第31話 かわいい後輩
海夜と旅行?まあ海夜をお出かけに連れて行ってから数日後……。
「でだ。確認作業だ」
「はい」
炬燵の役目を少し前に終えたので炬燵布団だけがなくなったテーブルに俺と海夜は向かい合うように今座っている。
今日は明後日に行くことになっていることについての話し合いだ。
「明後日。海夜の実家になぜか俺が行くことになったのだが」
「はい。よろしくお願いします」
少し頭を下げる海夜。
「でだ。結局俺はどんな立場で行けばいいんだよ」
海夜は考えてるポーズをしたと思ったら……。
「…………さ、さあ?どうしましょうか。あははー」
何故か――笑顔になる海夜。
「お前な。勝手に人の事紹介して。写真まで送って。断れないようにして……」
「……それは……まあ先輩はこうでもしないと逃げますから」
「逃げれるなら逃げたいな」
「ほらー。もう逃げる事しか考えてないじゃないですか」
「まあ……でもとりあえずいろいろ関わっているというか。まあとりあえず行ってやるから……決める事だけちゃんと決めよう」
「先輩って……なんだかんだ言って優しいですよねー」
ホントなんでこいつこんなにニコニコなんだ?わからん。
「ホント……この後輩の子守大変だわ」
「なんかひどいこと言われました」
「っか。このままだと話が全く進まんから再度聞くが。俺は海夜の何。で行くんだよ」
俺が聞くと笑顔だった海夜がまた考えているポーズ。そして…。
「……それは……できれば……ですね――その……」
「できれば?」
「うーん……って、なんで取り調べみたいなんですけどー」
「海夜がいろいろやらかすからだ。勝手に話を進めているというか。話をしていたということからこの問題が起こったんだからな」
「……まあ、そうかもですが」
となんか先ほどの笑顔とは違って今の海夜は目線が下に……。
「じゃあなんだ。とりあえず。付き合ってほしいと?」
「ほぇ――?………………」
海夜の顔がなんか赤くなってフリーズした。
あれ?俺なんか変な事言った?最近の海夜の態度はどう見ても。付き合ってくださいのオーラだと思っていたんだが……ってあれ?俺が変なこと言った?言ったような言ってないような……いやいろいろ考えていてな。頭の中ごちゃごちゃというか。なんで後輩の親に会いに行くとか言うことになったんだよ。ってことで……やっぱまあごちゃごちゃなんだんよ。
「—―なあ海夜」
「………はい」
小さな海夜の返事が聞こえた。っかなんか海夜の声がえらく小さくなったことで……と俺は思いつつ。
「俺—―今変な事言ったか?」
「…………言いました」
「じゃあ訂正だな。えっと……」
「だ、ダメです!」
と急にボリュームが最大になった。さらに机に手を置き海夜がこちらに身体を乗り出してきた。何事ですかこの後輩は……ホント忙しい。というかころころ態度が変わる奴だな。見ていて面白いが……。
「……うるさいな。なんだよ。じゃあ海夜の彼氏でいいわけね。はいはい。その形で行って大丈夫なのか知らないが……まあ一時的か。っかホント海夜はなんて親に紹介したんだよ。そこだけはっきりしとかないと。向こう行った時に話がややこしくなるだろ?」
「……え?」
あれ?また俺なんか変な事言ったのだろうか?
急に海夜が……落ち着いたというか……拍子抜け?みたいな不思議な表情になったんだが……。
――あれ?俺今何言ったっけ?っかさ。俺はさっきからずっと海夜の親と会った際に海夜と話が合わないと……なのでいろいろ確認をしていたのだが……どうも海夜がちゃんと話を聞いてないような……。
だってよ。海夜が俺のことを勝手に彼氏。とか言ってるならそれで合わせておいた方がまあスムーズだし。っか言い方がなんであろうと今の雰囲気とあまり変わらない気がしているんだがな。とか今のところ俺は思っていたんだが……。
「もしもーし。聞いてるか?海夜?」
「は、はい!」
背筋を伸ばす海夜。急にどうした?ホントコロコロ変わる忙しいやつ。
「返事だけはいいなでとりあえずそれでいいのか?あってるか?」
「……えっと……私と付き合ってくれるんですか?」
「いやだから。海夜の親に会いに行くんだろ?それまでにはちゃんとしておかないとだろ?」
「……はい」
「話合わせておきたいだろ?」
「……はい?…………あの先輩。ちょっと確認ですが。それは私の親に会うから付き合ってくれる。ということなのか。その――本当に付き合ってくれるのか……どっちの事言っているんですか?ちょっと業務連絡っぽくて混乱してきました」
「やっぱり付き合ってくださいオーラはあたりだったのか?」
「……な、なんですかそれー!!!」
何故か俺は急に海夜に怒られました。謎過ぎる。今普通に話し合いをしていただけな気がするんだが……。
「もう……この先輩は……」
「なんで怒られてるんだ?俺」
海夜はなんか肩の力が抜けたというか。ふー。と息を吐いてから。
「もっといい雰囲気を期待してました」
「—―なにを?」
「……じゃあ。先輩。わけわかんなくなったのでもう聞きます」
「うん?」
「私と付き合ってくれますか?」
「まあ海夜の子守くらいならもうしてるし。なにも変わらんだろ?」
「ちゃんと答えてくださいよ」
「いや結構ちゃんと答えたが……」
うん。俺ちゃんと答えたぞ?これからも仕方ないからお前の子守してやるから……と。うん。と思っていたら……。
「どこがですか?1回刺しましょうか?」
「俺刺されるのかよ。大怪我じゃん。下手したら死ぬじゃん」
殺意というか……海夜の目が結構マジな気がするのは気のせいだろうか……。
いやだってね。ここ最近の雰囲気というか海夜はなんか馴染んでいるというか。
もう雰囲気?はできていた気がするし。わざわざね……ってあれ?何の話していたんだっけ――?と俺が思っていると……。
まだちょっと殺意のオーラを出しつつも海夜が……。
「真面目に答えないからです。私のイメージとかけ離れてます」
「付き合ってくれますか?ってここ数か月のお前オーラ出しまくりだからなんか。もう慣れた。別にわざわざ固いことしなくても。今まで通りで問題ないだろ?いろいろやらかす。かわいい後輩で」
「…………」
あれ?さっきまで殺意が出ているとか思っていたんだが……今の海夜はこっちを見てフリーズしてるんだが……なんなんだ?このコロコロ変わるのは……実はこいつ熱でもあるのだろうか?とか思いつつ。
「海夜?起きてるか?水でもかけてやろうか?」
「先輩。ふざけているのか真面目なのかもうわからないので確定しましょう」
「確定?」
「はい。私たちは付き合いました。おしまいです。そして明後日は私の実家に行きます」
「—―綺麗にまとめたな」
なんか急に?話がまとまった。
これでいいのか?俺はなんかもうわからないが……。
まあどうせ今の生活は後1年くらいは続くんだろうし……何もなければな。
まあもしかしたらもうすこし続くかもしれないが……こいつなんかずっと住み着いてきそうなんだよな……とか俺が思いつつ海夜を見ていると……。
「はぁー……」
「なんでいきなりため息なんだよ」
「いえ。本当はもっとキュンキュンするのかなー。とかちょっと夢見てましたが。先輩相手じゃキュンキュンは無いですね。でも……決まりました。よろしくお願いします。そしてそのままずっとお世話になる予定です」
「なんかこいつ言っているが……俺の未来が一気に不安になったんだが……っか俺拘束されたみたいじゃん」
「ほら。すぐこんな雰囲気になるー」
――結局何が変わったんだろうか?
