第10話、出産

俺は三日間の睡眠学習を受け、この都市を理解した。


とりあえず、ドームの外側を知るため機械獣メカビーストを10体放つ。

ドームには東西に二つのエアロックが存在する。

ドームを維持するため、中の気圧が高くなっているのだ。

東の横浜口と西の厚木口。

この間の半径20㎞がドームの敷地となっている。


監視カメラの映像では、両側とも深い森に覆われており、所々にコンクリートの残骸が見える。

当面の目的としては、人類がどうなったかと、可能ならば牛・豚・ニワトリなどの家畜を再現できないかだ。

ドーム内の家畜は、伝染病や環境の変化などで、早い時期に全滅したと記録にある。


数日後、戻った記録映像には、人は映っていなかったが牛は生存していた。

俺は、ドームの外に牛の牧場を作り、そこに牛を誘導することにした。

もちろん、開拓のための土木ロボを作り、収集や世話はメカドッグやロボットを使ってだ。



エンジニアの爺さんはジゼルといった。


「ジャギーよ。

できれば、ホムンクルスを何人か作り、性交してみてほしいのじゃが」


「ノルンは特別なんだけど……」


「それはそれでよい。

じゃが、お前の子供が生殖能力をもつのかどうかも、人類復興の大きな鍵じゃぞ」


俺はノルンと相談して、二人ホムンクルスを製造することにした。

育ててみないと男か女かわからないからだ。


ホムンクルスは培養液の中で3か月かけて10歳まで育つ。

二人とも幸いに女性だった。

俺は二つにノーラとマーラと名づけ、同居することにした。


遺伝子の影響で、ノーラは黒髪で黒い瞳。マーラは茶色い髪で茶色の瞳だ。


その間にも、ノルンのお腹は大きくなっていく。


俺は、ノルンのために看護ロボを作り、常時彼女についているよう指示をした。


ノルンが出産したのにあわせて、牛の方も搾乳を開始する。

全自動の牛舎からは、毎日牛乳が届くようになり、俺は殺菌した牛乳を町で販売する。

量の増加とともに、それは乳製品となり、街を席巻していく。

安くて栄養価の高い乳製品は飛ぶように売れるのだ。


子供は男の子で、ノアと名付けた。


「お疲れ様」


「はい」


ノルンがお乳を飲ませるのは不思議な光景だった。

ノルン自身も十分に成長しているとは言い難い。

それでも、頑張って自然分娩で出産したのだ。


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