第6話、リンゴの芽

翌日も、その次の日も、俺とノルンは機械獣を倒して回った。


「スラリン、吸収した部品で使えるものがあったらどんどん取り替えていいからな」


「了解です」


実際に、歩く時のガチャガチャは静かになったし、動きもスムーズになってきた。

そして、今日も町へやってきた。


「おっちゃん、出物はないかい」


「今日はしけてんな」


「あれは何でしょう?」


「ああ、大昔にべーすぼーるとかいうのが流行ってたらしいんだが、そのボールを飛ばす機械なんだとよ。

それを投敵弾用に改造したようなんだが、うまく行かなかったみてえだな。

欲しけりゃ10でいいぞ」


「パパ、あれを買いましょう」


「何に使うんだよ。

まあ、10だからいいけど」


驚いたことに、スラリンはそれを小型化し、15mm鉄球専用の射出機にしてしまった。

弾丸は機械獣の体からいくらでも作れる、モーターの電気だけで連射可能な強力武器だ。

最初は20mほどしか飛ばなかったが、今では50m離れていても板くらいは打ち抜いてしまう。

そして、それを胸から射出する、結構強力なロボに成長した。


その日の夜ご飯は、肉とサラダとパンだった。

それも、柔らかいパンだ。

俺がパンが固いと文句言ったら、リンゴがあれば柔らかいパンができるというので、リンゴを買ってきてから半月後のことだ。


「おいしい」


「うん、旨い」


この家の菜園も、トマト・ジャガイモ・ダイコン・ニンジンと種類が増えてきた。

親父が亡くなってからずっと一人だった俺にとって、この生活はかけがえのないもののような気がする。


ある日のこと、寝ていたらノルンが口をつけてきた。

多分、キスというやつだろう。

俺はどうしたらいいか分からなかったが、ノルンを強く抱きしめた。


俺たちは出会った日から一緒に寝ている。

だが、こんなことは初めてだった。


「どうしたんだ」


「なんだか、急に怖くなったの」


「大丈夫だ、何も心配いらない」


ノルンを不安にさせないように、俺たちは24時間一緒だった。

毎日狩りに行き、獲物をもって町に行く。

町で必要な物資を買い、ハウスユニットに帰って食事をする。


リンゴが芽を出しました。


エルダにそういわれて確認にいくと、菜園の一角にリンゴが芽を出していた。

パンを作った時の種を植えたらしい。

だが、リンゴって、どれくらいで収穫できるのだろうか……

ところがである。エルダがいうには、リンゴは同じ種類の花粉では結実しないらしい。

つまり、違う品種を植えないと……


翌日、とりあえず、種類の違いそうなリンゴを買ってきた。

パン作りがあるので、どちらにしても、定期的に買ってこないといけないのだ。

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