第80話女子高生三人との会話 お迎えが来る

美代子が話題を変えた。

「翼兄ちゃん、ちらっと聞いたけど」


翼は、「うん」とだけ応え、美代子の言葉を待つ。


美代子は、嫌そうな顔。

「西陣の可奈子さんやろ?」

「お店の味見と称して、売り込みや」


美代子の連れの梨乃と沙耶も顔をしかめた。

梨乃

「マジに、お嬢様気取りで、あかんわ、あんな人」

沙耶

「そやなあ・・・人を見下す、大して変わらんのに」


翼は「やはり知られていたか」と、ため息。

「ところが、全然、覚えていなくてね」

「兄さんからも言われたけれど、当たり障りなく、にする」

「余計な表情も作らず、余計な話もしないよ」


美代子も頷く。

「翼兄ちゃんやから、大丈夫と思う」

「厳しい時は、メチャ厳しい」

「やさしい時は、ふかふか羽毛布団やけど」


梨乃が翼の顔をじっと見る。

「こんな可愛い顔して?厳しいの?」

「でも、京都のネチャネチャ男より、いいかも」


沙耶も同感らしい。

「うちも、下心がわからん京都男は嫌いや」

「口数ばかり多くて、何も本当がない」

「甘い顔して、実はイケズや」


翼が時計を見ると、既に午前10時近い。

「美代ちゃん、そろそろ京都店に」

「挨拶をするとか、荷物の整理もある」

「それから、東京見物は考えておく」

と、ここで、梨乃と沙耶は帰ると思った。

しかし、どうも、そうではないらしい。


美代子

「お迎えを呼ぶよ、それに全員が乗る」

梨乃

「お昼は洋食?」

沙耶

「雷おこしと、うなぎパイも楽しみや」


翼は、苦笑。

「ここで、話した意味ある?」

「そのまま京都店でよかったのに」


美代子は首を横に振る。

「翼兄ちゃん、店に入ると、あちこち挨拶やろ?」

「人気者で囲まれて、まともに話出来ない」

「だから、若いうちらで独占したの」


美代子の言葉通りに、お迎えは5分くらいでホテルに入って来た。

馴染みの運転手鈴木が、翼に頭を下げる。

「若、京都店一同、首を長うしてお待ちしとります」


翼は、運転手鈴木と握手。

「鈴木さん、お久しぶり、元気そうで」

「今夜でも、ゆっくりお話しましょう」

「奥さんも元気?」


運転手鈴木は、相好を崩す。

「ありがたいことで、そのお声かけ」

「ホッとしますわ、若のお気持ちは、いつもやさしい」

「はい、楽しみにしています」


その後、一行は、実は至近距離の京都店に、車で向かうことになった。

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