第15話 ケーキ
海夜が風邪から復帰してから数日後。
「先輩」
「なんだ?」
「先輩の誕生日はいつですか?」
「先月の30日だけど?」
もう終わった。と思いつつ答えると。
「え?終わってるじゃないですか」
「いや海夜に言う必要はなかったからな」
いつもの昼休み。今日は雲多めだか晴れているので海夜もいつものベンチに来ていた。
そして俺はのんびりと昼ご飯を食べていたのだが。突然海夜に誕生日を聞かれたから答えていた。という場面である。
なんで今。俺の誕生日を聞く必要があったのかわからないのだが。とか思っていると。
「言う必要ありますよ。せっかくですから普段のお礼にって考えてたんですけど!」
「なんで、怒られてるの?俺?」
「とにかく。わたしは今月15日ですので一緒に誕生日のお祝いをしましょう」
「いや、気を使ってもらわなくても。誕生日とかまあ俺にとっちゃ普通の日だし」
「いいんです。せっかくですから。わたしが料理も準備しますから。先輩は美味しいケーキの準備してください」
いきなり2人の誕生日会が決まったみたいなのだが。どうなるだろうか。これ。である。
「っか。これって俺の誕生日ってどうでもよかったんじゃないか?」
「えっ?いやいや関係ありますよ。先輩の誕生日に本当はお祝いしたかったんですから」
「でもさ。もう1年の4分の1?は終わってるんだから。ってもしかして海夜が自分の誕生日祝いをしてほしかった。と?」
「なっ。いや――まあそれもちょっと、少しはありますが。たまにはケーキ食べたくなったので。その……」
「俺への日頃の感謝どこいった?」
「あっ。ありますあります。おおありです」
「楽しい後輩なことで」
なんか決まったが。まあいい。ご飯食べるやらはよくあることだし。特に変わったことではないので。って待てよ。これはもしかして――海夜が誕生日のプレゼントをくれっていうアピールなのか?うーん。
◆
結局俺は当日まで変に悩む羽目になった。難題だよな。って、海夜は何も言ってないのだがね。俺が勝手に悩んでいるだけだ。
そして海夜の言い出した誕生日会は海夜の誕生日の日に行うことになった。基本ぼっち?暇人?の2人は2人とも予定が空いてたのでねすんなり決まった。っか2人とも予定がある方がレアである。
2人ともほぼ暇だから。予定がないから。週に何回も夕食を一緒に食べたり。海夜の愚痴?聞いたりという時間があるんだからな。
「先輩。今日の料理は任せてください」
あと海夜がそんなことを言っていたが実際のところ海夜の料理を俺はまだ知らない。出会ってから数か月経っているが見たことはないし。だからちょっと心配だが。こちらにもミッションが2つもあるので俺はそちらをクリアすることを優先した。
ちなみに1つは数日前に終わっていたが。もう1つ残っている。ケーキだ。
調べてみたら意外とケーキ屋は近くにもあったし。少し範囲を広げればさらにいくつかあった。でもどこが良いとかわからないので。結局俺は近くのところにした。
こういう時に以前海夜がお礼とか言い持って来てくれたケーキ屋を知っていたらそこにしたのだが。その時は聞かなかったのでね。全くわからない。聞かなかったことにちょっと後悔していた俺だった。
まあそれはいいとして。自分で見つけたお店に行くまではよかったんだが――。
「何買えばいいんた?」
という新しい難題にぶつかった。
そもそも普段はケーキ屋なんて行かないからな。入りにくいんじゃないか?とか店に来る途中では思っていたりもしたのだが。実際はその部分での問題はなかった。幸いというのか。お店に着いて中を覗いてみるとサラリーマン風?の人がショーケースとにらめっこをしていたので俺は普通に入れた。
そして先客の人がしばらくショーケースとにらめっこをしてお店の従業員の人も捕まえてくれていたので俺はゆっくりと店内の商品を見れた。
店に女子がたくさんとかだったら『よし、他の店行くか』と回れ右していたかもしれないが今日のところはそれはなかった。
しばらく商品を見ていてたまたま目についたのはホールのケーキ。
ホールケーキの中にはかなり小さめのものもあった。2人ならこれでちょうどいいのでは?と思い俺は購入することにした。ついでに誕生日やらやら言っていたから。ロウソクもいるんだろうか?と、ちょっと悩んだが。わからないのでロウソクはやめようと思ったら。レジのところに数字の形をしたロウソクがあり。ないよりはいいかとか結局買うことにした。
それから会計をするまでがちょっと時間がかかったのだが。
理由は俺が来た時からいる人がまだショーケースとにらめっこしていて従業員の人を捕まえていたから。この人も結構悩んでるなー。と俺は思いつつ待った。そして前の人が買い終わってから俺もやっと購入した。
そのあとはケーキ持って帰るだけ。そして俺の部屋ではなく。そのまま海夜の部屋に向かったのだった。
いや今日のことを話している時にどっちの部屋でするのか?という話になった時にね。
「今日は、わたしのところで食べましょう。私が料理しますし」
ということになっていたので今日は海夜の部屋に行きましたとさ。
ピンポン。
「あっ、先輩おかえりなさい。どうぞです」
インターホンを押すとすぐに鍵が開く音がして海夜がドアを開けてくれた。
なんか変な感じ。というか。あまり海夜の部屋に帰る。というのがないのでね。
「適当に座っててください」
「ああ。わかった」
「あっ。先輩。早いですけど出来たら食べますか?もうすぐできますから」
「だな。待っててもだし。あー、ケーキは、冷蔵庫か?」
「あ、はい。真ん中の棚を空けてありますから。入れちゃってください」
ということで俺は買ってきたケーキを冷蔵庫へ入れる。
海夜の家の冷蔵庫の中は毎日料理してます。という感じの冷蔵庫だった。調味料やらやらもちゃんと入っている。多分ストック?しているようなタッパーも綺麗に並んでいる。って、他人のところの冷蔵庫をずっと見ていたらなんか怒られそうだからケーキを入れたらすぐに閉めた俺だった。
ちらっと見た時にちょっと気になったのは。この冷蔵庫の中に、刺身があったような。あったよな?普段あまり刺身は買わないので目についた。
いや生魚食べたいと思ったら100円の回転寿司屋に行く方が楽というか美味しいし。クーポンやらもあればお得に食べれるから。1人で入るのははじめ躊躇したが。1度入ってみると。どうってことなかったからな。
カウンターでのんびり食べれるし。時間も気にしなくていいし。よくよく考えたら今の回転寿司屋サイドメニューも豊富だから。自分へのご褒美。とか思った時に行っていた。
って俺は何を語っいているのか。変に思われるから海夜に言われた通り座って待っていよう。とそれから部屋ですこし待機した。
キョロキョロするべきではないだろうが。何もすることなく待っていると自然といろいろと見てしまう。
少し前にも海夜の部屋には入ったが。やはり異性の部屋は気になる。全然俺の部屋とは雰囲気違うし。パッと見た感じ今日もかなり綺麗に整理整頓されている。
そして不思議なことにこの部屋の居るとなんか落ち着く感じもある。居心地を聞かれれば良いと答える部屋だ。いやほんと普通に異性の部屋にいると緊張というか変な感じがして落ち着かないとかありそうだが。海夜の部屋は落ち着く気がする。
これはこの部屋に入った人全員が言うのではないだろうか?この前は聞かなかったから知らないが。あのエアコンの交換してくれた人たちも。この部屋の感想と聞けば、あの時は暑い。だったかもしれないが。
それを除いての感想聞けば。絶対落ち着く部屋と答える気がする。海夜の部屋はそんな部屋である。と。やらやら1人でそんなことを思ってると。
「先輩。できましたよ。はい。完璧です」
料理が机の上に運ばれてきた。そして俺はびっくりすることになった。
「いや。マジ?これ海夜が作ったわけ?」
「もちろんですよ?作ってたじゃないですか。そこで」
そう言いながら台所を指さす海夜。
「まあそうだが。ちょっと予想をしてなかった」
これなんて言うんだっけ?手まり寿司?まさか海夜が寿司を握っているとは思わなかった。
