第120話 仲直り2

「露天風呂って……水着大丈夫ですかね?」

「……」


こいつは――旅館で何する気だ?泳ぐのか?と俺が思いつつ。


「……えっ?いや海夜。客室に風呂はあるんじゃなかったか?って、普通露天風呂に水着は……無理じゃないか?ってか必要なくないか?個室なんだし」


うん。マジで何を考えてる?と、俺が思っていると――。


「わ、わかってますが。その、個室に……なら。せ、先輩と一緒に入りたいなぁ――って、一緒に露天風呂。さっき画像もなかなかでしたし。めっちゃ綺麗な感じだったじゃないですか。だから……先輩と一緒にお湯に入りながら見たいなぁ……と。でも、た、タオルだと。恥ずかしいから水着なら――と」

「……なに考えてるんだか」

「り、リフレッシュ……です。ふ、普段出来ないから!そうです、こういう時は一緒に楽しみたいですから」

「……前に水浴びで入らなかったか?」

「あれは遊びです!」

「まあ、でも……バレなければ。ってうん。まあ……いいんじゃないか?」

「—―まあ、やっぱりダメですよ――あれ?先輩、もしかして……一緒に入ってくれます?今良いって感じで返事しました?」

「まあ……水着なら、って、なんか本当に絶景みたいだからな。自然たっぷり。まあ夜は真っ暗かもだが……星空もって今書いてあったし。海夜となら一緒に見たいな。は――俺もちょっとはあった」

「せ、先輩がおかしい!?」

「—―」


俺が正直に話したら心配された。うん。なんでだよ。である。

いや、海夜が言いだした時に旅館のページを見ていたんだが……まあ部屋で過ごすのがメインになるなら――そういうのもありか。って思ったんでね。海夜も言ったが……まあ普段はありえないんで。

まあそういうことだ。俺も普段では行かないようなところに行くから――ちょっとテンションが高めということだよ。うん。


「……おい、なんだよ。せっかくOKしたやったら」

「あっ、ごめんなさい。嬉しいです。その、お風呂。露天風呂は一緒に入りましょう。はい」

「っか、水着か。ないな」

「先輩ぼっちだから、海とか行かなさそうですからねー」


……なんでぼっちのこいつがあたかも普段海とか行く感じで話しているのだろうか――と俺は思いつつ。


「海夜は水着あると?って――水遊びの時に着ていたか」


うん、聞こうとしている時にそういえば――と思い出した俺だった。


「あっ、で、でも……やっぱり新品の方がいいといいますか。先輩に普通に見られるからその――持っていけるのは今は無いといいますか」

「無いってことだな。一緒じゃん。ぼっち」

「ぼ。ぼっちですけどー」

「ぼっちとぼっちで何話してるんだか」

「と、とりあえず、先輩週末に水着見にいきましょう」

「まあ、それがいいか。って、よくよく考えると水着なんてそれだけしか使う機会がないともったいないか……」

「いやいや、先輩。水着ないと一緒は無理です。タオルは――危ないと言いますか……」


海夜がもじもじしながら言った。うん。まあ何が言いたいかはわかったので。


「……あー、うん。恥ずかしいからマジでそれはやめてくれだな。うん。悪かった余計なこと考えた。ちゃんと水着買おう。うん。よくよく考えたら。海夜の水着もレアだからな」

「なんか……先輩が必死ってか。普通なら――タオルで入れよ。とかいいそうですが……やっぱり先輩も男の子でしたか。あれ?その場合事故確率の高そうなタオル選びますよね?あれ?先輩は――男の子じゃない?」

「俺、変態扱いされてないか?っか何を意味わからん事言ってるんだよ」

「先輩が変態かの調査です」

「おい。っか。俺かなり海夜のこと大事にしてると思うんだが?」

「まあ――ヘタレ先輩。あっ、すみません訂正します。ヘタレ……違います」

「海夜はくすぐってほしいんだな。わかったわかった」


俺がそっと近寄ると――。


「ち、違います!ごめんなさい!」


海夜が慌てて俺から距離をとった。流石に予告したら逃げるか。と、俺は思いつつ。


「はぁ――こいつは」

「ち、違います。本当に。ちょっと、口がです」

「変態娘」

「ち、違う!」

「はいはい」

「ち、違いますから。先輩が優しいから私……甘えれるんです。ありがとうございます」

「……なんかむず痒い」


うん。俺たちはなんの話をしてるんだよ。って、そうか水着か。水着といえば――。


「ってか、不思議だな。タオルの方が隠れるのに、水着なら安心感って」

「……急に先輩がおかしなこと言い出しました」

「いや、海夜」

「はい?」

「下着で俺の前来れるか?」

「なっ、ば、ば、馬鹿ですか!無理ですよ!何言い出すんですか。やっぱり変態!最低でした!」

「ほら、でも水着なら?」


俺が聞いてみると……。


「……ま、その、水着は見られていいといいますか。はい。そこまでは――」

「ほら、だから不思議だな。って」

「と、とにかく。水着なら荷物になりませんから。買いに行きましょう?」

「まあ、っか、今って売ってるのか?」

「あー、どうだろう?ちょっと早いから……でも普通にありそうってか。まあ、別に先輩以外に見られるわけじゃないから……最悪なければネットで買いましょう」

「まあな。って、なんで水着の話ばかりなんだよ」

「お、お風呂は大切です。リフレッシュに大切ですから。って――あと、どうしましょうか?何か持っていかないと――暇ですかね?」

「まあ、でも旅館ってか普段とは違うところだから……多分なにもなくてもこうやって話してたら時間は経つだろな」

「まあ、確かに……って先輩」

「うん?」

「私的にはバス3時間もなかなかだと思いますが……」


うん。海夜に言われて思いだした。そうだよ。移動もめっちゃ長いんだった。と、俺は思いつつ。


「—―だな。うん。忘れてたわ。バスも長いからな。帰りは爆睡だろうが……」

「ずっと座るだけってのもですからね。疲れそうです」

「だな。ってことは着いたらしばらくは寝転んでいるかもな」

「かもですね。でも――部屋がすごかったら。見て回ってそうです」

「あー、海夜はそんなイメージあるな。テンション高めで。あー、夜寝なさそう。えっダメじゃん。疲れさせないと」

「ね、寝ますよ。なんで、夜行性扱いなんですか!」

「俺の身が危険」

「おかしいですから!変態!」

「はいはい。まあ、でもバスは……のんびり行きも寝るかだな」


うん。バスでの移動中って――することないよな。何か暇つぶしってか――でも初めて行くところなら車窓を楽しめるか。と俺が思っていると――。


「あっ、寝て、旅館で元気!ですね。って、やっぱり先輩変態じゃないですか」


隣でまた意味わからんことを言ってくる変態娘が居た。


「何がだよ?さっきから海夜が変態扱いしてるだけだからな?」

「む、むー……」

「まあとりあえずなんか決まったから。海夜風邪ひくなよ?」

「それは大丈夫です!先輩こそですよ」

「海夜ははしゃぐからなー」

「こ、子供じゃないですから!」

「子供」

「むー、怒りますよ?」

「くすぐる」


俺が再度くすぐり準備に入ると――。


「なー、ずるいです!」


また逃げた海夜だった。うん。まああれだ。俺の部屋は今日も平和ということだ。うん。いろいろあったが――結局いつも通り時間が流れていた。


それからしばらくなんか海夜と言い合ったり。

途中から海夜がくっついて甘えてきたりしたが――まあ、やっぱり最後はいつも通りだった。

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