第78話 注文が多い4

「……もっとです。た、試しに言いましょうか?」


と。隣からもごもご?という感じでなんか聞こえてくるが……こいつホント夜行性になったのだろうか。真っ暗になってからの方が元気じゃね?とか俺は思いつつ――。


「やめろ。捕まるとか嫌だからな」

「な、なにを想像してるんですか!?エッチ」

「えっ?あれだろ?お巡りさんに捕まってこいだろ?」

「そんなこといいませんよ」

「どうだか」

「むー、な、なら……」

「……海夜。寝ろ」

「いやですよ。って、先輩寝る気満々ですよね」


うん。俺いつでも寝れるぞ?隣が静かになればな。うん。


「誰かさんが寝かせてきたからな。電気も消えたし。動くの面倒だし自分の部屋に帰るのは諦めてとりあえず寝ようとしてる」

「起きてくださいよ」

「海夜」

「な、なんですか」

「腕枕してやるから。寝ろ。絶対寝ないと明日不機嫌になるのが見えているからな」

「……むー……はい」

「素直でよろしい」

「なんか立場が……まあはい」


俺が提案すると海夜は小さな声で「失礼します」と言いながら再度俺の横に寝転んできた。先ほどよりも近い位置で寝ころんできた。


「—―これはこれで幸せです」

「よかったな。じゃ寝ろ。大人しく寝ろ」

「……ヤダです」

「おい。数十秒前に「はい」って言ったよな?」

「……この先輩は――ホント何も……ですね」


ふと、海夜がなんか俺の耳元でボソッと言った気がした。が。まあ眠かったしあまり気にしないでいたら……。


「—―先輩?」


すぐにまた耳元で海夜の声が聞こえてきたが……うん。ここで返事をすると――なので無視を選択した。


「……」

「寝ました?」

「……」

「……嘘寝ですね」

「……」

「先輩。無視するならもっとくっついちゃいますよ?」


まあ起きているんだが……こいつは――である。なんで大人しく寝ないかね。とか俺は思いつつ……。


「……海夜。うるさい」


と俺は言いながら俺の腕に居る海夜を抱き枕のように抱いてみた。


「—―ふっぎぁ!?」


俺が抱きしめるとなんか潰れたような声が聞こえたが……まあ声が聞こえたから大丈夫だろう。窒息とかはないだろう。っか相変わらずのいい抱き心地だな。とか俺が思っていると……。


「せ、先輩……」

「ぐー」

「寝る真似はもういいですから……」

「いい抱き心地だな」

「私は枕じゃないです」

「……海夜。頼むから寝ろ。じゃなくてもこうしてると……まあ、いろいろあるというかさ。まあ、うん。とりあえず。寝ろ。大丈夫。ちゃんと大事にしたいんだからさ」

「—―わかりましたよ……ヘタレ先輩っ」


何かこいつ――今楽しそうに言いやがったな。である。


「……海夜?」

「ひゃ!?」


うん。なんかむかついたから俺はとりあえず海夜の両脇を確保した。

まあ抱きしめていたからな。すぐにこの体勢はとれた。普段だったら何かを察知した海夜が俺から離れたかもしれないが……まあこの状況ではな。海夜が察知することもなく簡単に海夜の両脇。横腹あたりに手をセット出来た。

それから俺は寝たままではやりにくそうだったのでそのままちょっと起き上がり……するとここで海夜も気が付いたらしく……っかすでにくすぐったかったらしい。マジで弱いのかもしれない。と俺が思っていると――。


「なっ……その、ご、ごめんなさい。先輩。ごめんなさい。ごめんなさいです。ちょっと今のは嘘です。はい。先輩が大切にしてくれているのが嬉しくてですね。はい。照れ隠しです。はい。だからその手の場所……その離して欲しくはないのですが……とりあえず手の位置だけー。ちょ。くすぐっ……うぎゃぁぁぁ。きゃはははぁー」


うん。夜中だからな。俺はしっかり海夜を抱きしめて。声がなるべく漏れないようにくすぐりをしばらくしておいた。


それから数十分後。


「……ご。ごめんなさいです。先輩。二度と……二度とあんなことは言いません。許してください。ごめんなさいです」


ベッドの上で髪の毛ボサボサというか……いや俺は長時間くすぐってないからな?少しだけだったからな?でもね……本当に海夜はくすぐりに弱いらしく……もう数秒で涙目で……「く、くすぐりだけは……ゆ。ゆ、許して……ください。ダメなんですよーきゃあはは……」とかまあ言いだしたので――まあ解放してやったら……うん。


海夜はベッドの上で土下座をしている。俺が解放してやったらすぐに土下座をしたな。

ちなみに短時間でもかなり俺の腕の中で海夜は暴れていたため……服も乱れているんだが……海夜はそれを直すことなく。即土下座という。うん。どんだけくすぐり嫌いなんだよ。とか俺は思いつつ。


「わかったなら――よろしい」

「ごめんなさいです」


そう言いながらまだ涙目の海夜がやっと頭をあげた。


「っか。マジでくすぐり弱いな。海夜」

「……むー」


うん。そっぽを向いた海夜だった。


「っか海夜。服。乱れてる」

「……先輩が悪いんですよ……もう」

「はいはい」


俺はボサボサになっていた海夜の髪を簡単に手櫛で直してやり……。

ちょっと乱れていた服も直してやった。うん。なんで俺が……なんだがな。

まあくすぐっている時はわたわた大暴れの海夜見ているのはかなり楽しかったからな。これくらいいいか。とか思っていると――。


「……ありがとうございます」


服やらを直してやるとぼそりと海夜が言ってきた。


「じゃ、次こそ大人しく寝るな?」

「……はい。寝ます」


バタバタで乱れた布団をちょっと直してから……俺が寝ころぶと。海夜はくっつかず。適度な距離を取って寝ころんだ。そして……こちらを見ていた。


「……」


うん。何だろうこれ。でも今海夜が訴えていることは何故か分かった。


多分だが……海夜は腕枕をしてほしい。でも今……怒らせた?って別に俺は怒ってなかったんだが……まあ海夜はくすぐり=激怒。とかでも思ったのか。大変遠慮しているというか……何も言えない感じに見えた。


「海夜。腕枕いいのか?」

「……良いんですか?」

「いいけど?」

「—―くすぐりませんか?」

「しないよ」

「……じゃ貸してください」


そう言い海夜が先ほどと同じく、かなり近い位置にやって来て……俺の腕を引っ張り。うん。寝ころんだ。


「……おやすみなさいです。先輩。そしてありがとうございます」


海夜はそう言い……ちゃんと大人しくなった。

うん。何だろう。大人しくなるとなるで変な感じはするが……まあいいか。静かなのはいい事だしな。

とか思いつつ海夜の方を見てみたら――。


「……すぅ……すぅ……」

「寝るの早っ!?」


少し前まで暴れていたはずのお方から寝息が聞こえてきていた。

もしかして……暴れてスタミナ使い切ったか……って――まあいいか。うん。 


「おやすみ。海夜」


それから俺もすぐに寝ましたとさ。うん。なんやかんやで海夜が傍にいると落ち着くんだよな。うん。

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