第16話、愛知ドームへ

俺はスラリンと愛知ドームへ飛んだ。

ところが、途中で何件もの集落を見つけた。


特に箱根と湯河原には集落ができている。

俺のデータには温泉街という情報がある。


立ち寄ってみると、みな原始的な生活を強いられていることがわかった。

電気もなく、ガソリンもない。

それでも、地下熱により温暖な気候になっているのだ。

氷期には助かったことだろう。


「この3000年の間に、何度も噴火があったのじゃよ。

それで、多くの者が命を落としてしまった」


箱根山という名前の山はない。

中央火口丘と外輪山とで構成される火山群なのだ。


「大涌谷で水蒸気爆発が起こり、溶岩と火山ガスが早川沿いに下ってくるのじゃよ。

その影響で仙谷地区はもう一つの大きな湖となっておる」


「生活で困っていることはありませんか」


「特にないのう」


「横浜ドームでも外の世界に出ようとしていますから、もし移住の希望があれば受け入れますよ」


「いや、わしらはここの生活になれておるからのう。

今更、ほかの土地へ移っても戸惑うだけじゃよ」


「わかりました。

また、顔を出しますよ」


データに残っている中央火山丘は800mほどの一つの山になり、芦ノ湖と仙谷地区の湖がカルデラ湖の様相を呈している。

ほかにも小規模の集落があったが、今日は素通りした。


富士山も噴火したようだ。

ただ、富士山の溶岩だまりはあちらこちらに分散しており、例えば樹海の噴火口が爆発しても痕跡を探すのは困難である。

宝永の噴火口の逆側がわずかに削れており、噴火した痕跡がみられる。

もし、そこで宝永噴火と同規模の水蒸気爆発があった場合、そこから東京までの西側の住民は非難したであろう。

横浜ドームの周辺から人が住民が消えたのはその影響かもしれない。


何しろ、松田付近でも40cmの降灰があったのだ。東京にも数ミリから数センチの灰が積もった。

そして、そのエリアは上空を火山灰で覆われて、真っ暗になったという。

とても、人が住み続けられる状況ではないのだ。


清水、浜松を超えて愛知へ入る。

煙が上がっているのは、集落だろう。


だが、大規模な集落は見当たらなかった。


こうして、俺は愛知ドームに到着した。

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