第56話お姉さんたちと懇談中、兄晃からの電話
翼も緊張感がやわらぎ、お姉さんたちと雑談をしていると、スマホに着信音。
兄の晃からだった。
翼は、席を外して、兄と会話。
晃
「今、忙しいか?」
翼
「翔子さんと、そのお友達の人と一緒だよ」
晃
「ああ、翔子ちゃん?」
「特にお前は小さい頃にお世話になったから、お前も恩返ししろよ」
「それから、ごめんな、お前の予定を知りたくてさ」
翼は、少し緊張する。
「うん、何かあるの?」
晃
「土日は空いているか?」
翼は素直に答える。
「えっと、まだ特にないよ」
晃
「京都の店に行ってもらいたい」
「味見と、人に逢う」
翼
「わかった、何とかします」
「ところで、逢う人は?」
晃は、少し間をおいた。
「西陣の料亭のお嬢さん」
「小さな頃に一緒に遊んだかもしれないな」
翼は懸命に思い出そうとする、しかし、浮かばない。
「思い出せないと失礼かな」
「でも、思い出せない」
晃は、少し笑う。
「ああ、あの時は、いろんな女の子がいたから、その中の一人」
「思い出そうと思っても無理かも」
翼
「味見は、京都の店で・・・泊まるのもそこで?」
晃
「ああ、そうなる」
「とりあえず、お前のOKを連絡するよ」
「また、夜にでも連絡する、もう少し細かく」
翼は、晃との話を終え、お姉さんたちのところに戻る。
翼
「実家の兄さんからでした」
翔子が懐かしそうな顔。
「晃さん?やさしくて頼りがいがあって」
「奥様もきれいで」
部長の美幸が、話を戻した。
「とりあえず、都内の物産館巡り」
「それから映像は、検討だね」
真奈
「物産館の一覧表を作って・・・」
美紀
「それで担当者を決める?二人ずつぐらいがいいかな」
翔子
「土日は、混むのかな、平日に行く?」
美幸
「ゆっくり話を聞くなら、そうなるよね」
翼は黙っている。
一日くらいは、付き合うかなと思う。
何しろ、物産館巡りは、翼が言い出したことでもあるから。
しかし、兄との話が、重い。
「味見か・・・京都の店か・・・マジにやらないと」
「西陣の料亭の娘さんねえ・・・顔もわからず」
「これもお見合い?単なる顔見せ?」
「夜の兄さんの話を聞かないとわからないけれど」
翼の表情が変わっているのを、翔子は見逃さない。
「ねえ、大丈夫?」
翔子は、不安そうな顔で翼に声をかけて来た。
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