第127話松田菜々美(2)菜々美は翼を押し倒す。

「え?何を?菜々美さん!」

動揺した翼は、菜々美から逃れようと、腰を引く。

しかし、とにかく柔らかく、身体が沈み込むような革製のソファ。

翼は、そのまま身体のバランスを失い、仰向けになってしまった。


「きゃっ!」

翼の動きにつられて、菜々美も翼の身体の上に、そのまま、密着して倒れ込む。


「あの・・・」

翼は、声がかすれた。

とにかくドキドキして、声が出ない。

松田菜々美の豊かな胸が、自分の胸にしっかりと密着していることにも、気がついている。

それでも、少しでも、声をかければ、松田菜々美は身体を離すと思った。


しかし、そうは進まない。


松田菜々美は、赤い顔。

「ふむ、何か、いい感じ」

「あのね、いいお肌だなあと思っていたら、触りたくなってね」

「そしたら翼君が倒れちゃって」

「翼君のドキドキが、私の胸にも伝わって来て・・・すごくね・・・甘い感覚なの」


翼は、懸命に抵抗。

「こうなるのが目的ではないと思います」

「新作メニューでは?」


松田菜々美は、それでも翼から離れない。

「ねえ、もう少し、こうしていたい」

「そうでないと、モヤモヤして、落ち着かないもの」

そして翼を軽く睨む。

「もしかして、私の身体が重たいとか?」

「確かに最近、ボリュームが」


翼は、また答えに詰まる。

「そんな・・・以前の菜々美さんは知りません」

「答えようがないでしょ?」

「あ・・・重たくはありません」


菜々美は、その答えでは納得しない。

「私は、すごくこうしていて、いい感じ」

「翼君は?」

と追い打ちをかける。


翼は観念した。

「素直に言えば、柔らかくて、いい感じです」

そこまで言って、懸命に冷静に戻そうとする。

「そろそろ、起きたい」


菜々美は、首を横に振る。

「もう少し、このまま」


翼は、予想外の展開で、もはや打つ手なし。

そのまま、目を閉じてしまった。


そんな時間が、どれほど経過したか、わからない。

菜々美は、ゆっくりと翼から身体を離した。


翼も身体をようやく起こす。


菜々美は、まだ顔が赤い。

「ごめんなさい、気持ちが高ぶって」

「可愛くて仕方なくて、襲っちゃった」


翼は、菜々美の顔が見られない、下を向く。

「驚いてしまって・・・」


菜々美は、再び、翼の手を取った。

「ねえ、まだ、おさまりそうにないの」

「欲しい」


翼は、「欲しい」の意味に、困惑。

しかし、かわし続けることも難しいと、感じている。

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