第10話 壊れた

 海夜が帰ってすぐにまた鳴った俺の家のインターホン。それもなんか慌てている感じだったので。


「——はい?」


 次こそはせっかちな郵便屋さん?宅配業者の人?荷物?とかか?と思いつつ玄関に行くと。また俺の予想とは違う人が立っていた。

 それは数分前に会って話した人がそこにはいた。海夜だな。

 

「先輩……何度もすみません」

「どうした?海夜…。その汗だくで」


 いかにもというのか。めっちゃ暑いです。地獄から来ました見たいな感じの海夜が居た。いや汗だくいうか。うん。汗だくだな。そんな状態で海夜はドアの前に立っていた。

 汗でちょっと服がいろいろ透けてそうなんですが。気のせいだな。気のせい。何も見ていない。大丈夫だ。とりあえず、何があった?と、思っていると。


「その部屋のエアコンが動かなくて」

「——はい?」

「エアコン。動かないんです!」


 結構切羽詰まってます。という感じで海夜が言うので俺もすぐに理解する。

 ホント必死の海夜。まあこの時期に故障は大変な事だ。下手したら死を意味する。が、まあ今は俺の部屋では順調にエアコンが稼働して涼しい風を出してくれているので。


「とりあえず。ここで涼むか?」

「はい、すみません。ちょっと限界です。頭もくらくらします」

「それはやばいな。ほら。入れ」

「すみません。ありがとうございます」


 海夜が俺の部屋に久しぶりに入場。

 ホントに限界だったのかちょっと足早に海夜は部屋の中に入ってきた。


「す、涼しい!やっぱり、クーラー快適ですね。生き返ります」

「ほら、冷たいお茶。缶ジュースあるけど冷やしてなかったからな。今はこれで我慢してくれ」

「あ、すみません。いただきます」


 俺が飲み物を渡すと海夜はすぐに受け取った。


「で、故障?」

「なんか、ランプ?が点滅……ピッピッとはボタン押すと鳴りはしているんですが。いつまでたっても冷気が全くこなくて。で、説明書を見て操作をと思ったのですが。暑くてギブアップしました」

「まあ……そりゃ壊れたかもな。うちも去年同じようなことあって交換してもらったからな。まあとりあえずこういう時は、大家さんに相談だな。電話したら多分何とかしてくれるだろう」

「ですね。あとで聞いてみます。とりあえず、今は…。涼みたいです。暑かったー」


それからしばらくして海夜は『汗が止まりましたー。助かった。あっ、あの、あまり近づかないでください。汗かいたので』とかとか言っていたが。まあそのことは軽く流して…。俺が再度大家さんの事を言うと早めに連絡した方がいいだろうということで海夜は大家のところに早速連絡していた。


 そして少しして――。


「先輩―」

「どした?」


 なんか残念そうな顔をした海夜を見る。


「エアコンの修理。というか。今の古いのを順番に新品に交換してるみたいで交換をするとは言ってくれたのですが。今大家さんの知り合いの業者さんが立て込んでるみたいで交換するまでに――もしかしたら1週間くらいかかるかもしれないみたいです」

「あー。時期的にだから。この暑さなら取り付けやらも結構あるだろうからな。まあそれは仕方ないか」

「はい。でもあんなサウナみたいな部屋どうしよう…。扇風機買ってきた方がいいですかね?でも扇風機だけじゃ――厳しいですよね?日中生活なんてできたもんじゃないですよね?」

「窓開けても熱風だしな」

「本当にです。まだ窓開けたら風は通りますが。涼しいさはないですよね」

「だよな。エアコンが壊れる時期が悪かったな」

「ついてないです」


 目の前で困ってる後輩。でふと俺の頭に浮かんだのは――。


「まあ、別にエアコン直るまでうち居てもいいが」


 と言ってから。何を言った?俺と。自分で自問自答。後輩でそれも女の子に向かって何を言ってる?と。言ってから気がついたのだった。


「——えっ?」


 さすがに海夜も目が点というのか。もしかしたらこいつ何言ってるんだ?という感じだったかもしれない。


「あ、いや、海夜。悪い忘れてくれ暑さで適当なこと言った」


 俺は適当に理由を付けたが。果たしてこのあとなんと返事が来るか心配だったのだが。


「——いいんですか?」

「——えっ?」

「先輩のところにお邪魔していいんですか?」

「えっ。あー、まあ困ってるみたいだし」

「なら――先輩の生活のお邪魔になるかとは思いますが、少しの間お世話になります」

「あ、はい。うん?はい?」

「助かります」


 あれ?この流れは正しいのだろうか?うーん。おかしい?わからん。いやいや、おかしくない?うーん。いいのか?これ。


 最近海とよく居るから。困ったときはなんとやらなのか。いや、でも…。ほんといいのか?としばらく。いや少しの間だが1人で考えていると。海夜の方が先に話し出した。


「なんか。ちょっと考えたら先輩と一緒に居るって。いつも通りですね」

「まあ、普段、通りだな。泊まりはなかったが」

「まあ先輩が怪しい行動したら。お巡りさんを呼べばいいだけですからね」

「なんだろう。急に怖い。この後輩」

「大丈夫です。先輩は大丈夫です。あのほんとご迷惑をおかけしますが、しばらくよろしくお願いします」

「いや、まあ普通に過ごしてていいから」

「はい、助かります。ホント。これで熱中症で倒れることがなくなります」


 それから涼しい部屋から出ることなく何をするでもなく2人でゆっくりと過ごした。


 いや何もすることはなくないか。あれから『先輩早速ですが。シャワーだけお借りしてもいいですか?』と、海夜がちょっと恥ずかしそうに言って来た。


「別にいいけど。うちで?」

「はい。私のところサウナですから。シャワー浴びてもまた汗だくが思い浮かびますので」

「あー、そうか。そうだな。まあ自由にどうぞ」

「すみません」


 それからさっとだったと思うが。自分の部屋にタオルや着替え取りに行くと言って海夜は一度居なくなり。

 そしてすぐに帰って来たと思ったら『洗面所とお風呂借ります』とそのまま洗面所へと海夜は消えていった。


 なんか少しの間変な時間が流れていた気がするが。

 すこしだったのであまり気にすることなく。

 俺はスマホをいじったり。テレビを見たりしていた。


 それから少ししてシャワーを浴びてきた海夜は服装が変わっていた。


 ってそりゃそうだよな汗だくだったんだから。そしてそのあとは帰ってきたばかりなのにバタバタがあったからか。いつの間にか海夜は俺の使っているベットに横になっていると思ったらお昼寝タイムとなっていた。


 この子。無防備すぎる気もしたが。


 疲れているだろうから。今はそっとしておくか。と俺はブランケットを出してきて。とりあえず海夜にかけておいた。

 部屋はエアコンが効いて涼しいのでね。ここで風邪引かれてもだからな。

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