『ゆめみちゃんとポンポコリン』

 ゆめみちゃんは小学生。漢字て書くと『夢見』ちゃん。

みんなに夢をあたえられる人になれますようにという名前です。


 ある日のこと、学校から帰ってきたゆめみちゃんは、おおさわぎ。

いつも大事にかわいがっていたタヌキのぬいぐるみがどこにも見あたりません。

「ママ、コリンがいないよ。どこに行ったかしらない?」

「ゆめみがいたずらばかりしてよい子にしてないから、コリンちゃんはどこかに行ってしまったのですよ」


 そういえば、昨日、ぬいぐるみたちでかくれんぼをして遊んでいたんだ。

ゆめみちゃんは、おもしろがってコリンをゴミ袋に入れたりしていたことを

思い出しました。そのまま、おもちゃやぬいぐるみたちをちらかしたまま、

寝てしまったのです。もしかして、ママはそのままゴミ袋を捨ててしまったのかも。

ゆめみちゃんは家の中を探しました。どこをどれだけ探してもコリンは見つかりませんでした。


 待ちに待った夏休みが来ました。

「よい子にしていたら、コリンが帰ってくるかもね」

とママは言いました。

 ゆめみちゃんはがんばって、最初の三日間で夏休みの宿題をぜんぶ

終わらせてしまいました。

「宿題、もう全部できたよ」

「あら、すごいわね。でも、絵日記はどうしたの?」

「わたし、絵はとくいだから、夏休みの終わりの日までもう書いてしまったよ」

ほめていいのか迷いながらお母さんは絵日記を見てみました。

なんと、夏休み最後の日の絵日記には、コリンが帰ってきたというお話しが

書いてあるではありませんか。

「これは?」ママは驚きました。

「そうなるといいなあって思って書いてみたの」


 ゆめみちゃんは、一家で海水浴に行きました。

「ゆめみはえらいなあ。もう、宿題、終わらせたんだってなあ。

ぬいぐるみをほしがっていたから買ってあげよう」パパがシロクマのぬいぐるみを買ってくれました。

「コリンみたいなタヌキのぬいぐるみがあったらよかったのに。そうだ、このシロクマの名前、コリンにしようかなぁ。でも、この子はコリンじゃないし、シロという名の前にしようかな」

ゆめみちゃんは、ぬいぐるみがほしかったのではなく、もういちど、コリンに会いたかったのです。


 旅行から帰ってきたゆめみちゃんは、ママの実家に泊まりに行くことを楽しみにしていました。タヌキのコリンは、ゆめみちゃんがずっと小さいころに、ママのお兄さんがプレゼントしてくれたのでした。

「そうだ、お兄ちゃんに会えたら、また、コリンを見つけてくれるかもしれない」


 そして、実家に泊まりに行ったゆめみちゃんは、コリンがいなくなったことを

お兄ちゃんに話し、車で大きなデパートに連れて行ってもらいます。

「ここなら、きっと、タヌキのぬいぐるみを売っているかも」

ゆめみちゃんはわくわくしながらおもちゃ売り場へいそいで走っていきました。

「あった、あったよ」

 しかし、ゆめみちゃんが手にしたぬいぐるみは、タヌキではありません。

お腹が真っ黒なレッサーパンダでした。顔もすこしちがっていました。

「コリンじゃないんだね。子タヌキのぬいぐるみじゃないんだね」

とても残念で、泣きだしそうになりました。


「お兄ちゃん、コリンはもうどこにもいないのね?」

「そんなことはないよ。コリンはきっと、ゆめみちゃんのことをずっとみまもってくれているんだよ。また、きっと、いつかどこかで会えるとおもうよ」


「コリンは、きっとどこかにいるんだ。また、会えるんだ」

そう思うと、ゆめみちゃんは、なんだか元気になってきました。


 それから、どれだけ月日は流れたでしょうか。

ゆめみちゃんの下に弟と妹も生まれて家族はとてもにぎやかになりました。

ゆめみちゃんも、ママやぬいぐるみに甘えてばかりいられません。

弟や妹たちの立派なお姉ちゃんとして、元気に明るくがんばってます。


 また、今年も夏休みが来ました。

パパの車に乗って、家族みんなで海水浴に行きました。

いっぱい走って、いっぱい泳いで、おなかが空いたので、

レストランへと向かいます。

すてきな建物の窓のところに、カーテンの向こうにかわいらしい

ぬいぐるみたちがこちらを見て並んでいました。


「あっ、コリンだ。」そこには、あのコリンよりもひとまわり大きいタヌキの

ぬいぐるみが、犬くんやネコさんたちと並んで楽しそうにこちらを

ながめているではありませんか。

「こんなところに居たんだね。今日もゆめみは元気でがんばっているよ」

そういいながら、ゆめみちゃんは、大きく手を振りました。

コリンも小さく手を振ったように見えました。


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