第15話、町が育っていく

飛行ユニットを組み込んだ4人乗りの飛空艇を作ってトムに届ける。


「悪いな、助かるよ」


「飛行ユニットも太陽光電池も数があまりないので、これ一機しか出せないけどね」


「ああ、一機あれば十分だ」


飛空艇の操縦は簡単だ。

操縦かんとアクセルペダル、それと自動・手動の切り替えと照明のスイッチしかない。


「ボディーにはジュラルミンを使っている。

コーティングはしてあるが、塩水に弱いから、こまめに掃除してくれ。

それと、外気の取り込み口があるから、間違っても水の中に入れるなよ」


「了解だ」



翌日、俺は町でドーム外で暮らす希望者を募った。

仕事は家畜の世話だ。

当然だが、報酬も出す。


家の軒数である10家族を募集したのだが、50家族以上の応募があった。

全家族と面接し、10家族を選出した。

独身者には辞退してもらった。


「警備の機械獣を設置しておきますが、何が起こるかわかりませんので注意してください。

皆さんで協力して、肉を出荷できるように頑張ってくださいね」


「「「はい」」」」


「それと、皆さんで責任者を決めてください。

自薦でも他薦でもかまいません」


「あのう、牛や豚は、自分たちで食べていいんですか」


「食料はこちらから販売しますので、勝手に食べるのはやめてください。

野菜の畑もありますから、こちらは自由にしてもらって結構です。」


住宅に隣接して売店も設置した。

日用品のほか、食料も販売する。

給料を出しているのだから当然である。



こうして、ドーム外生活の試験が始まった。

追加の家もどんどん建築していく。


外では、牛乳やタマゴは常時販売している。

しかも、ドーム内に比べれば格安である。

住民が食べ物に困ることはないはずだ。


住民が100人を超えたころから、店を開きたいとの要望がでてきた。

もちろん、店を開くものは無給である。


パン屋とか惣菜屋である。

更には、乳製品を扱う店も登場する。

チーズやバターである。


住民が200人を超えた頃から、自発的に町内会のようなものができて、町長が選任される。

子供を預かる託児所兼学校のようなものまでできてきた。


こうなってくると、完全に俺の手を離れてくる。

俺は、家の建築に専念すればいい。


要望があれば集会所を作ったりするのだが、それも一時的なものだ。




落ち着いたところで、俺は愛知のドームに向かうことにした。

愛知までは約200km。

飛行ユニットでは時速200km程度しか出せないので、片道一時間かかる。

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