終了
打ち上げ
「ほれ大将、早くしろって」
「待って待って。…えー、では皆様飲み物は行き渡りましたでしょうか?」
アルに急かされて、ビールで満たされたコップを手にひとり立ち上がる旭が皆を見渡す。
何かしらの案件を片付けるたび、彼ら『突貫同盟』はこうして打ち明けの飲み会を開いていた。
異世界という稀有な事態ではあれど、今回もその例に漏れない。
「此度は普段から難問難題ばかりの我々同盟の抱える案件でも一際大変なものでした。その労苦を負担させてしまったこと、申し訳ないと思う以上にとてもありがたいと僕は常日頃から」
『かんぱーい!』
「ちょっとくらい待てないかな君たちはさあ!?」
我慢ならず杯を打ち鳴らし口をつけてしまった面々に深い嘆息を零し、旭もまたビールを飲んで腰を落ち着ける。
「大将の話いっつもなげーんだよ、一言で済ませてくれや」
「じゃあアルならどうするのさ?」
「お疲れ!乾杯!」
「えぇ…」
「しかし結局全員出る羽目になったわねー」
「いいんじゃない、平等になって」
『レン?わたくしを働かせておいて何おふざけたことを仰ってるの?』
「とりあえず土下座して靴舐めましょうか」
「秒で態度変えんのめっちゃ器用ねアンタ」
「……、はい」
「はい…?」
「……さかづきが、かわいてる」
「あっ。これはどうも…」
「迅兎、何故君は童女相手にそんな腰が低いんだ」
「いえ、この方に何かあるとアル殿が激怒するのでつい」
(あの妖魔の過保護っぷりがよくわかる返答だったな…)
「……カナ、は?」
「ああ。私は泡盛をこの皿に開けておいてくれ」
(
多種多様な人外の所属する『突貫同盟』の溜まり場でもあるアル・レン・白埜の共同部屋は常に宴会用に多くの酒と割り材が置いてある。みるみる内にボトルや缶が空いていく。
「次は大将の倅も連れて来ようぜ。いい経験になんだろ」
「いやそれはどうかな…。あの子も平和な日常を望んでるから巻き込まない方がいいと思うよ」
「ていうか対策、立てとくべきじゃない?あんなのがまた異世界から来るようならそれなりの対抗手段は必要でしょ」
「音々殿の言う通りかと。あれらはこちらとは違う方式、形式の理に則った力を振るいます故。初見で打破するのは難しいかと」
音々と迅兎に指摘され、白埜から酌を受けていた旭も無精髭を撫でながらうーんと唸った。
「あ?必要ねェだろ、なんもわかんねェとこからぶつかんのが面白ェんだからよ」
「確かにそうだね。じゃあ各々が交戦した人達の特性を挙げていこうか」
「おいガン無視してんじゃねェぞぶっ飛ばすぞ」
アルの不満はまたしても総員からスルーされ、打ち上げの後半は反省会という名の異世界対処会議へと移り変わる。
そうして、幾度もの戦いを乗り越えてきた盟友達の夜は更けていった。
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