第28話お姉さんたちの相談 翼の身分 翔子の不安

さて、心春にとっては「大学下見デート」、翼にとっては「面倒だけれど仕方ないお付き合い」で一緒に歩いている時間、吉沢恵美は翔子、真奈、美紀を、実家でもある洋食店に呼びつけ、話し合いをしている。


恵美

「翔子、私も翼君とデートしたい、貸して」

翔子

「恵美さんまで?翼君は大変だよ」

真奈

「私も、また歩きたいなあ、可愛いし気が利くし」

「一緒に歩いていると、別の世界、全てを忘れられる」

美紀

「真奈も?私はドキドキして眠れなかったもの」

「ああ・・・逢いたいよ」

翔子

「真奈も美紀も迫り過ぎるからそうなるの、手をつなぐまでって言ったでしょ?」

真奈

「だってさ、いい感じだもの、翼君って。トロトロになる」

美紀

「うん・・・それ・・・マジにそう」

「時々、イタズラすると、やり返してくるの」

「でも、翼君がスキを見せた時に、また仕返し、真っ赤になって可愛いし面白い」

恵美

「うーん・・・私もイジリたくなった・・・」

翔子

「だめ、翼君のお母さんから、お願いしますって言われたのは私なの」

「翼君を困らせるようなことはだめ」

真奈

「そんなこと言って、翔子は酔っぱらって翼君のアパートに泊まったんでしょ?」

「しかも、翼君のパジャマ着て、あやしいよ、言い訳に無理があったもの」

美紀

「同郷で幼なじみ?そんなのに縛ってはいけない、認めない」

恵美

「ねえ、とにかく次は私が予約」

「翔子が嫌なら、私が翼君に直接予約するよ」


翔子は「うーん・・・」と下を向く。


真奈

「ねえ、郷土料理研究会はどうするの?誘おうよ」

美紀

「・・・取り合いにならない?私たちだけでもトラブルになるのに」

恵美

「順番・・・先着順にするとか?」


翔子はムッとした顔。

「ダメだって、一日体験入部くらいとは言ったよ」

「でもね、デートを目的に誘うの?」

「それこそ、不純と思う」

「翼君って、あれで真面目だから苦しむ、苦しませたくないよ」

恵美

「でもさ、あの味覚はすごいよ、半端ではない」

「郷土料理研究会に入っても、エース格だよ」

「デートはデートとして」


真奈

「そんなにすごいの?私はオムライスだったからなあ」

美紀

「翼君に緑茶の美味しさを教わったけれど、何かあるの?」


恵美

「翔子、もう言っちゃったほうがいいよ、あの子の身分」

「いずれわかるしさ」

翔子は「仕方ない」といった顔。

「翼君の個人情報だよ、私が言ったとは内緒」としながら、「翼の身分」を、かれこれと明かす。


真奈と美紀の表情が変わった。


真奈は胸を懸命におさえる。

「えーーー?あの超名門ホテルグループの?」

美紀は、先走る。

「結婚したら玉の輿?」


翔子

「でも、長男ではないしさ、継承順位2番くらい」

「ただ、味覚は子供の頃からすごくて、ずっと味見役していたみたい」

「あのホテルの料理の味を決めて来たのは、翼君だよ」

恵美

「親父が、翼君にぞっこんでね」

「何でも親父の修業時代の恩師と翼君が仲良しで、それもあって顔を見たくて仕方がないの。毎日でも通ってもらいたいとか」

「まあ、それはともかくさ、一度郷土料理研究会に呼ぼうよ、それで他のメンバーの様子を見る」


恵美の「まとめの意見」で、真奈と美紀は頷く。

ただ、翔子も頷きながら、かなりな不安を感じている。

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