第57話翼と料理研究会のお姉さんたちとの関係が強まる

翼は懸命に表情を柔らかくする。

「ああ、たいしたことない」

「兄さんから、仕事を言われただけ」

「まあ、企業秘密になるけれど」

どうしても「女性に逢う」とは言い辛いので、「企業秘密」との表現を使う。


翔子は、翼の顔をじっと見る。

「それなら、仕方ないけどさ」

「体調悪くなったら言いなさいよ」


翼が頷くと、他のお姉さんたちからも声がかかる。

真奈

「翔子に言い辛かったら、私が聞きます」

美紀

「いや、私がやさしく・・」

恵美

「こらこら・・・取り合ってどうするの?みんなの宝物なのに」

美幸

「翼君、みんな君のファンなの、力になるよ」


翼は、思わず笑顔。

「ありがとうございます、ドキドキしてしまいました」と頭を下げる。


さて、そのまま昼食の時間になった。

豪快な大きさの海鮮パエリャだった。

お姉さんたちは、モリモリ食べるし、翼もつられて食が進む。


美幸

「どう?翼君、母の得意料理だけど」

「はい、海鮮のエキスがしっかり、サフランライスも程よい味付け」

「元気が出る味です」

真奈

「翼君のお褒めの言葉っていいなあ、安心する」

美紀

「私は自信ない、教えてもらいたいくらい」

恵美

「美紀には親父が教える、翼君は私がゲットする」

美幸

「こらこら、品が無い・・・ゲットなんて」

翔子は話題を変えた。

「ところでさ、さっき映像の話があったけれど」

「何か面白いアイディアはないかな」


翼は、少し考えた。

「うーん・・・何が何でも、ドラマにする必要もないかな」

「美しい風景の映像・・・美しいとか・・・そうでないかは、人によって違うけれど」

「それと、映像に合わせる音楽」

「クラシックにするか、ジャズ、ロック、ポップス、エスニック、いろいろ千差万別」

「例えば、明日香村の映像に、万葉集の歌を」

「そうなると、どんな音楽かなとか」

「京都の寝殿造を映像にして、光源氏と朧月夜の密会、和歌を映像にのせて、音楽は琴と笛でとか」


その翼の考えにお姉さんたちは、びっくり。

ザワザワと話し出す。


「すごい・・・さすが・・・」

「芸術的だ」

「可能性が、すごくある、悩むほどある」

「でも、面白いよ、これ」

「すぐにやりたくなって来た」

「古典だけでなくてもいいよね」

「啄木もいいなあ、好きなの」

「それもいいし、岩手花巻の風景に・・・」

「あ!雨にも負けず?いいかも!」

「ねえ、郷土料理研究会兼、映像研究会にしない?」

「うん!やりがいがある!」


翼は、思い付きで言ったことが、盛り上がってしまい、相当に困惑している。

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