まあ普通の寿司ではなく。可愛い丸く小さなお寿司。ってだから刺身が冷蔵庫に入っていたのか。とりあえず今の現状を言えば。俺の前には丸いお寿司が綺麗にたくさんならんでいる。
「高い材料は使ってませんが。たまにはお寿司もいいかな。と、1人暮らしだとほとんど食べないので」
「寿司なら買ってくるや店に行くという方法もあったと思うが。これすごいな海夜マジでやるな」
「先輩に褒められるのはなかなか。なかなかですね。ちょっと嬉しいです。まあでも市販の酢飯の素で酢飯を作って丸めただけですよ?」
「いや、でも綺麗だしすごいわ。スーパーで売ってるやつみたいだし」
「そんなに褒めても高級な品は出ませんよ?」
そんなことを言っていたら。次はサラダが出てきた。レタス、トマト、卵やらが、綺麗に盛られていた。こいつめっちゃ料理慣れしてないか?ずっと俺に作らせていたような気がするが。
このレベルなら俺が食べたかったんですがね。海夜のところに通っても良いから。
「あとは先輩のケーキですね。気になりますが。まずこれ食べましょうテーブル広くないので」
「ああ、だな。じゃ、いただきます」
「はい、どうぞです。あっ、醤油持ってきます。あとわさびはうちないんですよ。普段使わないので」
「なら俺の家から持ってくるよ」
「――なんで先輩わさび常備してるんですか?先輩の料理でわさび使うようなもの今まででありましたっけ?」
「いや、たまに使うから。まあ持ってくるよ」
「すみません。ありがとうございます。ってなんでわさびなんて常備してるんですか?謎ですよ」
とまあ海夜にそんなことを言われつつ。俺はちょっとわさびだけ部屋に取りに行ってから海夜の作ってくれた料理を食べた。不味いわけがない。めっちゃ美味いし。
そういや寿司とか久しぶりだったし。美味い。
そんなことを思いつつ俺は次にどれ食べようかと選んでいると。
「あっ。先輩。それわたしキープです」
俺が取ろうとした物を海夜がさっと横から持っていった。
「いやいやキープ?なぜ?」
「それ高いんですよ」
「おい。いい品混ざってるじゃん」
「言ったらその争奪戦が起こるかもしれませんから」
「いやいやここには2人しかいないからな?」
ちゃっかり良いネタも混ざっていたらしい。見た目ではわからないが。まあどれも美味いから俺は気にしないが。
っかそうか海夜がなんか同じネタのばかり食べてるな。と思ったが。そういうことか。こいついいやつから先に食ってたな。
それから俺も海夜が先ほどから食べていたのをさっと取ったりして食べ進めていく。小さいサイズなので、2人でパクパク取り合いながら食べればあっという間だった。
しばらくすれば先ほどまで小さなお寿司がたくさんあった皿が空の皿になっていた。ちなみにサラダの皿も完食していた。野菜も体に大切だからな。
「いやー。久しぶりの寿司美味かったわー」
「よかったです。じゃ次はケーキですね」
ここで先程俺が見つけてきたケーキが登場する。海夜が冷蔵庫から出してきて。楽しそうに箱を開ける。今の海夜の様子は録画していたら。欲しい人いるのではないだろうか。とかと大変余計な事を思ってしまうレベルの表情だった。
っかそんなに楽しみにされていたとか。大丈夫だろうか俺の選択――と不安になって来た。
「って、ホールですか?」
中身を見ると海夜のちょっと驚いた表情でこちらを見た。そんな海夜に俺は『あっ、はい――』とちょっとやらかしたか?と思いつつもそれは表情に出さないようにして。
「まあ、小さいのをね。買ってきました的な」
「ちょっと驚きましたが。ホールとは思ってませんでした。でも、これチョコですか?わたしこういうの好きですよ」
「よかった。マジよかった。ちなみにロウソクありだぞ」
「え?先輩これに、十数本刺したら火事ですよ?」
海夜が言ったので――想像してみる。間違いなく火事だな。ケーキの上が燃える。間違いなく火柱がたつであろう。
「まあそんなことはしないから。とりあえず。1の数字のロウソク買っただけだがな」
