第77話 注文が多い3

ちょっとした事故があったが…。今俺は海夜を抱えつつベッドへと座った。

すると…。離れるのかと思っていた海夜がさらにしがみついてきた。


「離れるんじゃなかったのかよ」

「は、恥ずかしいのでしばらくこうしてます」


と海夜は俺の胸?あたりに顔をぐりぐりとしていた。


「謎な行動」

「…。変態」

「たまたまだ。支えようとしたら…。そこにあっただけだ」

「…。触られました。結構しっかりと」

「あー、うるさいやつ」

「…。先輩」

「うん?」

「抱きしめてください。さっきみたいにちゃんと」

「なんでこんなイチャイチャしてるんだか」

「…。うるさいです。言うこと聞いてください。先輩がしっかり抱きしめてくれないと顔見られますから…」

「はいはい。恥ずかしいのね」

「なんで先輩普通なんですかー、馬鹿」


それから俺が再度海夜を抱きしめると静かになり。海夜もしっかり抱きしめてきた。っか…。ずっとくっついているから…。暑いんですが…。ってまあ俺は何も言えなかったな。


理由はちらっと見えた海夜の顔。

めっちゃいい笑顔してたからな。うん。だからしばらくそのまま…。


って、なかなかだよな。かわいいやつとくっつき。さらになんかいい香りまでして…。こいつどんだけ我慢させるんだよ。だが…。まあ、仕方ないか。大切にしないとか…。


「先輩…。ずっと抱きしめてくれますね?普段ならとっとと突き放してきそうですが」

「海夜の香りが良いからな」

「ちょ、匂い嗅ぐのはなしです。完全に変態じゃないですか」

「海夜もしっかりさっきから吸ってないか?」


うん。なんか耳元でスーハー聞こえてた気がするんだがな。


「そんなことしてません。先輩と一緒にしないでください」

「嘘だろ?」

「して…。ないです。はい」

「っか…。マジでそろそろ解放ないのか?」

「…。先輩」

「うん?」

「あ、甘えたくなったらまたこれ。頼んでいいですか?」

「…。まあ…。たまにならな」

「ありがとうございます。なら今日は満足しましたから…。解放です。そして次は腕枕してください」


そう言いながら海夜が離れ…。ってちょっと待て。


「待て待て終わらないんかい!っか甘えっぱなしじゃん」

「言うこと聞く券がありますから。とりあえず抱きしめる終了です」

「期限が長いな」

「長くないです。さあ先輩次は腕枕です」

「…。っかマジで海夜とここで寝るのかよ。寝れるか?これ」

「大丈夫です。先ほども言いましたが今日は寝かせませんから」

「横になったら寝るくせに」

「…」


うん。これは横になったら寝るなとか思いつつ一度海夜と離れた俺は立ち上がり背伸びをした。うん。なんか同じような姿勢をしていたからな。たまには伸びないとだよな。とか思っていると…。


「先輩。早く横になってください」

「普通に寝たいわ」

「ダメです。腕枕してください。そして…。一言耳元で…。えっと…。その…」

「注文多っ」

「は、早くするのです」


海夜はそう言いながら俺の腕を引っ張り…。ベッドに寝転んだ。というか…。倒されたな。うん。ちなみにベッドは海夜の匂いでいっぱいだった。なんだよここ。っか…。マジでいい香りなことで。

とか俺が思っていると海夜が隣に寝転んできて…。俺の腕を強制的に伸ばして…、寝ころんできた。


そういえば今…。なんだっけ?一言か。って、罰ゲームみたいになってない?とか思いつつ。


海夜の耳がすでに近くにあったため。耳元で…。


「で、一言何を言えって?」

「なっ、あっ…。な、なんでもいいです。そうです。キュンキュンすること言ったら帰らせてあげます」

「無理ゲー。絶対無理じゃん。帰らす気ないだろ。っか今の状況から帰らす気ないだろ」

「言えないなら…。おもちゃです」

「おもちゃとかやだし。っかおもちゃってなんだよだよ」

「なら、一言…。どうぞ?」


と海夜が聞いてあげますよ?的な感じになったのだが…。


何を言えなんだよ。キュンキュンとか知らんし。

っか、じゃなくてもなんやかんやでこいつずっと笑顔だから…。実は何を言ってもOKな気もするが…。まあいいか。変なこと言ったらまた騒ぐだろうし。そもそも奇跡的に俺が海夜のご希望の言葉を言えたとしても帰らせてもらえないだろうからな。今の俺の希望を言っておこう。


「そのまま大人しくしてろ」

「…」

「…」

「…」


うん。ミスったかな?完全に沈黙。海夜も何も言わないので…。


「おい。感想なしとか。帰れないじゃん」

「な、そ、そんなんではキュンキュンしません。は、はい。ぶぶーです」


と。何故か顔真っ赤な海夜がそんなことを言ってきた。


「…。海夜、なんで顔真っ赤なんだ?」

「なんでもないです!そうです、大人しくしてろ。とか普通ですからね。何言ってるんですかね。先輩は」

「やっぱり無理ゲーか」

「…。離れるな。とかなら。ちょっとでしたが」

「やだよ。そんなん言ったら海夜マジで離れなくなるから」

「ってことで…。まず電気を消しましょう。恥ずかしいです」

「知らんし」


俺が言うと海夜は起き上がり…。電気のスイッチを操作。ピッ。という音と同時に部屋は真っ暗になった。まあ少し窓から月明かりがありぼんやり海夜は見えているがな。まあ電気消したし寝るか。と俺が思っていると…。


「さぁ、先輩」

「寝ろ」


うん。なんかまた元気な声が聞こえたため。俺は人の腕を使っているやつに言っておいた。


「ちょっと、なんでも言うこと聞く券使ってますから!」

「真っ暗闇でなんだよ。うるさいな。っか暗いとどこか触ったー、やらで訴えるのか?」

「そんなことしないですから!ただ…。恥ずかしいですから。暗くしたんです」

「最近の海夜は夜行性か」

「むー、先輩が困るようなお願いしますよ?」

「いやいや。さっきからずっと困るようなお願いばかりだよな?恥ずかしいことばかり」

「…。もっとです。た、試しに言いましょうか?」


なんか変なことを後輩が言い出したのだった。

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