第3話「自意識過剰」

 体育の時間だった。


 私は体育を休み、クラスメイトの女子たちがグラウンドを走っている姿を見ている。

 私以外に女子が二人休んでいるけど、私とは離れたところに座っており、まるでその場にいないかのように扱われている。そういえば誰かがいったっけ、孤独はなれるものではないって……。


 二人は例の黒髪の少女の怪談を話題にしていた。結局あの後の学校の新七不思議で投票数一位は黒髪の少女が獲得していた。今もっともポピュラーな話題とはいえ、一位とは私が思っている以上に噂になっているのかもしれない。


 二人の話をそれとなく聞いていると、実害がないと思っていたその怪談にも実は一つだけあるみたいだ。


 黒髪の少女を見たら、失恋する。

 

 あんまりといえばあんまりな内容だった。

 みんな残酷なことをいう。


 二人の話をこれ以上聞きたくなくて、意識を男子の授業に向ける。ハンドボールを行っていた。本気になってやり合っているその姿を見ると男子ってやっぱり子どもだなーと思ってしまう。


 湊くんは相変わらず体調が悪いようで、見学していた。

 同じように見学しているクラスメイトと話をしているみたいだ。


 元々、肌が白いほうだけど、今では青白く不健康な顔色に見えた。


 彼女と別れてしばらくたつけど、体調がもどるどころか悪くなっている気がする。ご飯とかちゃんと食べているんだろうか。夜はちゃんと眠れているんだろうか。気になる。気になるな。湊くんが疲れた顔をしているのは胸にくるから。


 私がじっと見ていると、湊くんがこちらを見た気がした。

 

 さっ、と顔をふせ、私は言い訳をする。


 見てない、見てない、私は見てない、見てたけど、見てないったら、見ていない。

そっと、分からないように目線をあげると、湊くんはもうこちらを見ておらず、クラスメイトと話を再開していた。


 元々、見ていなかったのかもしれない。


 ……私は自意識過剰だ。


 こんなことじゃ、告白どころか、湊くんに近づけさえしない。

 その内、湊くんが彼女との別れの痛みを克服して、次の恋に向かおうとした時に、ただでさえ眼中にない私が入り込む隙間なんてこのままじゃあない。


 行動を起こす必要があった。

 やっぱりなんだかんだいって雪さんのいうことは正しい。

 

 でもまずなにから始めたらいいんだろう?

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