俺は箱の隅に固定されていた1の数字のローソクを海夜に渡す。
「――1?なんで1なんですか?」
俺が渡すと海夜が不思議そうにロウソクを見てさらにこちらを見てきた。
「いや――知り合ってこういうことするのがその1回目だから。みたいな。特に理由はないが。0から9?だっけ?まあロウソクの数字があったけどその中ならまあ1でいいか。みたいな」
「なるほど。先輩は毎年私とこれからお祝いがしたいと。そして毎年数字が大きくなっていくんですね」
何だろう。そんなこと考えて買ったんですか?みたいな。なんて言うんだろうな。ニヤニヤ?した感じで海夜が聞いて来た。
「いや、そこまでは考えてない」
「えー、違うんですか?ひどいですねー。先輩は」
そういいながら泣きまね?をしつつ。すっとケーキを自分の方に引き寄せる海夜。
「あ、ちょ、なんで自分の方にケーキ寄せた」
「ひどい先輩にはケーキ無しです」
「すみませんでした。って、1人で全部は無理だろ」
「食べます」
俺すぐ謝る。こういう時は早い方がいいのだが。ちょっと余計なことを言った気がするようなしないようなと。不思議な感じだが。とりあえず謝るのは早めにというやつだ。
っか本当にこの大きさなら海夜が1人で食いそうだったので再度すぐに謝った。
「すみません。食べたいです」
「ふふふ。よろしいです」
勝ち誇った顔の海夜。楽しんでいるようでよかったというか。
「――なんかめっちゃ負けた気がする」
そしてそれから謎な1のロウソクに火をつけて――。
海夜がスマホで撮影のち消してから食べるというイベントをした。案外と2人とも楽しんでいた気がするな。
そしてケーキもあっという間に消えた。
ここのケーキも大変美味しかったです。あの店もあたりだな。美味しかった。
また1つ俺の中ではまた買いたい店候補となったのだった。なんか海夜と過ごすようになって今まで知らなかったお店がどんどん情報として入ってくるようになったな。
それから片付けは2人でやった。
さすがに食べて終わり。では流石に海夜に悪いのでね。
海夜的には『先輩は座っていていいですよ?』だったみたいだが。また部屋をキョロキョロして待つことになりそうだったので片付けは手伝った。
それからは海夜が『紅茶ありますが飲みますか?』と言ってくれたので紅茶を飲みつつしばらく海夜の家でゆっくりした。
「にしても寿司食えるとはな。マジで感謝だ」
「1人だとあまり食べませんからね」
「まあ食べたくなったら…。家ではなんか面倒だから回転寿司に行くだな」
「――先輩1人で回転寿司に行くんですか?」
俺が言うと少しびっくり?した感じで海夜が聞いて来た。
「うん?ああ。慣れた。っか。1人だとゆっくり食えるし」
「えー。そういう時は誘ってくださいよ。私も行きたいです」
そして俺が答えると、めっちゃ行きたいんですけどオーラを海夜が出しながら話してきた。
「ちょっと電車乗ったらあるぞ?」
「いやいや。高校生1人じゃ――入れなくはないですが」
「いや。行ける」
「無理です。だから行きましょう。誘ってください」
「今さ寿司食べましたよね?海夜さん」
「回転寿司ならもっと種類ありますから。家とは全く違いますよ!」
「お、おぉ……まあ考えとくか」
「はい!絶対ですよ」
そんなこんなで無事海夜の誕生日祝い?は無事に終わり。ってこれ俺のお祝い。感謝も入っていたんだっけ?まあそれはいいか。って。俺なんか忘れてない?気のせいか。
っかなんか回転寿司一緒に行くことになった気がするが。どうなることか。
そして今気が付いたが食べ終わってからの方が結構長く海夜の部屋で話してたかと思う。この部屋結構居心地がいいからゆっくりしてしまった。
自分の部屋に戻ったら帰ったらもう23時を過ぎていた。高校生の部屋に大変長くお邪魔してしまったとさ。今度悪かったと言っておこう。海夜も1人のんびりしたかっただろうに。と思いつつ。
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