第19話、干潟

俺は東京と千葉の様子をもう少し調べることにした。

特に地下に潜られていると上空からは発見できない。

なので、低空で飛行して、音楽を流すのだ。


生存者のいる可能性があるとしたら川沿いだろう。

水と食料両方が確保できるからだ。


まず、多摩川沿いを探索する。

やはり、少数の集落が見つかった。

俺たちに合流するかどうかを確認する。


「横浜ドームの者だ。

居住エリアを提供できるが、一緒に生活しないか」


「食い物はあるのか」


「まだ十分とは言えないが提供可能だ。

当然、自分たちで作物や家畜を確保してもらう必要があるから、労働を伴う。

必要な道具はこちらで提供する」


「食料が確保できるなら合流させてもらいたい」




それと並行して、地面に埋もれてしまった太陽光発電のパネルや機器類を回収する。

火山灰や土で3m以上埋もれているのだ。


そして、横浜口も開拓して住宅を建築していく。

移住の希望者はこちらに収容する。

ドームに隣接した場所なら、水道や電気を供給できるのだ。

こうして俺は、居住エリアを広げ、住民を増やしていった。


横浜口の方が海に近い。

漁業も広げていくつもりだが、具体的にどうやればいいのか悩んでいる。

当面は、釣りをしてもらうしか手立てがないのだ。


そんな中、朗報がもたらされる。

資源ごみリサイクル施設から大量のPTが見つかったのだ。

これで、いけす用の網が作れるし、漁の網も作れる。


更にスラリンで水の中を確認してみた。

人間の関与がない水の中はとても澄んでいて、多くの魚がいた。

特に、多摩川の河口域には干潟が広がり、干潟の水棲昆虫や節足動物・貝を求めて水鳥や魚たちが集まり、豊富な漁場と思える。

具体的な漁の方法は任せるとして、情報だけは入れてやろう。


こうして、横浜口の居住エリアも広がっていった。


次に取り組むのは紡績である。

数は少ないが、羊も残っていた。

これを集めて飼育して羊毛を確保するのだ。

カイコは全滅したようだ。

というのも、カイコは完全に人手を離れると生存していけない。

自分で木にぶら下がることもできず、成虫になっても飛べない。

こんな不完全な生物が存在したこと自体が不思議なのだ。


羊毛さえ集まれば、あとは自動化できる。

こうして、横浜エリアでは衣・食・住の確保に成功した。


愛知やほかのエリアでもうまくいけばいいのだが、特に羊の確保は難しいかもしれない。

その場合は、こちらから分けてやる必要があるだろう。

化学繊維や亜麻があればいいのだが……

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