第81話京都店にて(1)

美代子の予想通り、翼は京都店に到着した途端、大騒ぎの渦の中。


「若!お懐かしい!」

「翼様、大学生に?ご立派に」

「あーーー美男や、惚れ直します」

「手を握って・・・うれしい!」

「もうね、指折り数えてこの日を」

・・・・あまりにも大騒ぎなので、省略。


美代子

「老若男女関係なし、八方美人の翼兄ちゃん」

梨乃

「初めて話したけど、話しやすいわぁ・・・お兄さんでも彼氏でもいいな」

沙耶

「うちは、じっと待って耐える妻がいい、残り物に福や」


女子高生三人の反応はともかく、翼は京都店のトップである叔父晃弘と叔母由紀美に挨拶。

「ただいま、到着しました、お待たせしました」


叔父晃弘は苦笑い。

「娘たちに捕まったんかいな、大変やったな」

叔母由紀美は、クスクスと笑う。

「ほんま、しょうもないお嬢様方でなあ、翼ちゃん、苦労したやろ?」


その後は、京都店の会議室で、叔父夫婦と土日の打ち合わせ。

晃弘

「まずは昼ごはんで、夜まで自由でかまわん」

「少し歩きたい場所もあるよ」

由紀美

「あら、どこへ?」

「大原に行きたいなあと」

晃弘

「それは、また何で?」

「突拍子もないけど、少し農家を見たくて」

「この店に漬物とか、野菜をいれている農家さんと話をしたい」

由紀美は目を丸くする。

「へえ・・・翼ちゃん、何か考えとる?」

「珍しいなあ、翼ちゃんから、そんな話」

「実家にいた頃、産直市の農家さんと仲良しになって」

「新鮮な野菜の調理を教わって、それで食べて美味しくて」

「あの味をお客様にもと」

晃弘の目が輝いた。

「面白いなあ・・・それ・・・」

「そうなると・・・自家菜園で、素材か」

「料理人も勉強になるな」

由紀美

「枝からもいだばかりのトマトは、上手い」

「これは・・・忘れておったなあ」

「何も、わざわざ買う必要もなく、趣味と実益やな」

「将来的には、そうしたいなあと」

「まだまだ思いつき、だから大原に行って、実際の農家さん話をして」

「できれば、指導してもらおうかと」

晃弘

「そういう話やと、わしも行きたいなあ」

由紀美

「いや・・・うちも行きたい」

「あの女子高生三人は、行かないよね」

晃弘

「まあ、行かんやろ、都会をチャラチャラ歩きたいだけや」

由紀美

「副支配人にまかせて、三人で農家訪問しましょう」

「もしかすると、新鮮なタケノコが食べられるかな」


叔父夫婦の目が、また輝いている。

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