第3話 呪いの解き方


「どうして……」




 ソールは、なおも神妙な面持ちを浮かべたまま、私の方を心配する素振りを浮かべ、話しかけてきた。




「見たところ…… あなたにかかっている呪いはとても大きなもの。あなたはいったい……」




 答えに詰まっていると、ソールは慌てた様子で、再び笑顔を浮かべた。




「言いずらいこともあるよね!辛い思いをさせてたらごめんなさい!あなたの呪いを完全に解くというのは難しいけど…… 私にアテがあるの!どう、一緒に来る気はない?」




 一緒に来ると言っても、大変ありがたい話ではあったが、正直人間不信に陥りそうな今の俺にとってはすぐに決断できないというのも事実である。確かに俺を助けてくれたのは事実だし、見たところどうにも悪い様には見えないが…… どうして呪いのことを知っているのか。それだけが心に引っかかって仕方が無かった。




「ごめんね! 急に変なことを言ってしまって! 今日は色々あったでしょ!ゆっくり休んでまた落ち着いてからで大丈夫だから! あなたを待っている家族もいるでしょ?」




 再びソールは慌てながら、そう口にした。だけど……




「わ、わたしには家族はいないんだ…… 帰っても1人…… 辛いことばっかりで…… 呪いまで受けて……」




 どうして、こんな目に合っているのか。目の前にいるソールに言ったところで仕方の無いことだというのは理解はしていた。だけど、やっとこんな姿になってしまった俺に優しくしてくれる人と出会えた安心からか、今まで何とか耐えていた堰が外れてしまったかのように、次から次へと弱音を吐き出してしまった。




「ごめんね……! 違うの! あの…… だから! えーと! そうだ!今日は私の所にお泊まりに来ない? それがいい! そうしよう!」






………………………………………






 俺はソールに案内されるがままに、ソールの家へと来ていた。街から遠く外れた森の近く、そこにソールの家はあったのだ。




「ついたよ! リア! 自分の家だと思ってくつろいでいってね!」




 ソールは笑顔を浮かべ、私にそう言ってくれた。




 さっきまでつい、取り乱してしまい、情けないところを見せてしまったが、大分俺も冷静さを取り戻しつつあった。ソールは温かいミルクを2つ用意して、一つを私の前へと静かに置いてくれた。




「ソールありがとう…… でもなんで、見ず知らずのわたしにそんなに優しくしてくれるの?」




「うーん、リアからは、私と同じようなものを感じたからかな!放っておけなくなっちゃって……」




 少し、気まずそうな様子でソールはそう笑顔で私に答えを返してくれた。ソールの過去に何があったかは、この際触れる気はなかった。今の俺には、優しくしてくれるというそれだけで十分だったから。




「リア、あのね! リアの受けている呪い、おそらくは魔法が使えなくなる呪いだと思うの! リアはダークドラゴンって知ってる?」




 ダークドラゴン、Aランクモンスターの一種。その血には解毒作用があると言われ、高値で取引されていると言うことは知っている。昔の俺ならば、倒すこと自体はそんなに難しくはないだろうけど……




「そのダークドラゴンの血なら、解毒作用と解呪の効果があるらしいの!もしかしたらリアの呪いにも効くかもしれない……」




「でも、ダークドラゴンって、高山の奥地にしかいないんじゃ……」




 そう、ダークドラゴンはその生息地域が過酷な環境故に、Aランクになっていると言っても過言ではない。今の俺の身体ではたどり着くのも難しいだろう。そして、ソールはここで思わぬ提案を俺にしてきたのだ。




「だからね!一緒に行く気はない? リア?」 




 俺は耳を疑った。一緒に行くって言ったよな……?




「ソール、気持ちはありがたいけど…… それをするメリットがソールにはあるようには思えないんだけど……一体どうして?」




 そう、命の危険があると言っても過言ではない場所に、見ず知らずの俺のためにソールが一緒に行くという理由が俺にはわからなかった。だが、ソールは何も言わずに笑顔を浮かべた。




「困っている人がいたら、助けたい! 私もあなたを助けたいから助ける! それじゃ駄目かな?」




 どこまで信用して良いのかわからなかったが、俺にはメリットしかない提案である。乗らない以外には考えられなかった。




「ありがとうソール!本当にありがとう!」


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