第16話 回転寿司最強

 寒くなってきたある日のこと。


「で、何だって?」

「だから…。私告白されたんですよ」


 夕方。いつものように学校帰りの海夜が家に来て早々にそんなことを言った。


 こんだけ見た目のかわいい子だし。みんな狙ってるんだろうなぁ。と。実は中身はなかなかいい性格をしてると思うが。うん。いい性格をな。

 それを知らなければ。かなり人気あるだろう海夜は少し前はちょっかいかけられていたとかだったが。髪を切ってからは周りの反応が変わったとか言っていたから。海夜の学校生活は少し変化があったのだと思う。


 でだ。


「俺にそのこと言ってどうするんだよ。いいアドバイスなんか求められても俺そんなこと経験ないからなんもアドバイスないぞ」

「アドバイスとかじゃなくて。先輩的には――どうなんですか?私が。そのが告白された。ということを聞いて」

「いや。まあ。うーん。なんだろう。予想できたことみたいな?」

「――微妙な反応ですね。そこは、スパッと断ってこい!じゃないんですか?」

「いやいや、なんで俺がそれ言うと思った?」

「先輩とはそこそこ長いお付き合いですよ?」

「まあ海夜が何を考えてるかは知らんが。それは海夜が決めることだろ」

「でも先輩気になってます?」

「――なってないな。うん。後輩が困ってるなー。って感じだな」

「間がありましたよ?」

「気のせいだ」

「そうですか。ふふっ」


 まあちょっとは気になったけどさ。でもこれは海夜のことだからなー。と俺は思っていた。するとまた海夜が話し出して。


「なんで私がいいんですかね?」

「面倒なやつなのになー。みんなちゃんと見てないな」


 俺が言うと。なんか大変冷たい目線?視線を感じた気がする。怖い怖い。


「――先輩。そのうち後ろから刺されますよ?」

「怖いからやめような」

「次聞いたら。もしかしたら間違ってそのあたりにあるものでうっかり先輩を刺すかもしれません」

「気をつけます。ってうっかりで人を刺そうとするなよ」

「で。私はなんで告白をよくされるんですかね?中学の頃からなんかよくあるというか」

「俺に聞かれてもな。まあ普通にかわいいし」

「――かわいい……ですか」


 本当のことなので言うと海夜が下を向いた。あれ?こやつ。照れてる?いやかわいいは事実だからな。ほんと。


「まあ実際は」

「先輩。言うことを間違えると――」


 海夜はそっと俺の机の上に置いてあるボールペンを握った。いやいやそれ下手したら本当に刺さるからやめような?


「いやでも海夜なら普通に人気あるだろう?」

「私的には人気はいらないんですが」

「大変だな」

「先輩。私が――その誰かと付き合う。と言ったらどうしますか?」

「明日は、雹が降るかな?と」


 その言葉はさらっと出てきた。いやうん。だって雹降りそうだもん。なんか海夜が誰かとカップルらしい事しているイメージがなないというか。あまり想像できなくてな。

 すると海夜は俺のその返しは全く予想していなかったみたいで。


「あの――先輩?それはどういうことですか?」

「うん?いやさ。海夜を知っているからだと思うけど。海夜が誰かと付き合ってるっていう未来予想図がないな。俺の中にないわ」

「――それ、どうとらえたらいいんですか?」

「まあ海夜が決めること。と」

「なんか、こんな展開じゃなくて、先輩をあたふたさせる予定が――これは失敗ですね。先輩が一般人じゃなかったみたいなので」


 海夜はなにか期待していたのか。拍子抜けしたような表情をしていた。っか今おかしいことなかったか?


