第10話 Hopes and ruins


「ふう……」


 全盛期ほどではないが、ずいぶんと力は戻っている。これならば、いけそうだ。そう安堵していたリアの元に近づいてきたソールは、少し興奮した様子でリアへと声をかける。


「すごい! すごいよ! リア!」


「そうかなあ…… えへへ!」


「……でも、呪いは完全には解けなかったみたいだね……」


 少し残念そうな様子でそう口にしたソール。魔法の力は戻ってきた者の、姿までは戻らなかったリアだったが、それでも、前進することには前進した。これならば、このモンスターが犇めく世界でも十分に生き残っていくことも出来よう。確実にリアは希望が見えてきたのだ。


「大丈夫だよ! ありがとうソール! 呪いを解く方法はまた考えれば大丈夫だよ!」


 笑顔でそう口にしたリアに、ソールもまた笑顔を浮かべる。


「うん!」


 そう、きっと大丈夫だ。たとえ姿が変わっても、そして、かつての仲間を失っても、僕にはこの魔法と、そして、新たに得たソールという仲間がいる。きっといつか、子の呪いを解く方法も見つかるだろう。だから、きっと大丈夫。


 そう思いながら、リアはソールと共に、ダークドラゴンのいる洞窟を後にしたのだ。



……………………………………………



「今日から、新たにこのパーティに入ってもらうことになったクシャルだ。彼女にはリアの代わりに活躍してもらう!」


 ロイがリアの代わりに連れてきたクシャルという女性。フードに身を包んだ神秘的な女性に、アランとガリムも喜んでいた。


「ああ、よろしく!」


「ええ、よろしくね……」


 差し出された手にゆっくりと手を伸ばしたクシャル。怪しげな笑みをうかべながら、手を伸ばすクシャルだったが、まだこの時はロイも、アランも、そしてガリムも誰一人として、この先のパーティに待っていた結末を予想だにしていなかったのだ。


 数日後、王都を衝撃のニュースが包み込むことになろうとは、この時点ではまだ誰も知らない。


――ロイ率いるパーティ、全滅。ロイ、アラン、ガリム、3名の死亡が確認。残る一名の亡骸は見つかっておらず。


 そのニュースに王都の誰もが驚いた。


 探索隊がパーティの元に向かったときには、もうすでにアランとガリムは息絶えており、そして、ロイ自身も虫の息だったらしい。そして、最後にロイは、


「リア、申し訳なかった」


 小さな声でそう口にして、静かに息を引き取ったとのことである。

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少女になる呪いを受けてパーティを追放された俺、仕方無いので魔法少女として生きていきます 惟名 瑞希 @yuzuno66

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