第134話従妹美代子との会話

「そう言われてもね」

翼は、少し厳しめな口調に切り替える。

「万が一、美代ちゃんのご両親が、僕のアパートに泊ることを許したとしても」

「もちろん、従妹関係であるから、との理由だよ」


美代子

「うん・・・」


「梨乃さんと沙耶さんのご両親は、絶対認めない」

「それ、わかるよね」

「大切な娘だよ、友達の従兄のアパートに泊りましたなんて、それは僕が親でも認めない」

「好き嫌いの問題でなくて、間違いがあると、ないとかの話でもない、論外」


美代子が「うん・・・」と困ってしまったようなので、翼は語調をやわらげる。

「僕からも、叔父さんと叔母さんに善後策を相談する」

「少し時間が欲しい、いいかな」


美代子は、情けないような声。

「ありがとさん、翼兄ちゃんだけが頼りや」

「ほんま、冷静や、翼兄ちゃん」

「うちら、気ばかり焦ってしもうて」

「とにかく、ジメジメした京都から、逃げたくて自由になりたくて」

「ちょっとしたことでも、世間様の目を気にして、気にし続けて、それがもう嫌や、耐えられん」


話が長くなりそうなので、翼は話題を変える。

「みんな元気?」


美代子

「マジに頑固なくらいに元気や、うちの両親は」

「2人ともアンドロイドや、人間やない」


翼がプッと吹くと、美代子。

「梨乃も沙耶も、翼兄ちゃんにゾッコンや」

「とにかく一緒に並んで歩きたいと」

「昨日も服を買う言うてな、選ばされた」

「翼さん、どんな色が好きやろかとか」

「ミニスカがどうとか、足太で短足なのに」

「胸を強調するとか、たいしたことないのに」


翼は、また答えが面倒。

「三人とも美人と思うよ」

「でもさ、そういう外面だけでなくてね」

「中身をね、頼むよ」


美代子は、理解したようだ。

「そやなあ、西陣のお嬢様みたいになっても」


翼は気になった。

「また、あの人、何かあったの?」


美代子は小さな声になる。

「えっとな、あの一家、相当がっかりして」

「何でも翼兄ちゃんとのお見合いでの不始末が、何となく伝わってしもうてな」

「大恥や、結局、馴染みの客も離れたとか」

「まあ、馴染みでなければ、入らん店やけどな」

「それでな、例の高飛車娘、下を向いて歩いとる」

「顔もやつれた感じや」


翼は、困惑。

「今さら、どうにもならないけれど」

「京の街では、再出発とか難しいだろうね」

「いつまでも、陰口を言われるかな」


美代子は突き放した言い方。

「まあ、今まで他を見下し放題の罰や」

「その罰は、負ってもらわんとな」


翼は「これから都営線に乗る」と理由をつけ、美代子との話は、一旦終わった。

美代子からは、「何とかして」との、再びのお願いがあった。

翼は、また胃痛が始まっている。

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