第128話松田菜々美(3)菜々美は深く反省。

菜々美はいきなり泣き出した。

「ごめんなさい・・・犯罪かな」

「我慢できなくて」

「年上なのに・・・無理やりに」

「大恩もあって・・・縁も深くて・・・ごめんなさい」

「とんでもないことを・・・」


翼は、まだ息が荒い。

目がくらんでいる。

言葉は出さない、いや、息が苦しくて出せない。

そっと菜々美の手を握る。



翼は冷静な顔に戻った。

「さて、新作とは?」

菜々美は、まだ涙目。

「全然、浮かばなくて・・・困っていて」

翼は確認。

「ホテルでの新作ですよね」

菜々美

「うん、そうなんだけれど、それが雑誌にも」

「泊り客も食べると」

菜々美

「それは、うん、当然」


翼は、少し恥ずかしそうな顔。

「愛し合う二人が、美味しく食べる、すんなりと身体に入る」

「そんなコンセプトのケーキは?」

「薬膳効果を持ちながら、見た目も食欲をそそる」

「見慣れた安心感も必要」

「それでいながら、身体も心もリフレッシュさせるような効果」


菜々美の顔がパッと輝いた。

「そうね、そのアレンジ、面白い」

「精力増強か・・・」

「バナナ、卵、バニラ、アーモンドとかナッツ系かな」

「カカオも工夫して」


翼は、提案。

「定番ですが、アーモンドとチョコレートの見た目はシンプルなケーキ」

「口の中では重くなくて、香りを重視」

「華やかなバニラ、新鮮なミルクと玉子、バナナも工夫次第で」


その提案の後は、二人で真面目にケーキ作りに専念。

菜々美

「翼君、手先が器用で、動きが速い」

「でも、素人で学生、口だけです」

菜々美

「気をそそるなあ、マジに」

翼は横を向く。

「よくわかりません」


ケーキが出来上がると、二人で試食。


菜々美

「いい感じ、ホテルで出せる、ありがとう」

翼は、満足していない表情。

「まだまだかな、香りが弱い」

「チョコレートの味が、少しボケている」

「やはり試作を最低30は作りたい」


菜々美は、目を丸くする。

「ご実家ではそれほど?」

翼は頷く。

「30は最低。通常は100は越えて、200までもある」

「それで、夜更かしになる」

「納得できないものを、お客様に出すわけには・・・」

「その場の感覚で美味しいは、家庭料理」

「高いお金を出して、期待して来られる人には、練りに練った味に」

「それが誠意と思うので」


菜々美は、翼の言葉を聞きながら、自分の短慮が恥ずかしくて仕方がない。

「無理やり誘って、押し倒して」

「でも、この子は、懸命に嫌味なく応じて、満足以上の幸せをくれて」

「この子は、私をどう思っているのかな・・・恥ずかしいお姉さんとか、女とか?」


菜々美は、また瞳を潤ませている。

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