第115話 先輩は馬鹿です
「先輩……正座してくだい」
「……あれ?]
「……」
「……えっと海夜?」
「正座」
「はい」
とりあえず正座しろ。と言われたので。俺は海夜に言われるがまま座ると……海夜も俺の前に座った。
いやいやなんでこんなことになっているんだ?俺は確か――同級生?そういえばおれ詳しく知らないな――ってまあそれはいいか。とりあえず絡まれていた海夜を助けて帰ってきた。というところだったはずなんだが――なんで俺は今からお説教されそうな雰囲気なのだろうか。誰か早急に教えて欲しい。俺……何やらかした?うん。全く心当たりがないんだが――と俺が思っていると。
「……その、録音してたってなんですか?」
「えっ?あー、これ?」
俺は先ほど役目を終えた時にポケットに入れていたUSBメモリを出すと……。
「か、貸してください!すぐに!」
海夜がすぐに奪おうとしてきた。かなり必死に――。
「いやいや、大丈夫だから」
「だ、大丈夫じゃありません!いつから録音していたんですか!消してください。あと聞いたらダメです。わかりましたか?割りましょう。そうです。割りましょう。壊したらいいんです」
「えっ?」
あれ?ホントなんで海夜はこんなに慌てて――俺の大事な課題が入っているUSBメモリを壊そうとしているのだろうか――うん、謎だ。と俺が思いつつ海夜を見ていると――って壊されたら困るから!である。うん。
「えっ?じゃなくて!わ、私はカバンを常に持って――なんですから……余計な録音も――だって……ダメです。と、トイレとかも……行ってるから」
海夜が恥ずかしそうに言う。うん。最後の方は顔真っ赤で小さな声になっていった。それを聞いて俺は「あー、なるほどなるほど。海夜的に聞かれたくないと言うか。日常生活音を心配していたのか」と俺も気が付いて――。
「あー、いや、海夜。さっきの嘘だから。これに録音機能とかないから安心しろ」
「—―えっ?」
「単なるUSB。録音はさっきスマホ出した時からだけだから。まあまさかあれでもちょっとした証拠が取れるとは思わなかったけど」
「え、えっと……でも先輩。私のカバンから――出しましたよね?」
「手に握ってたんだよ。これ小さいから普通に握ったらわからないかな。って思ってよ」
「……ほんと?」
「ああ。壊さないなら調べていいぞ?パソコンにつないでも俺の課題しか入ってないだろうからな。ってか、正座やめていいよな?」
うん。海夜の勘違いも解決したし。正座は終了だな。と俺が思いながら言うと――。
「……ダメです」
「なぜ?」
まさかのまだ正座していろ。だった。いやいや俺――まだ何か勘違いするようなことしましたっけ?と思っていると――。
「まだあります。なんで先輩はあそこに居たんですか?」
「……まあ、隠してもか。ここ数日海夜がおかしかったから付けてた」
俺が言うと。少し考えてから海夜は何か思いついたかのような表情をして――。
「……もしかして朝も?急に一緒に来てくれたから……」
「ああ」
「……私――そんなにおかしかったですか?」
「まあおかしいというか――疲れた?感じってか。まあなんか感じてな。そこから俺がすぐに浮かんだのが――また嫌がらせじゃないかとな。で、一応—―その、彼女を守る的な?」
「なら――もう少し早く来てくださいよ」
「泣いてたな」
「な、泣いてないです!」
「泣いてた」
「ちが……だって、囲まれて――ちょっと怖くて……」
そう言いながら海夜が下を向いた。
「はいはい。悪かった悪かった。でも海夜も相談しろよ」
「……ごめんなさい」
俺が海夜の頭を撫でると――海夜がこちらを見つつ言ってきた。
「うん、じゃ正座解除」
「しません」
「なんでだよ!」
何を俺たちはしているんでしょうね。だよ。
なかなか正座が終わらない俺達だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます