第20話 クリスマス
クリスマス前。世間はとても賑やかな感じだった。基本俺には関係ない。今までは普通の日だったのだが。今は当たり前のように毎日乗り込んでくる海夜が居る。今日も午前中からうちに来てくつろいでいた。そんな時だった。
「ところで先輩。明日はどうするんですか?」
「明日?どうする?って、いつも通りだろ」
「いやいや明日はクリスマスですよ?」
「まあ俺にあまりクリスマス関係ないんだが」
「――私居ますよ?」
「それはどうとらえろと?」
「あっ、いや……その。かわいい後輩がいるんだから。楽しくパーティーーとか?」
「自分で言った。かわいいと」
「なっ。そ、それは――」
ちなみに、さすがに俺も海夜はパーティーというかなんかクリスマスの感じを楽しみたいのだろう。というのはなんとなくだったが海夜の態度からすぐにわかった。
「まあなんかしたいわけね」
「――はい。去年とかは1人だったので」
「去年も年末年始1人だったのか」
「あっ。はい」
ちょっと寂しそう?に言う海夜。たまには海夜の言う事ちゃんと聞いてやってもいいか。というのと1人頑張っている高校生の相手を。って待て待て、最近は毎日海夜の相手をしてるだろ。とか俺は思ったが正面でなにか期待している顔があったので、仕方ない。ホント俺海夜に甘くなったな。
「じゃ。冬休み誰かがこたつむりで家ばっかだからどっかぶらぶら行くか?」
「へっ?」
あれ?クリスマスだから出かけたい。ではなかったのか?と思ったのだが。海夜の反応的に違う?なんか驚いている。
えっ?それ?みたいな。なんか俺のイメージした返事と違うのだが。なので?とりあえず訂正は早い方がいいか。
「あー。その嫌ならいいが。外寒いしな」
「……どこ行くんですか?」
「えっ?いや、急だから決めてないけど。まあぶらぶらだよ。部屋ばかりだとダラけてるだろ」
「はい。でもいいんですか?」
なんか海夜の反応が薄いというか。遠慮しているというか。
「なにが?」
「先輩。私と――ばかりですよ?最近」
「海夜しかいないしな。どっか行く相手とか」
そう。そうなんだよ。どこか行くとかになっても。俺誘う相手がいないんだよな。今目の前に居るやつしか。
「さすがぼっち」
はっきり言いやがった。
「よし。おでかけなし!」
なのではっきり返しておいた。
「なっ、ちょ、行きます。行きましょう。ごめんなさい。先輩。連れて行ってください!私も先輩しか出かけてくれる相手居ませんから!」
結局急にいつもの海夜になり。慌てて謝ってきたのはちょっと予想してなかったので。なんかレアな海夜を見れた気がする。
◆
そして翌日。昼過ぎから海夜と町に買い物がてらぶらぶらしに行くか。ということで外に出てきた。
ちなみに海夜は今日の朝から準備やらやらとかなり忙しそうだった。特に服装選びに時間かかった様子で、昨日から1人でぶつぶつと考えていたしな。なかなか楽しそうな顔をしてな。
俺的にはいつも通りで良いと思うのだが。結構海夜は普段からオシャレだったし。普通こういう時は褒めてやるべきなのかもだが。そういえば出発時は服装。褒めなかったが。大丈夫だろう。海夜もなんも言ってなかったし。いつもなんも言わないからな。
そして俺たちは電車に乗り移動。町の雰囲気はクリスマスだからかなんかいつもと違う気がした。というか考えたら後輩とぶらぶらって。なんだこれ?そりゃ知っている奴に会う確率は俺は0パーセントだから問題ないが。海夜的にはいいのだろうか?と、ちょっと思っていたりした。
町に着いてからは、しばらくは海夜が見たいところをいろいろ言ってきたのでそこを見て回った。なんやかんやで楽しそうに海夜はお店やらを見ていた。俺は付いていく。そして昼食を食べた後に再度いろいろとお店を回っていると。
「先輩、先輩」
「なんだ?」
「プレゼント。買ってくれますか?」
「ねだりにきたよ。ここの後輩」
「買ってくれますか?」
「同じこと聞いてきたよ」
「買ってくれますよね?」
「なんか言い方変わったよ。ってまあせっかくだから。1つくらいなら」
俺が言うと。目が見開いたというのか。海夜の顔がちょっと近くに来て。
「ホントですか!?」
意外だったのか。めっちゃ嬉しそう表情とワクワク?みたいな表情がコロコロと――。
「ああ。せっかくだし。何もないはだからな。って万単位はやめろよ」
「大丈夫です。9999円までにします」
「おいこら、ギリじゃないか」
「クリスマスですから」
「この後輩やだ」
と思った時俺はかなり前の事だが。とある記憶が蘇ってきた。
そういえば、海夜の誕生日の時。ケーキケーキで俺。すっかりプレゼントの事忘れていたんだよな。でもなんかケーキがプレゼント?になったのか。海夜も期待していなかったのかで。終わって行っていたんだよ。
本当は海夜に誕生日プレゼント。欲しかったか?みたいなことを聞いた方がとか思い出した時は思っていたが。変に言って雰囲気を壊してもなのでね。今の海夜楽しそうだし。だから――まあまた何かの機会の時にとか思いつつ。スマホのメモ欄にメモをしたのだった。メモしても忘れるかもだがな。ほとんど見ないし。
それからは、俺が海夜へのクリスマスプレゼントを購入することが決まると。海夜はさらに店を見て回っていた 『どれ買ってもらおうかな?』とまあホント楽しそうにお店の中を見ていた。
そりゃ『なにかプレゼントください』とかでプレゼント選ぶよりははるかに楽か。とか思いつつ付いていっている俺だった。そして海夜が興味を示しているものをチェックしたりしていた。
にしてもやっぱり外は寒い。部屋の中は快適だったな。ちなみに俺がそんなことを思っている間も海夜は商品見て歩いている。買い物している時の女の子元気だなー。疲れ知らずというのか。寒さも忘れてそうな行動力だった。
しばらくして新しいマフラーが欲しいやらでマフラーと。ならついでに手袋も欲しいやら海夜に言われて結局2つプレゼントを買うことになりましたとさ。
海夜が選んで支払いは俺。ちゃんとプレゼント用にしてもらってその場でだが海夜に渡した。
だからかは知らないが先程から超ご機嫌の海夜はプレゼントの入っている袋をずっと抱きしめて歩いている。
そんなにマフラーと手袋がほしかったのだろうか?まあ休み明け用か。通学時学校までがホント寒いからな。あっ。ついでに俺も買えばよかった。
「先輩。次どうしますか?」
「帰るか」
「はやっ」
めっちゃ驚かれたよ。って、俺的にはいつも通りの流れというか。
「いや。夕方だしなんか人混んできたからな」
「まあクリスマスですから。カップルが多いですね」
「だな。だから関係ない人たちは帰りましょうだろ」
「ちなみに先輩」
「なんだ」
「わたしたち周りからどう見られてますかね?」
「兄妹とかか?似てないが」
「なっ。兄妹!?」
あれ?何か変なこと言ったか?めっちゃショック?というのか――でも見た感じそれが一番近いように俺は思ったのだが――。
「だろ?うるさい妹の相手。子守してる兄だな」
「こ、子守……」
そんな話をしていたら。隣を歩いていた海夜が身体をプルプル……って、怒ってる?俺事実を話しただけのはずなんだが。とりあえず。確認が大切か。
「――あの?海夜さん?怒ってます?」
「お、怒ってません!」
「……怒ってた」
俺何かミスったか?
「怒ってないです。先輩からそう見られてるのはわかってましたから」
「なんだ。わかってたか。妹よ」
「妹なんか、嫌です!」
「じゃ、なんだ、えっと――ガキ?」
「なんで、そうなるんですか!」
しばらくなんか。ギャーギャー言いながら俺たちは歩いてましたとさ。周りの方すみません。うちのガキがうるさくて。
◆
それからしばらくするとあたりは暗くなりだし。冷えてきたが海夜がまだ帰りたくないというので俺たちは帰ることはなく。先程からは街中にあるイルミネーションめぐり。みたいな感じでぶらぶら歩きながら。海夜が写真を撮ったりしている。
「――くちゅん」
すると途中でそんな声が横から聞こえた。
「……オシャレしすぎて寒いんだろう。似合っているが」
「なっ。オシャレって。今。言います?普通、出発の時に。ですよね?なにも触れてくれないのかと。思ってまし――くちゅん」
「で、寒いんだろ?」
「ちょっとです。大丈夫です」
言いながら隣を歩く海夜。だが足とか寒そうなのは知ってたが。でも帰る提案をしてもこいつ帰らないし。どうするべきか。店に入れば温まれて何か食べれるが。ご飯といってもこの時間どこもかしこも人、人、人。ホント――人、人、人。人でいっぱいだった。
「海夜」
「なんですか?」
「帰る選択肢は?」
「もう少しぶらぶらイルミネーションとか見たいです」
「風邪ひくぞ」
「でも。先輩と出かけるのはレアなことですから」
「まあ出ないからな普段」
「だからもう少しぶらぶらします」
海夜はまだクリスマスを楽しみたい様子。俺はどっちでもいいのだが海夜に風邪ひかれてもなぁ。と思いつつ海織に付いて歩いている。
結局帰ることになったのは夜21時すぎ。もうすぐ最寄駅に着く。まああれから偶然お店見つけ。晩御飯も食べてきたからこの時間になったのだが。
「海夜起きてるか?」
「――あっ、お、起きてます。起きてますよ」
帰りの電車では爆睡だった海夜を今起こしている。乗った瞬間くらいから俺にもたれ寝ていた。はしゃぎすぎが原因だろう。あれからもスマホで近くでイルミネーションとかめっちゃ調べてて行けそうなら行く。だったからホント子供みたいだった。うん。子守は大変だぜ。ってやつだな。
そして駅に着くと。
「さっむい。あー。目が覚めます」
「だろうな。風も出てきたな」
「先輩。寒いです。壁。盾。風除けになってください」
電車降りるなり俺の背中に海夜がくっついてきた。
「誰だよ。遅くなるまで帰りたがらなかったの」
「――先輩?」
「違うからな」
さらっと嘘を言うな嘘を。
「……」
「黙ったよこいつ」
「だって。その――楽しかったですから」
すると、なんか小さな声が後ろから聞こえてきた。
「ほら歩けこのスピードじゃ家に着かん」
「風。冷たいです」
「前見て歩かないとこけるぞ」
「大丈夫です。先輩を巻き込みクッションにします」
「おい。それ最悪の結果しかならないだろ。主に俺が被害被る」
くっつかれてても歩きにくいので横を歩かせた。というか。なんか腕にくっつかれたので周りから変な目で見られそうだったので足早に帰るとなった。そんなこんなでやっと家に帰ってきたのだった。
「じゃおやすみ。暖かくしろよ。おしゃれさん」
「むっ――はい。あっ、プレゼント本当にありがとうございました」
「ああ、っか真面目に風邪ひくなよ。あと風邪ひいても俺が連れまわしたとか捏造もするなよ」
「大丈夫です。多分。おやすみなさい」
「多分ってこいつ言いやがった」
そりゃ寒かったからか。それとも遅い時間だからか今日はちゃんとアパート着くと自分部屋に向かった海夜。実はこいつ寒いからくっついたままうちまで来るんじゃないか。と思ったがそんなことはなかった。
そして俺も部屋に入り寒いのでとっとと風呂に入り温まり。とっとと布団に入るという選択をした。
でも、確かに寒かったが。なかなか楽しい1日でもあった。今までの生活では経験しないようなことばかりだったからな。
って布団に入ったら即寝た俺だった。子守疲れましたよ。マジで。
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