第12話、人類との遭遇

牛や豚の飼育施設は厚木口側に作ってのだが、襲撃を受けた。

監視カメラや機械獣からの報告で、人間の襲撃だとわかっている。


被害的には数頭だったが、少なくとも外で人間が生活しているのだけは確認できた。

俺と爺さんは警備体制を強化するとともに、実行者との接触を試みることにした。


俺はスラリンの装甲偵察車に乗り込み、指示をした。


「スラリン、においを追跡するんだ」


「犬じゃないから無理だよ」


「うーん、何か方法はないかな」


「ところどころにタイヤの跡が残っているから、これを追跡すればいいんじゃないの?」


「いや、犯罪者は普通、こんな分かりやすい痕跡は残さないだろ」


「犯罪っていう自覚がなかったとしたら?」


「そうなのかな……。

まあ、その線で行ってみようか」


「了解。追跡を開始します」


襲撃者たちは簡単に見つかった。

厚木口から相模川を渡り、5kmほどの場所を根城にしていたのだ。


ところが、言葉が通じなかった。

インストールされた知識から英語だと確認できたが、会話までは至らない。

仕方なく、一度戻ってメイド型ロボに英語をインストールし彼らの元に戻った。


「ヨコハマドームからやってきた。

代表者と話がしたい」


「俺が隊長のトムだ。

ガキが何の用だ」


180cm以上ある男だった。

金色の短髪で、初めて見るタイプだった。


「ヨコハマドームのエンジニアでジャギーだ。

夕べ、うちで管理している牛が5頭盗まれた。

そのタイヤ痕を追ってきたらここにいることが分かった」


「牛は、見つけた者が食う。それが俺たちのルールだ」


「囲いをしてあっても、無視なのかよ」


「あんな多くの牛を独り占めすることはないだろう。

少しいただいただけじゃねえか」


「ドームの住人2万人の共有財産だ。

俺が一人で食うわけじゃない。

それに、大勢で食うためには繁殖させていかないとダメだ。

行き当たりばったりで食ってたら、今に絶滅してしまうぞ」


「2万人かよ。

俺たちは100人程度だから、行き当たりばったりでいいんだが、2万人が出てきたら、このあたりの牛は食いつくされそうだな


「だから、繁殖させて増やそうとしてるんだ」


「分かった。

ドーム付近には行かせないようにすればいいんだな」


「そうしてもらえると助かる。

ところで君たちは、どこかのドームで氷期を生き残ったのか?」


「俺たちは米軍エリアの座間キャンプ出身だ。

キャンプに設置された施設はもう役に立たないから南に向かっている最中なんだ。

海沿いまで出れば、食料にも困らないだろうからな」


「ああ、確かに魚は多かったよ」


「海にいったのか!」


「海水の分析も終わってる。魚も実際に食べたがうまかったよ」


「そうか、その情報は助かる」


「何か、手助けできることはないか?」


「それは助かる。

何しろ、まともに動く車は2台だけで、化学検査もできないし、武器も原始的なものしかないんだ」


「海まで運んでやろうか。

まだ、ドームの食料も十分じゃないし……いや、100人くらいなら受け入れることもできるぞ」


「いや、やはり外で生きていきたい。

町を作って、準備ができるまで、年寄りや子供を預かってもらえると助かるんだが」


「わかった。

一部の人間を預かって、街づくりに必要な土木作業ロボットや、金属の精製を手伝おう」

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