第1話、少女に出会った

機械化王国にとって、人間は2種類に分かれる。

塀の中の人間と外の人間だ。

塀の中の人間にとって、塀の外の人間はゴミ以下だ。


そして、塀の外には人間のほかに、魔物と機械獣がいる。

機械獣は、塀の外の人間や獣を駆逐するために放たれているのだ。


塀の外にも町があり、人々は物資や情報を求めて集まってくる。

ここ、モスタウンもそんな町の一つだ。


「よお、ジャギーじゃねえか。

しばらく姿を見なかったが、生きてたんだな」


「よしてくれ、縁起でもねえ。

壊れたエアーバイクを修理してたんだ」


「ほう、エアーバイクなら20万で買い取ってやるぞ」


「よしてくれ、やっと手に入れた足なんだぜ。

それよりも、ショックガン用のガスチャージを頼む。三本だ」


「ほいよ、100ガルだ。

いつまでもそんなもん使ってないで、パルス銃に切り替えたらどうだ」


「パルス銃は、対策されたら役に立たねえだろう。

それに、こいつは親父の形見だからな」


「まあ、死なねえようにな。

ほい、チャージ完了だ。

それで、その後ろのスライム見てえのはなんだい」


「そのまんまスライムだよ」


「スライムなんぞテイムしても役にたたんだろうよ」


「まあ、気晴らしになるからいいんだ」


「物好きも程々にな」


「あいよ、また来る」


「新型の情報はいいのか?」


「また出たのかよ」


「ああ、5ガルだ」


「ちぇっ、はいよ」


情報はヘッドセットに転送してもらう。

野球帽に見えるが、ゴーグルと一体になった情報端末だ。


「よし、スラリン行こうぜ」




町から少し離れたところで、機械獣に追われている人間を発見した。


「うん?メタルキャットじゃねえか、あんなのに追われてるのか」


メタルキャットはどちらかといえば見張り役で、人間を襲うことはほとんどない。

ショックガン一発で沈黙した。


「大丈夫か?」


「は、はい」


「なんでメタルキャットなんか……目が見えねえのか」


「転んだ時にぶつけてしまったみたいで」


「しょうがねえな、うちまで送ってやるから案内しな……つっても無理か。

ヘッドセットにアクセスしていいか」


「は、はい、お願いします」


「なんだ、すぐ近くか。

よし、家まで行って、視覚系チェックだな」


襲われていたのは、同じくらいの女だった。

ヘッドセットの履歴から、簡単に家に到着する。


「すげえ設備だな」


「そうなんですか?」


「ああ、最新式の居住空間だな。

仲間はいないのか?」


「生まれた時から一人なんです」


珍しい事ではない。

俺は親父がいたけど、母親の顔は知らない。


「このタイプの視覚系統は……メタルパンサーだな。

よし、待ってろ、捕まえてくるからな」

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