「なあ、俺。一般人っか普通の人なんですが」


 と俺が言うと。海夜は俺の質問には答えずに。


「まあ断りましたよ?」

「おい。じゃ今の話はなんだったんだよ!」


 そんなことをいつつ。って、まあ海夜が断ったを聞いてなぜかホッとした。あれ?なんで俺がホッとするんだ?まあいいか。気のせいかもだし。


「そういえば今更ですが。先輩はいままでに彼女いるんですか?なんかさっきさらっと近い話を聞いた気がしますが一応確認のため――」

「あのな。俺の生活しってるだろ?」

「はい。ぼっち」


 はっきり言いやがった。


「はっきり言うなこいつ。でもまあいい。で、海夜以外の誰かと俺が話してるとこみたことあるか?」

「ないです」


 ってこいつホント。知ってますよ?って顔できっぱり言うな。と俺は思いつつ。


「つまり」

「あっ、私が彼女ですか?先輩さすがにそれは無理がありますよ?」

「言ってない。なぜそうなった。ってさっきから所々話の流れがおかしいからな?」

「まあわかってますが。本当にずっと1人ですか?」

「1人だ!って。なんか話がおかしいような」

「わー」

「なんだその反応?」

「ぼっちですね」

「……そうですよ。もう1人のぼっちさん」

「あっ。先輩がひどいことを言ってきました。まあ事実ですが」


 とまあそんな感じに海夜と無駄な過去の話した気がする。

 こんな話二度としないだろう。こんな話。っかなんで後輩とこんな話してるんだっけか?あっそうそう。話を戻そう。


「で、今日は告白された。の報告に来たのか?」

「あっ。あれ?私何しに来たんだっけ?先輩が雑に答えちゃうからわからなくなったじゃないですかー。もう」


 なぜか怒られなかったか俺?


「意味わからんわ」

「だからご飯食べます」

「さらに意味わからん。っかさ、話をガラッと変えるが。あまり言ったことなかった気がするが高校生よ」

「はい?」

「宿題してるか?」

「なんですかいきなり」


 海夜はどうして今その話になりました?という顔をしつつもまあ答えてくれた。

 なんで俺も今その話をしようとしたのかわからないのだが。なんか急にその言葉が出てきたというのか。頭に浮かんできた。


「いや、海夜が勉強してるイメージがないなってふと思って。」

「いやいやありますよ?」

「ない。ここで飯食ってだらけてるしか俺は知らない」

「先輩。もしかして。わたしの心配してます?」

「多少。こいつだらけてないか?って。いつも雑談しに来てるからな」

「ふむふむ。先輩。まだまだわたしのこと知りませんからねー」


 すると。何故かこいつは勝ち誇ったような顔をしだした。すると海夜は立ち上がった。


「どうした?海夜」

「ちょっと待っててください。先輩。そして覚悟しててください」

「はい?」


 そう言って海夜は帰っていった。やべー。なんか地雷踏んだ?これこの後刺されました。とかいうエンドになるのか?などとと思っていると。


 それから10分ほどして海夜は戻って来た。とくに乱闘でもするために動きやすい服装に着替えに行った。とかではなかった。制服のままだし。変わったことは――手に何か持ってきたことくらい。


「はい、先輩。今までの私の成績表です」

「成績表?」

「はい」


 海夜が差し出してきたので受け取る。見てみると確かに海夜の成績表だった。

海山道海夜。と表紙には書かれていたし。っか。成績表とか見せてくれるんだー。と思いつつ。渡されたので開いてみると。


「――ちょっと待て。これ……マジ?」

「マジですよ?先輩」

「――学年3位」

「はい!後2人も今学期中には抜いて見せます」

「ぼっちすごいな」

「先輩ほどのぼっちじゃないです」

「っか。どれもめっちゃ良くないか?これ」

「まあ、学校は基本暇ですから。先輩ほどではありませんがぼっちですし。休み時間誰かと話すとはほぼないので、休み時間に教室で宿題してますしそれでも時間余ったら予習してますし。まあ授業聞いたら大体覚えますから」


 やばい、海夜がめっちゃでかく見えた。えっへん。というのか。うん。普段は小さいのに。ってこんなこと言うと怒られるか思うだけにしておこう。


「マジか。こいつ」

「はい!」


 完全に勝ち誇っている海夜が俺の前に立っている。どうやら海夜には勉強で争うことはしない方が良さそうだ。多分ぼろ負けする。いつかのゲーム以上にぼろ負けする。これは間違いないだろう。負ける。


 そのあとは海夜はすっきりしたのか。っかなんでこの話になったのかもう忘れた。

なのでいつものように海夜は俺の部屋でくつろいでいたのだが。


「先輩。そういえばご飯は――?」

「あー。忘れてた。何もしてないわ」


 海夜と話していたのですっかりご飯の準備ということを忘れていた俺だった。


「えー。あっ!じゃ、お寿司。お寿司食べに行きましょう。回転寿司」

「少し前に寿司食わなかったか?」

「先輩は私を褒めることが必要だと思います」

「なんで?」


 俺が言うと机の上に置かれていた成績表を指さす海夜。


「学年3位と頑張っている私にお寿司を奢ってください」

「…。なんかいきなり奢ることになったのだが」


 ◆


 とまあそこから俺が大逆転できるわけもなく。海夜は『着替えてきます』と言い先ほど部屋を飛び出していった。なので今は俺1人。

 これで行かないは――海夜を怒らすので俺も準備と財布の中身をチェック。中身が無ければ、中止にできるか。とか思ったがあいにく節約家の俺。今月はまだ余裕だった。というか食費が浮いていたんだよな。海夜がよく食材を持って来てくれていたので。まあということは、行くしかないようだ。


