第5話 災難
校門前で今日こそ話しかけよう。
そういえば、ここに来ると思い出すあの嫌な一日を。
一年前の入学式。
自分のクラス分けや級友との再会や出会いで浮かれて騒がしい校門の近くにいると、
「ねぇ私のこと覚えてる?」と妙に暗い声で、聞かれた。
…あーごめん忘れちゃったなぁ。君の名前教えてくれる?と、いつも通り返事をした。
「…はぁ?死ねよくそやろうっ!」
入学式にこんな言葉で罵倒されるなんて思わなかった。
僕は何故かその日、買い置きしていたコンタクトレンズが手元に無く裸眼で登校し自分も周りもぼんやりしか見えない。
ついでに白状すると今日の朝に眼鏡も足で踏み壊してしまった。なんだかコメディドラマみたいな事が起きて自分でもすごく動揺している。
学校まで無事に来ることが出来ただけ良かったと思ったが、あの女の子のせいで災難は続いている気がしてしょうがない。
「くくくっ朝から騒がしそうだね。」後ろから聞き覚えのある声がしてホッとした。
「氷室か。助かった…。」涙目になりながら振り返りまた笑われた。
自分の教室まで氷室の学生服の袖を掴んで動揺と不安を抱えながら歩いたことを忘れない。
中学から同級生の氷室が同じ学校で心から感謝した。
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