第2話 不登校生活に幕引きを!part2
校舎を出ると俺は物凄い数の歓声と罵声に包まれることとなった。
歓声は黄色く、罵声は嫉妬の意がこもったものだろう。職員室の無機質な空間とは打って変わってカオスな空間へと足を踏み入れることとなった。
「予想はしてたけどここまでとはな」
超高校級の高スペックな生徒が三ヶ月振りに登校してきたんだ、女子生徒は舞い上がるだろうし、男子生徒は俺に怒りを抱くだろう、いやそれ以上のものを感じさせる罵声もあるな。
まあ、どんな形であれ注目を浴びるのは悪いものじゃないななんて臭いことを考えて、色んな戦略が入り乱れた包囲網をくぐり抜けていく。ただ100~200人はいるだろうか、そんな数を振り切るのは不可能かと思っていたその時。
「たっくんこっち!!! 」
聞きなれた声は俺の幼馴染雨宮汐里のものだった。
ただ登校下校しただけでこの盛り上がりだ、当然友達なんて作ることのできない俺は唯一心を許している人間である汐里に今日満を持して登校をすることを伝えていた。
「おお!! 今日も綺麗な茶髪と可愛いお顔が眩しいな」
「馬鹿な事言ってないの~。いっつも拓夢はからかうんだから…」
わずかに紅潮した頬を見逃さなかったもののそこには触れないでおこう。
「汐里、軟式テニス部のコートの裏の抜け道から外に出よう」
俺達は一学期・二学期から定番となっている逃げ道を選択した。
「うん、でもやっぱ拓夢は凄いね! 学校に来るだけでこんなに盛り上がるなんて!」
「そんなことはない、それより助けてくれてありがとな。汐里がいなかったら当分帰られなくなるなくなるところだったよ」
「ううん、拓夢が久しぶりに学校に来るって聞いてから嬉しくって何か手助けできないかなって思ってたから! 」
「お前は俺が学校休んでるときもずっと支えてくれてただろ」
「幼馴染だもん、当たり前でしょ……? とりあえずもう学校出ちゃおっか! 」
汐里はこんな感じでいつも俺を誉め、手助けしてくれる。だが、俺からすればいろんな意味で人気者な俺の手助けをしている汐里の方がすごいと思う。
こんなことして女子から僻まれたり、男子からビッチ呼ばわりされてしまうのではないかと考えないのだろうか?
汐里の優しさに甘え切ってわざわざ登校すると伝え、あわよくば助けてもらおうと打算的な考えをしている俺とは正反対な彼女はきっと100%の善意で手助けをしてくれているのだろう。
だが自分の損得より他者の利益を優先してしまうのは汐里の最大の長所であり最大の欠点なのかもしれない…。
「ここに一緒に来るのも久しぶりだな」
「うん、冬休み前以来だよね~。また一緒に来られるようになってよかったよっ! 」
普通なら何で休んでたかなど聞きたいはず、けれど汐里はそんな野暮な質問はしない。俺が自ら話したくなるまではそっとしておいてくれるんだろう。
ごめん、ごめんな汐里。俺が学校を休んでいた理由それはそこまで深刻なものではないんだ……。そこまで深刻なものでないどころかダサすぎて墓場まで持ち帰るつもりですらいるんだよ。
「汐里、まだ言って無かったが今日は進路の話があったから登校してきただけで明日から夏休み前まで休もうと思ってるんだ」
「そっか、寂しいな。でも今日来れたことが偉いよっ! 休んでる期間の授業のノートとかは私が届けるから大船に乗ったつもりでいて! 」
汐里は高校生離れした胸を叩き自信満々な笑顔で言った。
可愛い、可愛すぎる。こいつが幼馴染じゃなかったらきっとこの数十分の間に100回は告白してしまっていると思う。
「そのつもりでいるよ、いつも助けられてばかりでごめんな」
「謝って欲しくて助けてるわけじゃなくて私がしたくてしてるだけだから気にしないでっ!」
汐里の優しさに癒されつつ、他愛もない会話をしながら隣り合う俺たちの家へとむかった。
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