第17話、シンシア

愛知ドームのインターホンを押す。


「どちら様でしょうか」


「横浜ドームエンジニアのジャギーと言います。

情報交換がしたくて伺いました」


問題なくドーム内に通された。

自動操縦のエアーバイクが迎えに来る。


すんなりとエンジニアのものに誘導された。

愛知ドームのエンジニアも、横浜ドームと同じように、人型のアンドロイドを操っている。


「では、リンクさせてもらって良いかな」


「はい、その方が早いですからね」


コネクトケーブルをヘッドセットに接続して回線をつなぐ。


「なるほど、やはりここと同じように出生率の低下が問題となっているのか」


「ええ、同じ状況ですね」


「ほう、人工授精からのホムンクルスか。そして受精・出産に成功したとは」


「僕の子供ですが、順調に育っていますよ」


「そこのデータも提供してもらいたいのだが……おお、これか。

うむ、卵子をストックしておく必要があるんじゃな」


「ええ、完全に一からの生命創造は無理みたいですね」


「それで、ドーム外への移住か……

それは我々も検討しているところだが、どうしたもんかな」


「生身で動けるエンジニアがいないと難しいかもしれませんね」


「一人、娘がおるんじゃが、はたしてあやつにそのような事が可能かどうか……」


「必要ならば協力しますよ」


「おお、そうしてもらえると助かる。

ジャギーじゃったな、お前にも管理者権限を貸与するので、シンシアを助けてもらえるか」


こうして愛知ドームの管理者権限をもらった。


シンシアは16歳で、最後の自然出産の女性だそうだ。


「ジャギーね、よろしくお願いするわ」


「じゃあ、外の様子を確認しながら、横浜と平塚キャンプの状況を見てもらおうか。


俺は、シンシアを連れて平塚へ飛び、トムに挨拶する。


「8つのドーム以外に、生存者がいるなんて……」


「ここだけじゃないさ、なん箇所か、ドーム以外で生き延びている集落も見つけたよ」


「こんな風に家を建てて暮らすのね。

自然の……例えば雷や強風は怖くないんですか」


「別に、怖いって程じゃないさ。

自然とうまく付き合っていけば、生きてるって実感できるしな」


次に、横浜ドームの外を見てもらう。


「すごいわ。

ドームの中よりも、整然としてる。

牛や豚はドームから持ち出したの?」


「いや、愛知と同じように、ドーム内のものは全滅した。

ドーム外で生き延びていたのを集めたんだよ」

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