「先輩。お待たせしました」


 それから15分くらいすると海夜が私服になって戻ってきた。今日も落ち着いたお洒落さん登場だった。思ったより準備早かったな。


「まあ。じゃ行くか」

「はい!」


 そこから後輩を連れて回転寿司屋へと移動した俺達。向かっている途中も何を食べようかと俺の隣で海夜がずっと話していた。そしてお店に到着すると。


「久しぶりだー。いつ以来だろう?」


 ちょっと子供っぽいというと――だが。楽しそうにしている海夜が居た。


「海夜はそんなに来てないのか?」

「はい。多分。2、3年は来てないです」

「マジか。まあなら来てよかったのか」

「はい。ありがとうございます。そしてごちそうさまです」

「なんで奢ることになったのかね」

「まあまあ細かいことは気にしないでください」


 そんなことを言いつつお店の人に案内された席に座る。俺は普段の流れカウンター席を選ぼうとしたのだが。今日は海夜が居るのでテーブル席にした。


 少し遅めにはなったがそれが幸いか待ち時間なしでお店に入れたので、早速海夜がメニューとにらめっとしている。こういう姿を見れば。子供。普段来ないところに来て目を輝かせている子供だった。


「先輩。どれ食べてもいいですか?」

「……ご自由に」

「やったー。じゃ、まずはマグロ。あっサーモンかな。あー。アボカドが乗っているのも美味しそうですね」


 それからめっちゃ楽しそうに海夜はしていた。

そして海夜が注文していくと。マグロが来たり。サーモン。ぶり。海老。肉――肉!?あー、肉はあるか。俺も食べたことあったわ。


「あっ、ホタテも美味しそう。先輩いいですか?」

「どうぞ」


 美味しそうにどんどん食べていく海夜。俺も選んで――ではなく。何故か俺は海夜が選んだものを食べている。理由は1皿に2貫お寿司が乗って来るので。まあいろいろ食べたいと言った海夜が半分こという方法を提案してきたから。まあなので俺は海夜から回って来たお寿司を食べつつ。楽しそうにしている海夜を見ている。

 いや、まあこいつ見てないといきなり高い皿のバンバン頼みそうだからな。今のところ聞いてくるし。俺も半分食べているから何を食べているかわかっているからいいが。ってラーメン美味そうだな。と俺はメニューを見ていて思ったのでラーメンを注文。


「あっ、先輩それラーメンですか?」

「そうだけど?」

「一口欲しいです」

「まあ、良いが」


 途中俺が食べているのを普通に海夜に取られたりもしたり。っかこいつめっちゃ食うな。


「あっ、だし巻き?厚焼き?のたまごもありますね。たまごって美味しいですよね」

「あっ、それ俺も頼むなら1つ。確かそれは1つしか乗ってこないだろ?」

「はーい」


 とまあ2人でなんやかんや言いつつも食べて最後には。


「先輩。スイーツありですか?」

「ここまで来たら最後までご自由にだな」

「じゃあ。チーズケーキ……あっ、アイスもありますね」


 スイーツメニューも最後にちゃんと頼んで食べて帰りましたとさ。予想していたより海夜が高い皿をバンバン食べるということはなかったので、まだマシだった。

 でもまあ1人で来るときの2倍ちょいだったから。予想通りというレベルか。


「美味しかったです。ごちそうさまでした」

「満足したならよかったわ」

「先輩が居てくれないと来れなかったので私はとても感謝してますよ?」

「の割にはしっかり奢らせたがな」

「まあまあ」

「まあ喜んでもらえたならいいか」

「そういうことです。また来ましょうね。あっ次は焼肉とかもいいですね」

「おまえ。1人だからいけなかったところピックアップしようとしてないか?」

「してますよ?先輩が連れて行ってくれそうですから」

「こいつ」

「ダメですか?」


 そんなことをいい顔で海夜が言ってくるので俺は拒否は出来ず。いやだってめっちゃ目を輝かせているというか。楽しみ。というのがあふれていたからな。


「――まあ、たまにはな」


 なんか海夜のお願いを断れなくなってきた俺。海夜に甘すぎる疑惑が今出てきたが。というか俺やっと気が付いたみたいな?感じだな。


 などと話しながらそのあとは普通に家に帰りましたとさ。まあ帰るまで隣を歩く海夜がご機嫌だったからいいか。

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