何も変わってないか。
どうせ。嫌になったら離れていくだろうし。嫌にならなかったら……こいつはこのままなんだろうし。とりあえず今はそんな感じでいいのだろう。
「—―先輩」
「うん?」
「とりあえず……少しだけ甘えるのはありですか?」
「嫌だ」
「拒否します。仲良くしてないと実家に帰った時に怪しまれますから」
「って、おい。っかホントなんて紹介してるんだよ」
「秘密です。でもまあ彼氏ってことにしておきましょうよ」
「今秘密と言いつつ答えも言ったような……」
とか俺が思っていたらそのまま海夜が何故か俺の方に近寄ってきて……飛んできた。
いやいやその距離じゃ避けようにも近すぎたので海夜にのしかかられるような感じに――ってホント軽いなこいつ。
とりあえず俺にダイブしてきた海夜はもぞもぞと俺の上で動いて……座っていた俺の足に乗る形になったので支える。なんかセット完了?みたいな感じだな。綺麗に海夜が足の間にハマった感じだ。
っかこいつやっぱ身体細すぎだろ。大丈夫か?と思いつつ。
「……重い」
とまあお決まりではないかもしれないが。とりあえずそんなことを言ってみると……。
「むっ……バーカ。しばらく離れてあげません」
「まあいいが。あっそうだ。いいもの見せてやろうか」
俺はスマホを手に取り写真のホルダーを開く。
「いいもの?何ですか?あっ、もしかしてなにかサプライズでプレゼントとかあるんですか?それでしたら内容によってはこのゴタゴタのやり取り忘れてあげますよ?」
「結構いいものと思うぞ。間抜けで」
「—―—―-はい?間抜け?」
今はほぼ密着状態のかなり近い位置に居る海夜にお出かけの時の朝の写真を見せてみると……。
「—―なっ……えっ……ちょ……えっ!?」
おお。慌ててる慌ててる。わたわたしている海夜を見ているのはまあ面白いからありだな。
「なかなか幸せそうに寝てるだろ?」
「い、いつ撮ったんですかー!!わー!!消してください!恥ずかしいじゃないですか!」
勢いよく手が伸びてきたので俺はスマホをベッドの方に投げておいた。
「あっ、もう消し……きゃっ」
立ち上がろうとした海夜を俺はそのまま確保。再度引き寄せた。
ホントこいつ身体細いな。ちょっと力入れるのが怖いくらいだよ。
そして再度だがマジで軽いが……大丈夫だろうか……まあ抱き心地は良しだな。
「せ、先輩……ちょっと……これは恥ずかしいです。完全に……抱え込まれてます」
完全に抱え込まれている。俺に捕まっている海夜。なんか俺の胸?当たりからもごもご声が聞こえる。
「まあまあの抱き心地だな」
「むー。先輩。ちょっと離してください。まず画像消しますから」
「頑張って抜けろ後輩よ」
「うー……ちょっと……そりゃこれは……抜けたくないですけど……あれは消したいです……見せられるたびに私が恥ずかしい思いをすることになるので」
なんかいろいろ謎なことが聞こえたが――。
まあしばらくかわいい後輩とじゃれあいましたとさ。
こういうのもなかなかいいもので。
「先輩……先輩のスマホだけ取りに行かせてください。消したらまたここに戻りますから」
「意味わからん。とりあえずしばらく確保する。わたわたしている海夜面白いからな」
「むーー。抜けたくないけど……消しに行きたい……ってなんで先輩何もしてないぼっちなのに力はあるんですかー。こんな意地悪だとすぐに破局ですよ」
「まあ1回は許されるな」
「なんで許されるとか思ってるんですか。もうこのぼっち馬鹿先輩が」
まあもし大喧嘩やら嫌われても最悪1回は俺にはいい手が1つある。これがちゃんと効力があるのかは知らないが……あの雨の日に得た「ホットココア」のメール文が……多分……効果あるよな?1回くらい――うん。とか勝手に思っているんだが……まあないかもだが。
なにかに使えそうとか思い保存はしてあるんだが……どうだろうね。
まあ今の雰囲気だと。なかなか使う機会はなさそうだがな。
「先輩ー。スマホ消したら……ずっと捕まりますからー。写真だけ消しましょうよー」
っかさ。こいつ――。
さっきからこの俺の拘束?から逃げたそうな事言ってるが……。
全く俺から離れようとしていないからな。うん。俺そんなに力入れたないからな?なのにまるでがっちり捕まっているみたいに言っているが――何がしたいんだが。
まあ面白い後輩だな。
……いやせっかくというか。まあなんか今ならOK?みたいな感じだからな。
しばらく俺はこの後輩を抱いていようと思う。
(第1章おわり)
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