慌ててる慌ててる」
「ち、違います。バーカバーカ」
そう言いながらベッドに転がる海夜。うん。マジでテンション高いみたいだ。
俺はそんな海夜を見ながらベッドに腰掛けると――海夜が隣に来た、ってか。マジでこのベットふわふわじゃん。うん。そりゃ海夜寝ころぶし。跳ねるか。だった。
「先輩」
「なんだ」
「膝枕してください」
「—―まだ寝るのか?」
いやいやこいつ――今日寝すぎだろ。と俺が思いつつ言うと……。
「特別な場所ですから、いろいろしてもらいたいです」
「俺めっちゃ大変じゃん。くつろげないじゃん」
俺はそんなことを言いながらも海夜を寝かせてやる。うん。俺の方が優しいだろ。である。うん。そして寝転がってきた海夜の頭をとりあえず撫でておいた。
「えへへー」
すぐに海夜の顔が溶けそうなほどにやけていた。
「にやけてるなー」
「い、いいんです。特別ですから」
「はいはい。寝とけ、静かだからな。」
「あとで先輩も膝枕してあげましょうか?」
「やめとこう。海夜は、何するかわからんからな」
うん。気が付いたら髪の毛ボサボサか何かやらかしてそうだからな。
「なっ、レア体験いいんですか?サービスですよ?普段はしませんよ?」
「まあ海夜をしっかり見とかないとだからなー。テンション高いから何やらかすかわからんし。消えるかもだし」
「いやいや、先輩。ここ部屋なんですけど?」
「ガキは迷子になるからな」
「部屋なんですけど!?って、先輩ガキって言いたいだけですよね?」
「バレたか。って、海夜」
「はい?」
「ガキだな」
「なー、やっぱり言いたいだけだった!もう!」
バシバシ。
そう言いながら海夜が俺に寝転がったまま俺の足を叩いてきた。
「ってか、海夜は外見ないのか?なかなか絶景だぞ?」
俺が声をかけると海夜が思い出した!みたいな感じで顔をあげた。
「あっ!そうですね。明るい時も見ておかないとですね。先輩行きましょう」
「俺見てきたんだが――」
「先輩。行きましょう」
「はぁ……マジで子守か。はいはい」
「子守ってなんですか!」
「子守だよ」
「もう」
そんなこと言い合いながら俺は海夜とともにまた外に出た。
うん。2回目の外が数分。数十分後だった。
外に出ると海夜はすぐに柵の方まで行った。
「おー、なかなかですね」
「海夜。テンション高くても乗り越えるなよ?落ちても知らんからな」
「だからなんでさっきから子供扱いなんですかー」
「ガキとは言ってない」
「もう、でもいいところです。静かですし。周りの声聞こえませんね。他のお客さんも居るみたいだったのに」
「まあ離れてる感じだったし。叫ばないと聞こえないだろうな」
俺も覗いてみるが――他の部屋は――上手に見えない作りになっていた。まあ見えたらそれはそれで問題か。俺がそんなことを思っていると――。
「先輩が変なことしてきたら――かなり大きな声で叫ばないとですね」
「大丈夫だ。そんなことは起こらないだろうし。もし、海夜が暴れそうになったら――そうだな。とりあえず海夜を露天風呂に沈める」
「酷すぎますよ!?それホント生死にかかわりますから!」
「いや海夜がはしゃぐと大変だからな。しっかり教育もしないとだし」
「教育って……だからガキじゃ――」
「だから言ってないし。って、海夜」
俺は海夜の方を見て声をかける。海夜もこちらを見たタイミングで――。
「な、なんですか?」
「ずっと言ってやろうか悩んでたんだが」
「—―はい?」
「寝癖ついてる」
「うそ!?」
俺が言うと海夜はバタバタと髪の毛を触りだした。
「まあ嘘だがな」
「ちょっと!なんなんですか」
「いやー、海夜を撫でるための口実」
俺はそういいつつ。海夜の頭に手を置いてみる。
「ちょ……先輩もテンション高いじゃないですか」
「ちがう。海夜が暴れないように押さえつけている」
「背が縮みます!」
「大丈夫だろ。今がベスト」
「なんのですか」
「抱き心地?」
「?マークが無ければ完璧でした」
「何が?」
「とりあえずいろいろ酷い事言ったから晩御飯まではくっつきます」
「まあいいけど」
「良いんですか?」
「海夜が飛び跳ねるより安全だろ」
「やっぱりガキ扱いされてた!」
うん、まあそんな感じで山奥でもなんやかんやと楽しく過ごしている俺達だった。
っか――本当に寝ぐせはあるんだが――うん。バスを降りた時から海夜あるんだよな……まああれだけ寝てたし。うん。
でもまあ楽しそうだから何も言わないでおく事にした俺だった。うん。
まあ室内に戻ったら鏡を見た海夜が気が付いて俺ボコボコ叩かれたんだがな。うん。でもまあいつも通りの感じである。ちょっとテンション高めだがね。
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